国内の死者数が増加している新型コロナウイルス。今、オミクロン株にも異変が…一体何が起きているのでしょうか?

この記事の画像(16枚)

「めざまし8」が取材した、新型コロナウイルス患者を診療する埼玉県の「ふじみの救急病院」では、年明けにかけて1日800人を超える人たちが発熱外来を受診。陽性率も60%を超える状況だといいます。

2022年12月28日、厚生労働省の専門家会合のあと、脇田隆字座長は会見で死者数が増加していることに言及。1月9日に発表された死者数は258人で、全国の死者数の累計が6万人を超え、わずか1カ月ほどで約1万人が亡くなっています。

死者の増加について、ふじみの救急病院の鹿野晃院長は、警鐘を鳴らします。

ふじみの救急病院・鹿野晃 院長:
これ以上患者さんが増加していくと、本来であれば、医療が整っていれば助けられた命が、どんどん失われていくと。医療に到達できないで亡くなっている方が、急激に増えていくっていうような、“医療崩壊”の状況に確実になっているかなと思いますね。

そして、医療現場の状況に関しても…

ふじみの救急病院・鹿野晃 院長:
ずっとひっ迫しているような状態ですね。第8波は11月ぐらいから、ずっとじわじわ拡大傾向がまだ続いておりまして、本当に長い戦いになっていますね。
現場の疲弊・負担っていうのは、非常に高い状態が続いています。

なぜいま死者が急増しているのか?さらに、WHOが警戒を呼びかけている新たな変異株「XBB.1.5」の影響とは?専門家に詳しく話を聞きました。

オミクロン株に異変… 新変異株が続々

日本でコロナによる死者が増えてきている中で、主流となっている「オミクロン株」に異変が起きています。

東京都福祉保健局によると、第7波から感染の主流だったオミクロン株の「BA.5」が、新たな変異株「BF.7(ミノタウロス)」や「BQ.1.1(ケルベロス)」などに置き換わり始めているというのです。

東邦大学の感染制御学・小林寅喆教授は、「今までのワクチンでは防ぐことが難しくなる」可能性があると指摘します。

さらに欧米では、XBB.1.5、通称“クラーケン”と呼ばれる新たな変異株が拡大しています。WHOは「これまでで最も感染力が強く、免疫を回避する」として警戒を呼びかけています。アメリカではわずか1週間で“最も優性な変異株”になりました。

なぜ、これほど多くの変異株が検出される状況になっているのでしょうか?

東邦大学・小林寅喆 教授:
このウイルスは非常に変異しやすいウイルスだということが、今までの経験から分かっています。ずっと変異を繰り返して、ヒトヒト感染を繰り返していますので、感染者数がある程度増えてきますと、色んなタイプの変異株が出てくるのは当然のことだと思います。
ただ、一種類の株が一気に増えている状況ではないので、今のところいろいろな変異株が見つかってきているという状況です。

死者数が急増…しかし“病床使用率”は高くない理由

日本国内の死者数を見ると、1月5日には過去最多の498人の死者数を記録。8日までの累計で、6万人を超えました。12月1日時点で5万人53人だったことを考えると、この1カ月間だけで1万人以上が亡くなったことが分かります。

さらに2022年の1月と、2023年の1月、日別で亡くなった方の数を比較すると、2022年は1~2人なのに対して、2023年は多い日だと400人以上、直近1週間だけで2541人が亡くなっています。
海外と比べても、12月以降、日本は高い数値で推移しています。

しかし、死者数が増加する中で、なぜか病床使用率は東京で55.5%、大阪は59.6%と、まだそれほど高くはありません。

ふじみの救急病院・鹿野晃院長によると、死者数急増の要因は、「病床使用率には現れないところ」にあるといいます。それは、発熱外来の不足です。
感染者の増加とともに発熱外来を受診する患者も増えたことで、なかなか受診できないケースが増加、治療のスタートラインにすら立てない人がいるというのです。

亡くなっている方の多くは高齢者で、入院ができず自宅で亡くなる方も増えています。
加えて、救急患者の搬送先がすぐに見つからない「救急搬送困難事案」も12月26日~1月1日の1週間で7158件発生し、過去最多に。

ふじみの救急病院には、2022年11月ごろから、発熱外来に1日800~900人が訪れます。第8波の拡大が続く中で、医療スタッフの疲弊や負担が非常に大きく、医療現場は全国的にマンパワー不足。これ以上増やすことは限界だといいます。

死者を減らすためにできることとは?

死者を減らすには、どうしたら良いのでしょうか?
小林寅喆教授は、「リスクの高い人が早い段階で処置を受けられる環境づくり」そして、「重症化を防ぐため、早めにオミクロン株対応のワクチン接種」を進めることが大切だと言います。

さらに、発熱外来の負担を減らすために「個人でできること」として、「基礎疾患のない高齢者以外の人は、抗原検査キットでの自己検査」や、「65歳以上や基礎疾患がある人、妊娠中の人などは迷わず医療機関へ相談すること」などがあると言います。

東邦大学・小林寅喆 教授:
高齢者で普段は元気だった方が、かえって遠慮してしまい、医療機関へかからずに我慢してしまう。むしろ若い方が積極的に医療機関へかかると。
このようなところをうまく整理をして、リスクが高いグループに入る可能性が高い人は、迷わず医療機関、もしくはかかりつけ医にすぐ相談できるような環境作りをしていくと。優先順位をつけていくことが、非常に重要なことだと思います。

今までのワクチンでは防ぐことが難しくなるという中で、オミクロン対応のワクチンならば、効果は期待できるのでしょうか?

東邦大学・小林寅喆 教授:
オミクロン対応ワクチンの中でも、BA.5が入っているワクチンがあります。今出てきている変異株もBA.5の派生型ですので、ある程度の効果は、今までのワクチンよりは高い可能性がある。そういう意味では新しいワクチンを積極的に打っていくと。
特にリスクの高い人たちは早めに打っておくことが大事な点だと思います。

もうひとつの“脅威” インフルエンザが全国で流行

発熱外来の圧迫について、もうひとつ警戒されているのがインフルエンザです。
すでに30の都道府県でインフルエンザが流行期に入っており、患者数も12月26日~1月1日までに9768人。
新型コロナとインフルエンザの同時流行が発生すると、ますます発熱外来がひっ迫することも懸念されています。

東邦大学・小林寅喆 教授:
インフルエンザはもちろんワクチンもありますが、治療薬もありますので、抗原キットなどで診断をして、すぐに治療薬を服用することでかなりよくなります。
発熱した場合などは、インフルエンザと新型コロナの同時検出キットなどを活用しながら、インフルエンザであればすぐに治療する。コロナであれば高齢者を守っていく、こういうような対策をしながら、亡くなる方を減らしていくという方針が必要だと思います。

(めざまし8 「わかるまで解説」より 1月10日放送)