イスラエルのネタニヤフ首相は21日、数日のうちにイスラム組織ハマスへの圧力を強めるとの声明を出し、ガザ地区南部ラファへの地上侵攻を示唆した。

ヨルダン川西岸で銃撃戦「民間人を含む14人殺害」か

ネタフヤフ首相は21日、人質解放に向けた交渉でハマスが極端な要求して提案を拒否したため、「数日中にハマスへの軍事的・政治的圧力をかける。これが人質解放と勝つための唯一の方法だ」と述べた。イスラエル軍の地上部隊による、ガザ地区南部ラファへの地上侵攻を示唆したとみられる。

ラファには100万人以上の市民がいて、仮に地上侵攻すれば多くの犠牲がでることは確実で、国際社会に懸念が広がっている。

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数日中にハマスへの軍事作戦を強める姿勢を示したイスラエルだが、既にもう一つのパレスチナ自治区であるヨルダン川西岸地区にも軍事作戦の手を広げている。 

イスラエルと接するパレスチナ人の自治区は、現在ハマスとの戦闘が続くガザ地区に加えて、ヨルダン川西岸という地域がある。この西岸地区には、約330万人のパレスチナ人が暮らしている。イスラエル軍は、20、21日にこの西岸地区で最大規模の軍事作戦を行った。

20日にイスラエル軍が公開したヨルダン川西岸のトゥルカレムという町で撮影された映像では、装甲車から降りた兵士が次々と民家に突入し、武装勢力と銃撃戦になっていた。

イスラエル軍は、この作戦でテロリスト10人を殺害したとしているが、一方でパレスチナ保健省は、民間人を含む14人が殺害されたとしている。

西岸地区はハマスではなく、アッバス議長が率いるパレスチナ自治政府が統治しているが、ここにもハマスの戦闘員が潜伏しているとしてイスラエルは攻撃を行ってきた。

トゥルカレムでは21日、イスラエル軍に殺害された14人の葬儀が行われ大勢の市民が集まった。このうち、2人の子供を亡くした母親は「助けに来た救急車にもイスラエル軍は発砲した」と強く非難している。

地元の住民は、ハマスの戦闘員と特定できるのは殺された14人のうち5人だけだとしていて、イスラエル側との食い違いも見られる。中には16歳の少年も含まれるとのことで、住民の怒りや悲しみが広がっている。

アメリカがイスラエル軍部隊への制裁方針

ガザ地区でのハマスとの戦いとは別に、ヨルダン川西岸地区はイスラエルとの間で大きな問題を抱えている。それが、「イスラエルからの入植者」という問題だ。

このイスラエル人入植者によるパレスチナ人の迫害が、これまでで最悪の水準となっているとアメリカのCNNなどは報じている。

イスラエル側は、ヨルダン川西岸を占領地であるとの立場を崩しておらず、イスラエル市民が一方的にパレスチナ自治区に入り、定住する入植者の存在が大きな問題になっている。

入植者の数は年々増え、国連によると2022年には約70万人以上となっていて、これに反対するパレスチナ住民とイスラエルの治安部隊との衝突も度々起きている。

21日に公開されたヨルダン側西岸で撮影された映像を見ると、イスラエル人の男性が地面に立てられていたパレスチナの旗を蹴り飛ばしたところ、爆薬が爆発して男性が倒れた。男性は軽傷で済んだというが、撮影した女性はパレスチナの旗について「存在しない国のぼろきれ」とも映像の中で発言している。旗には爆薬が仕掛けられており、双方が憎しみあっていることが伝わる。

こういったイスラエル人による入植は「国際法違反」と指摘されていて、日本を含む国際社会はイスラエルに対し、入植活動の凍結・停止を呼びかけている。しかし、いまだに入植者は増加傾向で、2025年には60万人を超えていくと見られている。

アメリカ政府は、ヨルダン川西岸での人権侵害を理由として、初めてイスラエル軍の部隊に制裁を科す方針を示した。制裁の対象となった部隊は、複数の暴力事件に関与していたとされる。80歳の男性が猿ぐつわや手錠をつけられたまま放置され死亡した事件もあり、アメリカは調査を行っていたという。

ガザ地区の人道状況に続いて、ヨルダン川西岸にも厳しい目を向けなければいけない状況が続いている。
(「イット!」 4月22日放送より)

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