12月14日、菅首相が打ち出したGoToトラベルの一時停止。東京・大阪・名古屋・札幌の各都市到着分を12月27日まで停止して出発分についても自粛を要請。さらに28日から1月11日まで全国一斉での一時停止に舵を切った。政府高官が「菅首相はリアリストだ」と語るように首相にとっては自らのこだわりの政策を一旦捨てる苦渋の決断だっただろう。

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そして同日、赤羽国土交通大臣は一時停止に伴うキャンセル料について、「確実なキャンセルを促していくために、12月24日までの間は無料でキャンセル可能とする」と述べた上で、28日以降の全国一斉停止に伴うキャンセル措置について説明した。

「12月28日(月)以前に出発する旅行であっても、この期間内の宿泊を含む旅行についてはその旅行期間全体を本事業の適用外とする。例えば26日、27日、28日、29日という旅行でもその期間が、28日から1月11日の期間が入っていればそれはすべて適用除外とする。このキャンセル料の取り扱いについては、すでに予約済みのこの期間に出発する旅行については本日以後10日間、つまり12月24日までの間無料でキャンセル可能とする」

国がキャンセル料負担も、交通費単独の場合は自腹負担

このように政府は、自粛や一時停止に伴うキャンセル料は国が補填するから安心してキャンセルしてほしいと呼びかけ、また事業者に対してもキャンセル料の補填を行うとしている。しかし、ある関係者から衝撃的な話を聞いた。

「旅館はGoToトラベルで予約していて、飛行機や新幹線は通常通り購入した場合のキャンセル料は補填の対象外らしい」

つまり宿泊と交通を別で予約した場合、交通費のキャンセル料は、利用者が自腹を切ることになるというのだ。これについて加藤官房長官に記者会見で確かめてみたところ、加藤長官は以下のように答えた。

「GoToトラベルそのものでありますけれども、宿泊単体の商品、または宿泊と交通機関がセットとなった旅行商品の支援を対象としたものであり、交通機関のみの商品については支援の対象とはそもそもなっていないわけであります。このため、GoToトラベル事業の一時停止等の措置に伴って発生するキャンセルについてももともと対象となっているものについて、無料キャンセルの対象、またはそれに対して国からも支援する」

加藤長官はこのように、宿泊のみや、宿泊と交通がセットになったツアーの場合にはキャンセル料を国が補填することになっているが、現地の宿泊施設についてはGoToトラベルを利用し、例えば新幹線や飛行機のチケットについては駅などで購入していた場合についてのキャンセル料は、補償の対象外だと認めた。

航空会社もキャンセル料は生じると明言

念のため大手航空会社に問い合わせたところ、次のような回答だった。

「GoToトラベルキャンペーンは、対象の旅行会社にて、キャンペーン適用商品をお申し込みいただいた場合に適用されますため国内線航空券を単独でご購入いただいた場合は対象外となります」

「年末年始のGoToトラベルキャンペーン一時停止による手数料免除につきましてはGoToトラベルキャンペーンにおける取り扱いとなり、航空券の取り扱いとは異なりますことをあらかじめご了承ください」

「詐欺じゃないか」ネット上で批判相次ぐ 政府の対応は

このように、単独で購入した航空券のキャンセル料は、購入者の負担になるということだ。しかしこうした政府の措置にネット上では次のような異論が噴出している。

「GoTo全国一時停止のキャンセル料の交通費の払い戻し手数料も無料にしてほしい!こちらには何も落ち度がないのになぜ無駄にお金を払う必要があるのか?詐欺じゃないか」

「案の定GoToのキャンセル料は無料になってもそこまでの交通費のキャンセル料が無料にならないなら普通に行くぞという人いますね」

確かに制度上、交通機関のみの商品についてはそもそもGoToの支援対象になっていないのだから、キャンセル料補償の対象外という理屈は通っているようにも見える。しかし年末までおよそ2週間という直前のタイミングで菅首相が急きょ決断した全国一斉での一時停止だけに、GoToでの旅行を予約していた人が交通手段のキャンセル料という金銭的損失を被るのはおかしいというのもその通りだろう。交通単独の予約でもGoToトラベルの宿泊と紐付いていることが証明できるなら、キャンセル料の補償対象とすべきだという声が出ているのはうなずける。

今回のGoToの一時停止は、政府高官が「総理の判断で決めた」と語るように、菅首相自身の政治決断だった。であれば当然、国民の理解を得ることがより重要となる。政府関係者は「今回の措置が吉と出るか凶と出るかは神のみぞ知る」と語るが、「吉」と出るようにするには、このキャンセル料補償の穴も含め、政府がきめ細やかな対応を取り、国民の声に応える必要があるのではないだろうか。

(フジテレビ政治部 杉山和希)

杉山 和希
杉山 和希

義理と人情とやせ我慢を大事に取材に励みます
報道局政治部 首相官邸&麻生派担当。1992年岐阜県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、2015年フジテレビ入社。「情報プレゼンターとくダネ!」ディレクターを経て現職