積水ハウス建設グループは、職人を「クラフター」と称し、若手社員の積極的な採用と訓練、待遇の改善に取り組んでいる。
専門家は、建設業界で優れた技能を持つ職人の不足は大きな課題であり、待遇改善だけでは人材不足の解消に限界があると指摘する。

前年度の3倍採用「クラフター」入所式

建設業界で、ハウスメーカー自ら若い職人を確保し、育成する取り組みが行われている。

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滋賀・栗東市で行われたのは積水ハウス建設グループで、住宅づくりの職人を目指す社員の訓練センターへの入所式。
前年度の約3倍、134人が採用された。

これまで「きつい」などと言われていたイメージを払拭するため、職人の名称を「技能工」などから「クラフター」というスタイリッシュな呼び方にしたほか、現場をまとめるポジションの年収などの待遇改善も行った。

訓練校では、未経験でもゼロから学べるよう、現場に出る前に最大半年、基礎工事や内装などを実践的に学ぶ。

訓練生・森田颯斗さん:
一生を使っていくような知識をここで身につけられるので、しっかりと覚えていきたい。

育成・待遇改善は職人不足解消の一手

「Live News α」では、コミュニティデザイナーで、studio-L代表の山崎亮さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
── 今回の試み、建築にくわしい山崎さんは、どうご覧になりますか?

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
職人さんの数が足りない「人員の不足」は悩ましい問題ではあるが、これは、賃金を上げたり、休日を増やすなど、待遇改善に力を入れたら、職人さんの数自体は、増やすことができるかもしれない。

ただ、社会が求めている快適で、地震にも強い家を作るためには、晴らしい技能を持った職人・クラフターが不足している。

「優れた人材」は、すぐには増やすことはできないため、これが住宅業界が抱えた人手不足の本質となっている。

堤キャスター:
── 何より、腕のいい職人さんを増やさないといけないわけですね。

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
頻発する地震や、増大するエネルギー需要に対応すべく、住宅業界では新しい工法や材料、さらには、断熱や気密を高める新しいアイデアが生まれている。

その多くは、ハイスペックなコンピューターによって検討が繰り返され、コンピューターの性能が上がれば上がるほど、開発のスピードは速くなっていく。

ただし、研究所などが進める開発の速度と、それを実際に形にする技術、つまり職人が優れた技を身につけるスピードには違いがある。

人工知能時代には、この速度差がますます開くだろうといわれており、技術や素材などの開発は進んでも、腕のいいクラフターがいないと、いい家を作ることができなくなってしまう。    

理想の家づくりの実現を追い求める

堤キャスター:
── 家は暮らしそのものですから、安心して生活できる家であってほしいですね。

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
大きな地震が起きると、住んでいた家が崩れ去り、その犠牲になる方も多い。地震が人の命を奪うのではなく、倒壊した家によって人が亡くなることを忘れてはならない。

暮らしやすく、いざというときに命を守ってくれる高性能な住宅を作ってくれる職人さんが減少したり、高齢化してしまっている。

クラフターの育成や、採用された際の待遇を向上することは、高性能住宅を「絵に描いた餅」とせず、社会が求める家を、現実世界に1つずつ増やしていくことにつながる。

堤キャスター:
住宅の需要がなくなることはありません。
その需要に応え続けていくためにも、人材育成の新たな形を探っていく必要があるのかもしれません。
(「Live News α」5月8日放送分より)

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