自民党総裁選が告示された。河野太郎氏を支持する小泉進次郎環境相は17日の閣議後会見で、「いまのエネルギー基本計画では日本の産業は成り立たない」と主張する候補者の高市早苗氏に「ひっくり返すのであれば全力で戦う」と反発した。

「ひっくり返すのであれば全力で戦う」

高市氏は13日のBSの番組で、エネルギー基本計画の改定案(※)を「あれでは日本の産業が成り立たない」と主張し、自分が首相になったときには修正する意向を示した。

この記事の画像(5枚)

これに対して記者から聞かれた小泉氏は、「再生可能エネルギー最優先の原則をひっくり返すのであれば、間違いなく全力で戦っていかなければならない」と反発した。

「電源構成か再エネ最優先の原則が入ったことが問題なのか。化石燃料依存型ではこれからの産業はもたない。その国際的な潮流を考えたら、どんな政権が生まれてもこの方向性を否定できるはずはない。改正温対法では、カーボンニュートラル=2050年までの脱炭素社会の実現を明記した。これをまた改正するというなら話は分かるが、これは与野党全会一致したものだ」

(※)2030年度の発電量のうち再エネの目標をこれまでの22~26%から36~38%に引き上げた

「原発か再エネか、この対立構図だと思う」

そして高市氏と真っ向からぶつかることについて、小泉氏はこう続けた。

「原発を最大限増やして脱炭素を達成したいと思うのか、再エネを最優先・最大限に導入して達成したいと思うのか。この対立構図だと思う。私は再エネを最優先・最大限で達成することが日本の将来だと。まさに国を愛する者として歴史的な命題であるエネルギーの安全保障を確立したい。再エネの豊富な潜在力を最大限に活かすため、あらゆる規制を取っ払っていくことだと思っています」

これまで小泉氏は「エネルギー政策をひっくり返すのは既得権益だ」と発言してきた。これについて父である小泉純一郎元総理を意識しているかと記者から聞かれるとこう答えた。

「改革というのは既得権益との戦いなので、私は当たり前のことを言っている。すべてに政治のリソースを割くことは出来ないので、父にとっては郵政民営化だったのかもしれない。当時は自民党すら反対していて野党も反対していた。エネルギー政策はまた趣が変わっていて、とくに自民党内の反対が強く、そしてその裏側にいる産業界、そして変えたくない霞が関の一部だ」

「どならないほうがいい」と伝えておきます

記者から一部週刊誌が取り上げた河野氏のパワハラ発言について聞かれると、小泉氏はこう憤った。

「ああいったエネルギー計画の真剣な議論をしている中で、なぜ内部の発言が録音されて外に漏れるのか。こういうことはおかしい。公務員としてやっているならおかしい。そういったことも含めてさまざまな暗闘がある、中でも外でも闘いが。河野さんが相当我慢しているのは、私は見ていて分かる」

そして「河野さんには『どならないほうがいい』と伝えておきます」と付け加えた。

そしてあらためてなぜ河野氏を支持するのか、その想いを語った。

「改革に対する揺るぎない意思と既得権益に対する闘いをなぜやるのか、いまのままだったら次の世代に向けて雇用や産業の基盤が開けない。その目詰まりを起こしている。大切なものは守りながらも次の時代の産業や雇用を創るためには、ときにはぶつかり合いながらも変えていかなければいけない。その突破力を持っているのは・・環境大臣会見なのでこのへんで」

河野規制改革担当大臣、岸田前政調会長、高市前総務大臣、野田幹事長代行の4人による選挙戦がスタート
河野規制改革担当大臣、岸田前政調会長、高市前総務大臣、野田幹事長代行の4人による選挙戦がスタート

派閥の力学で成り立つ政権を求めない

小泉氏は総裁選について、派閥による動きをけん制した。

「私が何よりも求めているのは派閥の力学によって成り立つ政権ではなく、国民の声がしっかり反映される政権だ。国民の支持によって決まり、対話し理解と共感を得ながら課題について前に進めていく」

そして総裁選で国民に向けて何を訴えるか問われるとこう答えた。

「最も国民が求めていることは、これから冬に向けて第6波という懸念もある中での、難しいコロナ対策。誰が国民の命と暮らしを守ってくれるか。私は最大のポイントはそこだと思っている。そういったことについての具体的な政策論争が繰り広げられるような総裁選になって欲しい」

いよいよ熱い論戦がスタートする。国民はしっかり議論に耳を傾けるときだ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。