あくびは眠かったり、疲れたりすると出るイメージがあるかもしれないが、ほかにも“緊張すると出る”という声があるのをご存じだろうか。

あくびの際には自然と「口を大きく開ける」という動作が起きるため、はたから見ると、緊張感がないと受け止められる可能性もある。

出てほしくない時に出ることも(画像はイメージ)
出てほしくない時に出ることも(画像はイメージ)
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X(旧Twitter)でも「どれだけ緊張した場でもあくびしちゃうのやめたい」「緊張してあくびしまくって涙出まくるのやだ」などと、悩ましい実情も投稿されている。

あくびは解明されていないことが多いようだが、大事な会議や商談など“ピリッとする”場面でしない方法はあるのだろうか。行動神経科学、健康科学を主に研究している、東京国際大学の久保田夏子講師に聞いた。

「スイッチ」のような役割を担う

――そもそも、あくびはどんな仕組みで発生する?

あくびを誘因するシグナルが、脳内の「視床下部室傍核」という部位に入り、オキシトシンニューロン(オキシトシ神経細胞)の活性化が、中心的な役割を担うと考えられています。呼吸中枢や自律神経系の中枢を刺激することで、あくびが出現します。


――あくびにはどんな役割や効果がある?

自律神経系の変化と脳波の覚醒化が伴いますので、自律神経系や脳の状態を変える「スイッチ」のような役割を担っている可能性が考えられます。頻度が病的に過剰である場合は「アラーム(自分や他者に体内のリスク状況を伝える)」的な役割もあるかもしれません。

緊張によるストレスが影響か(画像はイメージ)
緊張によるストレスが影響か(画像はイメージ)

――緊張であくびが出るのはなぜ?

人間は体内で交感神経・副交感神経がバランスを保ち、生体内の環境を一定に保つシステムを維持していますが、過度なストレスはこのバランスを乱すことがあります。自律神経系が乱れると「この状態を変えよう(もとに戻そう)」として、あくびが出現すると考えられます。


――眠気によるあくびと違いはあるの?

中枢神経への入力経路が異なりますが、行動そのものには顕著な差はないと考えられます。

自律神経系を整えることが大切

――緊張であくびが出る人、出ない人はいる?

自律神経系のバランスが良い状態にある、整える力(ストレス耐性など)がある人は、緊張時でもあくびが出にくい人かもしれません。


――緊張でのあくびを防ぐため意識できることは?

自律神経系のバランスを整える力を鍛えることでしょうか。ただ、ストレス社会で生きる私たちの多くはバランスが乱れた状態にあるかと思います。まずは整えることから始めたいですね。

生活リズムを整え、続けることが大事(画像はイメージ)
生活リズムを整え、続けることが大事(画像はイメージ)

――自律神経系のバランスはどう整えればいい?

1日の中、1週間の中で「活動する・休む」の生活リズムを付けて、それを継続することが自律神経系を整えることにつながります。忙しくても、少しでも脳を休ませる睡眠時間を作ったり、朝はいつもと同じ時間に起きて、思いきりあくびをされると良いと思います。

出た際の無理な我慢は避けるべき

――あくびを防ぐためにできることはある?

伝承も含まれますが、出そうな時に上唇を舌で舐めたり、鼻をつまんで息を止めると収まりやすいと言われます。社会が許さない場面が多いかもしれませんが、個人的には防がずに、自然の状態でいる(あくびをする)のがベターとは思います。


――あくびを我慢するのは良くないことなの?

あくびは意識的にすることもできますが、基本は無意識で出現します。強い光に目を閉じたり、痛みに手足を引っ込めるなどの、反射的な動きは「生きるために有利な行動」と考えられていますが「意のままにならない」という点で、あくびとの共通点も考えられます。我慢することは、体にとってベストなことではないと思います。



久保田講師によると、あくびは極度の緊張や不安以外にも、脳循環不全などでも誘発されることがあるという。生活リズムなどを整えても頻発するのであれば、背景に病気が隠れている可能性もあるので、病院で診察を受けることをお勧めしたい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。