FNNの1月の世論調査で、岸田内閣の支持率は27.6%、去年12月より5.1ポイント回復したものの、内閣の“危険水域”と言われる支持率3割を3カ月連続で割り込み、依然として黄色信号が続いている。(1月20日21日の両日、全国の18歳以上の男女を対象に、電話世論調査)

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岸田首相が「岸田派の解散」を表明したことは6割超が「評価」したが、岸田首相が政治改革を実現することについて「期待する」との答えは4割にとどまり、自民党の自浄作用に不信感が根強いことが浮き彫りとなった。

岸田派の解散表明「評価」64.3%も自民「政治刷新本部」7割「期待しない」

元日に、能登半島地震が発生し、政府は人命救助、避難者支援、復旧の対応を続けている。一方で、昨年末からの自民党の派閥の政治資金パーティーの裏金事件では、安倍派の現職国会議員が逮捕、また他議員が在宅起訴、略式起訴され、安倍派の「5人衆」ら幹部議員の立件は見送られた。

こうした状況の中、行われた世論調査で、内閣支持率は27.6%と去年12月から5.1ポイント回復、先月7割台だった不支持率は66.4%となった。

【岸田内閣への支持】
支持する  27.6%
支持しない 66.4%

派閥の政治資金パーティーの問題をめぐる対応についての世論調査を分析すると、岸田首相・自民党の政治改革に有権者からの信頼は高まっていない実態が明らかになる。

岸田首相が表明した「岸田派解散」については「大いに評価」17.8%、「ある程度評価」46.5%、「あまり評価しない」17.5%、「まったく評価しない」14.1%となり、何らか「評価」する意見が6割を超えた。

しかし、自民党が1月から始めた「政治刷新本部」で再発防止の取り組みが実現するかどうかの期待について「期待する」は28.3%にとどまり、「期待しない」は69.5%にのぼった。岸田首相は、有権者が納得する政治改革を実現するかどうかについても、「大いに期待する」11.3%、「ある程度期待する」26.1%、「あまり期待しない」31.9%、「まったく期待しない」29.8%と、期待しない声が6割を超えた。

派閥政治にのっとって運営を行ってきた自民党や岸田首相の自浄能力には期待していないことを示す調査結果となった。

【岸田首相が「岸田派解散」を表明】
大いに評価    17.8%
ある程度評価   46.5%
あまり評価しない 17.5%
全く評価しない  14.1%

【岸田首相による政治改革の実現】
大いに期待する    11.3%
ある程度期待する   26.1%
あまり期待しない   31.9%
まったく期待しない  29.8% 

【自民「政治刷新本部」の議論での再発防止】
期待する    28.3%
期待しない   69.5%

「派閥解散」は“隠れみの”か 政治改革で求められる「透明化」「罰則強化」

岸田首相の「岸田派解散」表明に続き、立件された安倍派、二階派も続いて派閥の解散を表明した。有権者に、自民党の派閥の解散について質問したところ、「全て解散するべき」は43.2%、「それぞれ判断すればよい」が47.4%、「解散の必要は無い」は6.9%だった。注目されるのは、派閥を解散するかどうかは「それぞれの判断」という答えが、「全て解散するべき」と二分したことだ。有権者は「派閥の解散」に一定の意義を見いだすものの、問題解決の本質ではないという意見もあることがうかがえる。

安倍派の総会 1月19日
安倍派の総会 1月19日

では、実効性のある政治改革として必要なことは何なのか、最も多かったのは、税金を原資とする政党交付金などを自民党が各議員に配っている「政策活動費の使い道の公開」が36%と最多、続いて収支報告にウソの記載をした場合、会計責任者だけでなく議員本人も罰する「連座制など罰則の強化」が34.9%と続いた。「派閥の政治資金パーティーの禁止」は10.5%、「派閥の解消」はさらに少なく8.1%、「政治資金パーティー収入の公開基準の引き下げ」については6.9%と“実効性がない”との答えとなった。

【自民党の派閥は解散するべきかどうか】
全て解散するべき    43.2%
それぞれ判断すれば良い 47.4%
解散する必要は無い   6.9%

【政治改革に実効性がある最も必要な具体策】 
政策活動費の使い道の公開 36.0% 
収支報告書へのウソの記載の場合、国会議員も罰する「連座制」など罰則強化 34.9% 
派閥の政治資金パーティー禁止  10.5% 
派閥の解消  8.1% 
政治資金パーティー収入の公開基準の引き下げ 6.9%

「透明化」「罰則強化」実行の手法の一つが、政治資金規正法の改正となる。岸田首相は、1月の年頭会見で「この国会において、各党各会派で議論を深めなければならない」と法改正も視野にいれているが、有権者の90.5%が「法改正が必要」と圧倒的多数で「必要ない」は6.4%にとどまった。

【政治資金規正法の法改正】
必要だ   90.5%
必要ない   6.4%

岸田内閣は「予算管理内閣」か「賃上げ実現内閣」として息を吹き返せるか

岸田首相にいつまで首相を続けて欲しいか、という質問については、「すぐに交代」18.5%、「3月末前後の来年度予算成立まで」23.8%、「国会が終わる予定の6月頃まで」16.8%、「9月の自民党総裁任期まで」29.3%、「9月以降も続投」9.2%となった。なかでも「すぐに交代」については、先月の調査の4割台から大幅に減少した。前回調査に比べ、国会の節目のタイミングで交代時期の選択肢を増やしたことで4割台から減少した結果となった。その上で、「すぐに交代」が18%にとどまった理由としては、いま能登半島地震の復興で政府として予算執行が最も重要な事項で、総理総裁を交代している状況ではないという判断もあったとみられる。ある意味、岸田内閣は、来年度予算を成立させるまでの、いわゆる「予算管理内閣」として、推進力を失った内閣とみることもできる。

一方で、世論調査では、岸田総理が発信する「物価上昇を上回る賃上げ」への期待を質問したところ「大いに期待」15.9%、「ある程度期待」25.6%、「あまり期待しない」35.1%、「まったく期待しない」22.2%となった。何らかの期待をする声は4割で、内閣支持率を大きく上回る。「賃上げ実現」を期待して、政権の継続を望む声もあると見ることもできる。岸田首相が政権継続の推進力を取り戻せるかどうかは、掲げた政策の「実行力」次第となりそうだ。

【岸田首相にいつまで続けて欲しいか】
すぐに交代               18.5%
3月末の、来年度予算が成立するまで    23.8%
国会が終わる予定の6月頃まで      16.8%
9月の自民党総裁任期まで         29.3%
9月以降も続投              9.2%

(執筆 フジテレビ政治部デスク 西垣壮一郎)

西垣壮一郎
西垣壮一郎

フジテレビ報道局 政治部デスク 世論調査担当
2000年から政治部担当で報道記者・報道番組プロデューサーを歴任。
政治部官邸キャップ、自民党キャップ、野党キャップなどを担当。
ワシントン支局特派員(ブッシュ政権~オバマ政権)「BSフジLIVEプライムニュース」総合演出、「日曜報道 THE PRIME」プロデューサーなどを経て現職。
趣味は釣り。