春の訪れを告げる福岡の筑豊・京築沿線を、コトコトゆっくり走り抜ける平成筑豊鉄道の「ことこと列車」。2019年3月から運行している。この季節は予約が取れない日も多い人気の観光列車だ。車窓に広がる筑豊の雄大な景色に、車内でしか食べられない特別な料理が魅力。春の行楽シーズンに乗りたい「ことこと列車」の人気の秘密を取材した。

1便のみの特別な旅 車内は非日常空間

春分の日、平成筑豊鉄道の直方駅のホームに姿を現した平成筑豊鉄道のレストラン列車。運行は、土日と祝日のランチタイム1日1便のみだ。

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車両デザインは、JR九州の「ななつ星」などを手がけたデザイナーの水戸岡鋭治さん。客席の仕切りなどには福岡県の伝統工芸「大川組子」が用いられ、天井にはドイツ製ガラスを組み込んだステンドグラスが施されるなど、非日常感あふれる空間が広がる。

動き出した車内は満席で、旅程は約3時間。一時は新型コロナウイルスの影響で利用者が減ったが、2023年の秋以降から回復し、現在は予約が取れない日も多いという。

特別料理と沿線の美しい景色に大絶賛

人気の大きな理由は、この列車でしか味わえないフレンチのコース料理だ。この料理を監修するのは、2019年にミシュラン「一つ星」を獲得した福岡市の人気フレンチ店「Goh」のシェフ福山剛さん。

Goh・福山剛シェフ:
平成筑豊鉄道の沿線の9市町村食材をふんだんに使って、みなさんが楽しめるおいしいメニューを頑張って作っています。

福山シェフこだわりの最初の料理は、平成筑豊鉄道沿線9市町村の食材が1つずつ使用されている料理が詰め込まれた「ことことボックス」だ。
行橋市のすだれ貝を使った菜の花の白あえをいただいた赤木希アナウンサーは、「しっかり歯応えがあって、かむたびにうまみが出てきます。そして菜の花のにがみと香りがアクセントとなって、春を感じる味わいですね」と舌鼓を打つ。

続いて小竹町の新タマネギを使った料理など、地元の食材を使用したメニューが登場。
さらに乗客の前に運び込まれた出来たての料理は、赤村産のブルーベリーソース添えの和牛ローストだ。

乗客も「お肉おいしい。バルサミコのソースだと思うけど、とっても相性がいい」「食べるものが近隣で採れるものと思うと余計おいしい」と大満足な様子だ。

おいしい料理に華を添える沿線の美しい景色にも、「人生と一緒で、場面場面が変わってくるところがいい」「地元と密着した列車で非常によかった。感動した」との声が上がった。

「ことこと列車」で地域の魅力を発信

「ことこと列車」は、沿線の魅力をゆっくり満喫できる旅列車。途中停車した駅では、地元の特産品が買える。また、沿線の歴史も味わえるのも醍醐味の一つだ。スタッフも様々な仕掛けで客を盛り上げる。

車掌アナウンス:
左側の車窓をご覧ください。あちらで手を振るのが、私の母のヨウコでございます。愛犬のハナコと一緒にお見送りです。

車掌の母と愛犬に手を振る乗客
車掌の母と愛犬に手を振る乗客

ユニークなアナウンスに乗客も大笑いだ。「一緒にわいわい楽しむのが楽しい」「こうやってみんなと触れ合うことなかなかない」と乗客も楽しんでいた。

その他、制服を貸し出しての記念撮影や、通過駅では駅員がお見送りをしたり、途中の停車駅では地域住民が定期的にイベントを繰り広げたりして旅を盛り上げる。

平成筑豊鉄道・河合賢一社長:
筑豊鉄道、そして筑豊や京築エリアの魅力を発信していければと思っておりますので、頑張りたいと思います。

沿線自治体では人口減少が進み、厳しい経営が続く平成筑豊鉄道。赤字経営からの再生と地域の活性化を目指して、小さな「ことこと列車」には大きな期待が寄せられている。

(テレビ西日本)

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