「横断歩道で人がひかれて…おじいちゃんがひかれて…」「グーッとちょっと白目をむいた状態で…」「苦しい…苦しい…死んじゃうよ~」1分1秒を争う福岡市消防局の指令センターは24時間365日眠らない。160万人以上が暮らす、福岡市内全域からの通報が、ここに集まる。

2023年の119番件数が過去最多に

福岡市消防局によると、年間の119番通報の件数は年々増加していて、コロナ禍で一時、減少したものの、社会活動が再開し始めた2022年には12万件を突破。2023年は、そこからさらに1万3700件ほど上回り、13万9086件と過去最多となった。このうち約10万件が救急車の出動要請だ。

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福岡市消防局の指令センターでのやりとりに密着した。

【ケース1】

消防「どうしました?」
通報「過呼吸、くくきゅう…」
消防「息苦しい?」
通報「はぁはぁはぁ…、苦しい…、苦しい…、死んじゃうよ~」
消防「落ち着いて、救急車もう向かっているから」
通報「はぁ…、はぁ…、ありが…」
消防「ゆっくり呼吸して、ゆっくり。苦しくなるよ」

【ケース2】

通報「少し寝てた状態だったんですけど、いま、けいれんみたいなの起こして」
消防「救急車、もう向かいましたからね。おいくつの男性、女性ですか?」
通報「えーっと2歳の娘です。いま、なんか歯を食いしばっている状態です。グーッと、ちょっと白目をむいた状態です」
消防「分かりました。もう無理矢理、その口の中に手を入れたりとかも止めといてくださいね」
通報「触らないでいいってことですね」

【ケース3】

通報「横断歩道で人がひかれて、おじいちゃんがひかれて、うつぶせになってます、横断歩道に…」
消防「あ、コミュニティーセンターの前、前の目の前ぐらいですか?」
通報「はい、はい、横断歩道がすぐあるんですけども、そこでおじいちゃんがひかれて、うつぶせになってます」
消防「あー、ひかれたんですね」
通報「瞬間は、見てないんですけども」
消防「分かりました。そしたら下敷きとかにはなってないですよね?」
通報「下敷きにはなってないです。人が倒れてるだけです」
消防「救急車向かったから、いったん落ち着いてね」

心がけているのは「落ち着かせること」

指令員は「特に、救急の通報が年々増えている」と感じているという。

指令センター・指令員:
まず安心させる意味もふまえて、受けた時点で、「救急車はもう向かっていますよ」ということをお伝えすることと、狼狽(ろうばい)された方もいらっしゃいますので、落ち着かせることを心がけて受信しております

「救急通報」と言っても、その内容はさまざまだ。このようなやりとりも…。

【ケース4】

通報「あの…、主人が…、ちょっと…、裏で首をつって死んでます」
消防「少なくとも、意識も呼吸もないような感じですかね?」
通報「はい…、ちょっと私、ずっと『病院かな』と思ってさが…、電話して探してみて…、裏…、あの…、私もよーっと見てないんです」
消防「気が付いたら、ご主人が家で首をつってた?」
通報「私はてっきり病院に、あの、ちょっと、あの」
消防「いま、できることをしていきたいので、頑張って、ご主人をおろして心臓マッサージをしていきたいんですけど」

通報「私1人じゃ無理かもしれない」
消防「はさみで切って、地面におろしていきたいんですけど、難しそうですか」
通報「難しい…、もう…、力がないです…、私…」
消防「そしたらすいません、奥さん、救急車あと3~4分で着きますから、サイレンきたら案内出てください」
通報「はい…」

救急出動増で「救急車が足りない」事態

2023年の1年間に救急搬送された人数は8万5000人余り。しかし、このうち半数近くが医師の初診で、入院の必要がない「軽症」と判断されている実態もある。救急出動が増えると「救急車が足りない」といった事態も起きかねない。

【ケース5】

消防「病院間の搬送になりますか?」
通報「はい」
消防「えーっとですね、ちょっと、いまですね、救急隊がですね、市内全域多発しているんですが」
通報「(苦笑)」
消防「お待ちいただくことは可能でしょうか?」
通報「あ、少し、はい…」
消防「えー、1時間程度見ていただいているような…」
通報「1時間!?(苦笑)」

通報するところ違いませんか?

そんな現場で、指令員たちの頭を悩ませているのが、緊急性がなかったり、消防に関係がなかったりする「不要不急の通報」だ。

【ケース6】

通報「あ、えっと、車同士ぶつかったんですけど」
消防「けが人がいらっしゃるんですかね?」
通報「いや、ケガは大丈夫…」
消防「救急車は大丈夫ですか?」
通報「救急車は大丈夫…」
消防「あ、そしたら110番の方、警察の方に通報していただいてもよろしいですか?」
通報「はーい、すみません~」

【ケース7】

通報「私たち、高齢者の見守りサービスをしている会社になるんですけど、安否の確認ができない方がいらっしゃって」
消防「いま、離れた場所にいらっしゃいます?」
通報「あ、えっといま、現地に着いてる。鍵が開いててですね、警察の方立ち会いのもと、中に入りたいなと思ってご連絡させていただいたんですけど」
消防「どういうことですかね?担当の方なんですよね?」
通報「あの、担当ではあるんですけど…」
消防「中に入れないのはどういう理由があるんですか?」
通報「あの、勝手に入っていいのかどうか…」
消防「意識がなかったら、心臓マッサージの必要とかがあってくるので…」

【ケース8】

消防「火事ですか?救急車ですか?」
通報「あ…、火事ですか、救急車ですか、すいません、そうですよね」
消防「119番は消防です」
通報「そうですよね、110番の方がいいですよね、ちょっとご相談したいことが…、地域の方のことでちょっとご相談したいことがあるんですけど」

「本当に必要な通報が取れなくなる」

福岡市消防局によると、通報全体の約2割は不要不急の通報で、特に多いのが「病院を紹介してほしい」という内容。このほか「エアコンが動かない」「ガスが止まったが、どうしたらいいか」といったものもあるという。

福岡市消防局・福薗正人指令センター長は、「不要不急の通報が増加することによって、本当に必要な通報というのがすぐに取れなくなる。『119番通報は、市民ひとりひとりの緊急の回線である』ということを、まずもって知っていただきたい」と呼びかける。

私たちの身近にある「119番通報」。1人でも多くの命を救うために、その適切な利用を心がける必要がある。

(テレビ西日本)

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