スペインメディアで活躍する3人に聞いた、注目の日本対スペイン戦の行方は――。インタビュー2人目は、ラジオ放送局「RAC1」のサッカー専門記者、エドゥ・デ・バッチャ氏。
スペインはスタメン変えると予想「アンス・ファティは脅威」
――スペイン代表チームの調子についてここまでどう見るか？
スペインはコスタリカ戦でとてもいいプレーをした。コスタリカのレベルはあまり高くなかった。スペインはルイス・エンリケ監督が、とても強いチームを作り上げ、選手たちにアイデアをしっかり浸透させ、とてもまとまったチームを作っている。優勝候補ではないが、良い試合をして、大会でいい成績を残すだろう。ドイツ相手には、強豪国相手にも戦えるチームであるということを証明し、コスタリカ戦では大量得点をして実力を示し、いいスタートを切った。
――日本代表チームについては？
日本はドイツを倒して、このワールドカップの大きなサプライズとなった。ハーフタイムと後半の交代で、森保監督の采配が光った。
日本はとても面白い選手がいる。ここヨーロッパではみんな好き。鎌田とか、ゴールをした堂安や浅野など。ドイツに対して素晴らしい試合をし、コスタリカ戦は少しアンラッキーだったと思っていて、少なくとも引き分けでよかった。いいサッカーをしながら、コスタリカの敗戦は予選通過しなかった場合に大きく響くものだ。
――グループEのここまでの展開についての印象は？
グループEには2回サプライズがあった。まず、日本がドイツに勝ったことと、日本がコスタリカに負けたこと。そして予選リーグ最終戦は、論理上ではドイツがコスタリカに勝ち、あとはスペインと日本の結果次第だ。
面白い試合になると思う。スペインは勝つのが絶対ではなく、引き分けでも予選通過し、ほぼ1位は確実。日本がドイツの結果に頼らず、スペインに勝たなければならない状況というのが、試合を面白くすると思う。
論理上では、スペインが1位、ドイツは2位が濃厚だろう。しかし、まだサプライズが発生する可能性もある。もしスペインに善戦できたら、日本が2位になるのもおかしくない。
――日本対スペイン、それぞれカギになる選手は？
まずスペインは、ルイス・エンリケ監督が2試合ともほぼ同じメンバーで戦ったので、ローテーションすると思う。日本戦は今まであまり出場時間がなかった選手がプレーするだろう。例えばまだプレーしていないアンス・ファティは日本戦に出場するだろう。おそらくモラタがスタメンになる可能性もあり、彼らがプレーする場合はカギになるだろう。
日本は、森保監督は全力でぶつかってくる。例えば鎌田はとてもいい選手、サイドの伊藤もとてもよかった。今まであまりプレーしていない、浅野や堂安もだし、南野もスタメンじゃなかったけど良い。日本はスペインに善戦できる要素は持っている。スペインは選手を変えてくることが予想されるので、その場合はアンス・ファティは脅威になるだろう。
「ドイツ戦と似たような試合展開」で日本勝利も？
――日本がスペインに勝つ確率は？
スペインでは大部分のメディアは、スペインがもう予選通過は確実だと考えている。ドイツがコスタリカに勝つことを考えると、日本は勝たなければならない。日本は全力を出し切らないといけない。日本がスペインに勝つことはビッグサプライズではないが、ルイス・エンリケ監督が見せてきているチームから考えると、スペインが優位だ。確率でいうと、スペインは70％勝利か引き分けで、日本は30％スペインに勝利するだろう。
――日本がスペインに勝る点は？日本が勝つとしたらどういう試合展開になる？
日本が勝つとしたら、ドイツ戦と似たような試合展開を想像している。
スペインはもちろんボールを保持したがるだろうし、試合の主導権を握るとする。日本は対ドイツの前半のように、守るのには慣れている。そして、日本はドイツ戦の後半でとてもプレーが意欲的になり、チームワークや後半の選手の交代でドイツを驚かせた。日本のチャンスはそのあたりにあるだろう。
前半はスペインが攻撃的になるだろうから、守備を固め、日本がしっかり守り切り、後半もしスコアが引き分けだったら、カウンターアタックが効くだろう。スペインはとてもいいチームになっているが、ディフェンスに少し弱点がある、日本は1試合目で証明したように、そこを攻めて苦しめることができるだろう。
――スペイン対日本、ドイツ対コスタリカ、それぞれスコアの予想は？
ドイツはコスタリカに勝つと思う。コスタリカはスペインに対してあまりいい試合をせず、日本に対しては勝ったのだが、勝ちに相応しくなかった。なので、ドイツはコスタリカにしっかり勝ち、ゴール数が必要だと分かっているので、3、4点決めて勝つだろう。
日本は引き分けの可能性はあると思う。スペインは勝たなくてもいいので、そんなに貪欲に勝ちにはいかないとおもう。日本は拮抗した試合展開に持ち運ぶ可能性があるだろう。私は日本対スペインは1対1の引き分けを予想する。ドイツがコスタリカに勝利する。
――スペインはこの大会でどこまで行くと思う？
こういう大会では論理上というのはあまり通じないけど、理論上は準々決勝でスペイン対ブラジルになれば、スペインが劣勢だと思う。ブラジルは優勝候補2、3カ国の1つだし、スペインは2試合善戦をしているが、現在のスペインは同レベルではない。1試合の勝負では同等に試合できる可能性はあるけど、スペインが準々決勝まで進めば、いいワールドカップだったと言えると思う。準決勝まで進めばスペインにとっては素晴らしい大会。スペインには準々決勝が壁だと思う。
優勝候補はフランスとブラジル
――スペインは優勝できると思う？
とても難しいと思う。悪いチームなわけじゃなくて、とてもいい試合をしてきているけど、さらに強いチームが他にある。ワールドカップはたまにサプライズがあるけど、最終的に勝つのはいつも、大会を通して安定した結果を残せる国だ。フランスやブラジル、そしてもしアルゼンチンが挽回すれば、スペインより強いと思う。もしスペインが優勝したら、私にとってはサプライズだ。
――優勝するのは？
今まで見てきたところからすると、フランスとブラジルが私にとって優勝候補。この2か国は残りの国よりも1つ高いレベルを見せている。
もし1つにしなければいけないとしたら、フランス。私にとって一番の優勝候補で、勝てば2大会連続優勝となるだろう。
――あなたが評価する日本人選手を教えてください。
ここで知られていて私にとって好きなのは鎌田大地。この大会でのプレーもそうだし、フランクフルトで実力を発揮している。ディフェンダーで好きなのは吉田麻也。長年代表でプレーしているし、DFラインを統率している。中盤は、久保建英。ここスペインのラ・リーガではよく知られているし、日本代表の中で一番質が高くて若い。少し安定感が足りないかもしれないけど、個人的にとても好き。今シーズンはレアル・ソシエダで、去年はマジョルカでの活躍は素晴らしい。近い将来日本代表に欠かせない存在になるだろう。
（聞き手：FNNパリ支局長・山岸直人）
