福山大学が因島を拠点に研究・開発を重ね完全養殖に成功した「シロギス」。いま、同じく因島が発祥の「ハッサク」とコラボする商品化が進んでいます。

およそ10年前から思い描き完成に近づいてきた握り寿司…。
そこに使われている魚は…。

「あ!…」

砂地に生息し体がパールピンクに輝いて見えることから”海の貴婦人”とも呼ばれるシロギス。
漁獲量がかつての10分の1にまで減少する中、福山大学では2015年から因島にあるキャンパスで研究を始め去年、地元企業と連携し完全養殖に成功。
「びんごの姫」と名付け東京や大阪に出荷されています。
そして、この度…。

【野川キャスター】
「福山大学の貴賓室です。張り詰めた空気の中で、こちらには大学関係者や開発に携わった企業の関係者が一堂に会しています」

因島生まれの「養殖シロギス」と因島発祥の「ハッサク」がコラボした商品の開発…。
商品化を担ったのは福山大学が研究を始めた当初から”ラブコール”を送り続けていたという「廻鮮寿司しまなみ」です。

【廻鮮寿司しまなみ・大瀧一登社長】
「一番苦労したのは白身で淡泊なびんごの姫の良さと、香り高く爽やかな酸味が特徴のハッサクをどうすればお互いを引き立て、よりおいしく食べていただけるかという点でした」

ハッサクで〆た握りや特製ハッサクドレッシングをかけた握りのほか、押し寿司やチラシ寿司を作り先月まず福山大学の学生およそ50人が試食し味などを評価。
そこから改善を加えて、8日は尾道市長や生産者などがその相性を確かめました。

【ハッサク農家】
「綺麗ですね。食をそそる。本当にうれしいですよ」

これまでゼリーや大福などに加工されたことはありましたが、ハッサク農家も当初、驚いたという”異色コラボ”の実現…。
いただいてみると…。

【野川キャスター】
「おいしいですね、非常にさっぱりとしています。淡泊なお魚というイメージがあるが、口の中でふわっと消えた。最後後味でハッサクの爽やかな香りが残る、フレッシュなお寿司ですね」

【福山大学生命工学部海洋生物科学科・有瀧真人 教授】
「10年近く経ってようやくここまで来たなというのがある。(瀬戸内海でシロキスが獲れるのが)当たり前だったのはちょっと前までなんですよ。いまシロギスは獲れない。だから食べるってすごく大事。食べてみないと分からない。食べるからこそ身近に感じる。食べるからこそ考える、ということはすごく大事」

一般販売は今年夏ごろを目指しているということです。

<スタジオ>
ハッサクというと、そのままフルーツとして食べたり、大福になっているイメージがあるが、甘味、酸味のほかにハッサクには苦みが微妙にあって、これがシロギスの脂とコクと、ほどよいマリアージュとなって、かなり乙な味になっている。

水産業が衰退の一途、瀬戸内海でも対策が急務という中で、あまり注目されていなかったものに着目し商品化まで歩みを進めてきた福山大学。
一方で農業も後継の問題などを抱えていますし、商品化の実現というのは地域おこしにも繋がる。農家の方も「嬉しい」という言葉を何度もおっしゃっていた。

そうした中で、開発を進めてきた福山大学の有瀧教授は、
「安定的に提供する中で、食べていまの水産の現状を知る。消費者一人ひとりに、どうしていったら将来に向かって持続的においしい魚が食べられるかということを考えていただく一つになればなと思っている」と熱く語っていらっしゃった。

【コメンテーター:エディオン女子陸上部アドバイザー・木村文子さん】
「こういう研究を通して、当たり前のように食べられるということではないということを、今一度感じたいと思う」

テレビ新広島
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