直近7試合負けなしの清水エスパルス。第29節では東京Vに勝利し3位に浮上した。ただ「1年でJ1復帰」という目標を達成するには、残り13試合でさらに勝ち点を積み上げる必要がある。そのためにも「心のゆとり」が必要だと秋葉監督は話す。

東京V戦を振り返る

開幕からリーグ戦5試合連続引き分けの後、2試合連続黒星と出遅れ、早々にゼ・リカルド監督を解任した清水。第8節の東京V戦は秋葉忠宏 監督にとっての初陣となった。

開始直後に先制を許し暗雲が立ち込めたが、北爪の鋭い右足で同点に追いつくと、試合終了間際、神谷のCKをオ・セフンが頭で合わせ今季初勝利をあげた。リーグ第8節にしてようやく“勝てない”というトラウマを吹き飛ばしたが「1年でJ1復帰」という目標がはるか遠くで霞んでいたことは言うまでもない。

それから20試合あまりが経過し、清水は「超攻撃的」というテーマのもと成長を続け、徐々に順位を上げた。しかし直近2試合はいずれも1-0での勝利と、攻撃とは言い難い状況が続いている。第29節の東京V戦でも前半のシュートはわずか2本で、鈴木唯人が得点した場面とその直前にカルリーニョスが放った場面のみだった。もしかしたら前半19分にCB井林がケガで交代したことも響いたのかもしれない。

ただ東京Vの4・3・3システムが機能していたのも事実で、清水のプレスを上手くかわして効果的な速攻をさせない効果があった。

こうした中で、後半は一転してカルリーニョスの鋭い突破、乾のトリッキーなシュート、セットプレーから迫力ある高橋の飛込みなど清水らしさを表現した。

秋葉監督の口癖の1つが“強者のメンタリティー”。「憎らしいくらいに強さを相手に見せつけて勝つべき」と指導していて、残念ながら追加点には至らなかったが、東京Vには「憎らしい」と思われるような試合を展開。最後まで決定的な仕掛けをさせず、落ち着いて試合を終わらせることができた。

現在の状況を冷静に分析

清水エスパルス・秋葉忠宏 監督
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督
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秋葉監督は「1週間に1試合のペースになって、修正したい項目で反復したトレーニングがしやすくなっている。頭で理解したことを、身体で表現するサイクルができて、習熟度が上がった」と良くも悪くもカップ戦や天皇杯で敗退し、現在の試合間隔となっていることがチームの修正に役立っていると話す。

喫緊の課題であった「集中力が欠けた時間帯、特に後半開始直後での失点」に関しても「かなり修正できてきている。クロスからの失点も、分析から危険なポイントがわかり対応策を講じた。選手には、必ず相手と同じ人数で守れるようにしようと言っている。失点そのものは24と少ない。大きく崩れているわけではないので、さぼらない意識を高めることが重要」と下を向くことはない。

また「守備の柔軟性をもたせるために3バックと4バックと、どちらもできなければいけない」と意識づけてきたが、状況に応じて選手の判断で変えられるほど習熟が進み「選手の能力の高さを感じる」とも評価する。

その上で残り13試合を残す中“J1自動昇格圏”を目標とするなら、今のチームは「崖っぷち…もう引き分けもダメ」と危機感をあらわにする。首位・町田との勝ち点差は11、磐田とは5で、追いつき追い越すためには毎試合“3”を積み上げていく必要がある。引き分けや負けは望む結果ではない。

山口戦に向けて重要なのは「心のゆとり」

清水エスパルス・乾貴士 選手
清水エスパルス・乾貴士 選手

第10節で6-0と完勝した山口について、秋葉監督は「前回のスコアは全く関係ない。監督も代わった。エスナイデル監督は千葉の時代からハイプレスを得意とするサッカー。3・5・2や4・3・3のシステムを駆使する。ホームでサポーター・ファミリーの前で、相手のストロングポイントを消しながら、背後を取る攻めを見せたい。点はたくさん取りたいが、守備とのバランスを取ってかかる。相手をなめてかかるようなことは絶対しない」と引き締めた上で、最も重要なのは「心のゆとり」だと口にした。

相手のボールを奪いきるのは大切なことだが、すべてに於いて完璧な守備をするのではなく、時に確率の低い攻撃をさせてしのぐという“心の余裕”を持つという必要があるというだ。秋葉監督は「捉え方で違う、気持ちのありかたが大事かな。あそび、ゆとりも大切」とした上で「大事な場所に人がいる守り方をすれば、そこまでは選手。それ以上は監督の責任。全部を守ろうとしないで、割り切る考え方ができればゆとりをもって対処できる」と話す。

東京V戦で途中出場し、点には結びつかなかったもののトリッキーな攻撃のアクセントになった乾は「考え過ぎていた。変なところに意識を持って行かれていたんで。神経質になっていた部分があったんで。次は“適当”にやります。“いい意味の適当”だからね」と語った。肩に余計な力を入れないという意味では、同じ意味ともとれる。

「超攻撃的」と「強者のメンタリティー」のバランスも重要だが、監督と選手が「心にゆとり」を持ち、ひとつになって試合に向かうことが目標への近道と言えるかもしれない。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

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