ロシア軍によるウクライナ侵攻から2カ月。ウクライナから国外に逃れた人は510万人を超えた。それと同時に、飼い主と離ればなれになるペットも急増している。ウクライナ西部の町、リビウにある動物保護シェルターを取材した。

ウクライナ・リビウにある動物保護シェルター
ウクライナ・リビウにある動物保護シェルター
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保護したペットはのべ2000

この動物保護センターでは、これまで主に救出された野生動物を保護してきた。しかし、国外に脱出する人々が置き去りにする犬や猫のペットが増えていることから、今、これらを積極的に受け入れている。その数はのべ2000匹にも及ぶという。

施設を訪れると、スタッフが大型犬を散歩させていた。激戦地のひとつである、キーウ郊外イルピンで保護され、右前足をけがしていた。

前足をけがした大型犬 イルピンで保護された
前足をけがした大型犬 イルピンで保護された

取材当日に動物病院で手術をするという犬の写真も見せてもらった。同じくイルピンで着弾した爆弾の破片があたり、頭などをけがしている。目も白濁し、衰弱した様子だ。

爆弾の破片で頭部などをけがした犬
爆弾の破片で頭部などをけがした犬

おりの中で吠え続ける犬

犬の鳴き声がする方に進むと、敷地の奥に大きな作業小屋があった。中はおりで仕切られていて、飼い主に置き去りにされたペットの犬が数多く保護されていた。全ての犬が一斉にこちらを見つめてくる。散歩をせがんで悲しそうな声で鳴く犬もいれば、ストレスから敵対心をむき出しにして吠える犬も。思わずリポートする声が詰まってしまうほど、悲痛な「訴え」に聞こえた。

保護されたペットの犬 このようなおりが多数ある
保護されたペットの犬 このようなおりが多数ある

シェルターにはペットの猫も多数保護されていた。小屋に入ると全ての猫が一斉に鳴き出し、飼い主と長い間離れていて寂しいのか、餌をせがんでいるのか、おりに近づくと手を伸ばしてくる。

ペットの猫も多数保護されている
ペットの猫も多数保護されている

管理人 オレスト・ザリプスキさん:
これまでは救出された野生動物や家畜だけを扱っていましたが、この戦争で保護を必要とする猫や犬を受け入れるようになりました。のべ2000匹ほどです。主にウクライナ東部と中央部からやってきた猫や犬がほとんどです。保護シェルターをまるごと受け入れるケースもあります。それらのペットにワクチン接種をし、マイクロチップを装着しています。

動物保護シェルターの管理人 オレスト・ザリプスキさん
動物保護シェルターの管理人 オレスト・ザリプスキさん

管理人のザリプスキさんによると、やはり激戦地周辺で保護されたペットが多いという。こうしたペットは、ずっとこのシェルターにいるわけではない。地元リビウの住民や隣国ポーランド、ドイツやラトビアなどのボランティア団体によって随時引き取られていくという。

置き去りにされたペットのストレス

問題もある。飼い主と離ればなれになっていることや、現地で爆弾の音を耳にしていたことなどからペットも精神的なストレスを抱えており、すぐに引き渡しができるわけではないという。

ザリプスキさん:
すべての動物がすぐに里親のもとに行けるわけではありません。怖がっている犬もいれば、怪我をしている犬もいます。ストレスで噛み付く犬もいます。攻撃する犬もいます。だから、すぐには渡せないのです。長いリハビリが必要です。

取材中、地元の人たちが施設を訪れ、飼い主のいなくなった犬をおりから出して散歩に連れていく光景を見かけた。ザリプスキさんによると、施設は全て海外や地元からのボランティアで成り立っているという。

飼い主のいない犬を散歩に連れて行く地元の人々
飼い主のいない犬を散歩に連れて行く地元の人々

ザリプスキさん:
ポーランド人がよく手伝ってくれます。ドイツ人もたくさん食料を運んでくれます。アメリカで絵が売れて、お金を送ってくれる人もいました。施設に来る人も全てボランティアです。犬の散歩をしてくれる人、餌をやりにくる人、掃除をしてくれる人。常にボランティアの人たちが助けてくれます。

これまでの取材で、ペットと一緒に避難する人を多く見てきた。ただ、大型犬となれば一緒に避難することは容易ではないし、自らの命も危うい中、身を切るような思いでペットを置き去りにする飼い主も多いだろう。このシェルターのように保護されるペットもいれば、餓死するか、爆撃で死んでいくペットもいる。戦争による犠牲は人間だけではなく、家族の一員であるペットにも及んでいる事実を忘れてはならない。

【執筆:FNNイスタンブール支局長 清水康彦】

清水康彦
清水康彦

国際取材部デスク。報道局社会部、経済部、ニューヨーク支局、イスタンブール支局長などを経て、2022年8月から現職。