誰もが1本は“ボールペン”を持っていることだろう。

便利なペンだが、突然「あれ?書けない!」となった経験はないだろうか?急に書けなくなってイライラしたり、急いでいる時で困ってしまったり…。または「お気に入りなのに」と残念に思った人もいることだろう。

そんな“突然書けなくなる”理由は何なのだろうか?復活方法や事前に防ぐ方法があるのであれば、知っておきたい。

そこで、文具メーカーの株式会社パイロットコーポレーションの広報部・田中万理さんに、「ボールペンが書けなくなる理由」を教えてもらった。

4つの書けなくなる原因

ボールペンは名前の通り、ペン先に小さなボールが付いている。ペンを紙の上で滑らせるとボールが回転し、隙間からインキが少しずつ出てくることで書くことができるという仕組みだ。

ボールペンのペン先の図(提供:パイロットコーポレーション)
ボールペンのペン先の図(提供:パイロットコーポレーション)
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ーー書けなくなる原因と仕組みを教えて。

・「ペン先が水平より上向きの状態で書く」
例えば、壁掛けカレンダーに書き込む時などにペン先が上に向いてしまいます。この状態のまま書き続けると、インキが重力で後方に引っ張られてペン先から空気が入り込み、書けなくなってしまいます。さらに、そのまま放置すると、最悪の場合インキがペンの後ろ側から漏れてしまうこともあるのでご注意ください。
※加圧式ボールペンなど、上向き筆記も可能な機能が付いたボールペンもあります。

・「ペン先を傷める」
ペン先は金属製で一見強そうに見えますが、コンマ数ミリのボールの入った繊細な部品です。ペン先から落としてしまうなど、過度な衝撃が加わり傷ついてしまうと、ボールが回転しなくなったり、インキの通り道がふさがってしまったりする原因になります。
※ボールペンのペン先のボールは、細いものでは直径0.3mm、0.4mm、普通のものでも0.5mm、0.7mmのものがよく使われています。

・「ペン先に紙の繊維などが詰まる」
その原因として、書く時のペンの角度があります。ペンを寝かせすぎると、ペン先のボールを支える金属が紙の表面にこすれて紙繊維を削り取り、ペン先のボールがそれを巻き込みインキの通り道が詰まってしまうことがあります。
また、感熱紙(レシートなどの熱を感知することで色が変化する紙)のようにコーティングされている紙においても、表面の薬剤を巻き込むことで、同じように詰まることがあります。

・「使わずに長期間置いておく」
ボールペンのインキは生ものですので、古いインキは変質・劣化します。変質・劣化してしまったインキは、簡単に言いますと“煮詰まった”ような状態です。
溶剤(水や油)が蒸発して、インキが濃くなってしまい、ドロドロした状態をイメージしていただければと思います(ドロドロしていまい、スムーズにサラサラとペン先から出てこない)。

残念ながら復活することができません

ーー復活させる方法はあるの?

残念ながら、これらのこと(主な4つの原因)によりインキが出なくなってしまうと、復活することができません。

書けなくなる主な原因(提供:パイロットコーポレーション)
書けなくなる主な原因(提供:パイロットコーポレーション)

ーーこの4つの原因で書けなくなることを防ぐ方法を教えて。

「上向き筆記をしない」
→ペン先が水平より上を向いていないか確認して筆記して下さい。

「 ペン先を傷めない」
→ペン先に過度な衝撃を与えないよう、筆記後は必ずペン先を収納、またはキャップをしめて下さい。

「寝かせて書かない」
→ノートや手帳のような筆記具に適した紙を選び、 ペンを60度以上に立てて書いてください。

「長期間放置しない」
→直射日光や高温を避け、できるだけ安定した場所で保存してください。油性インキは製造から3年、水性インキ、水性ゲルインキは2年を目安にお使いください。

書けなくなる主な原因(提供:パイロットコーポレーション)
書けなくなる主な原因(提供:パイロットコーポレーション)

ーーちなみに、ペン先を出した状態と収納した状態とで差はあるの?

ノック式の場合、インキの乾燥を防ぐという意味での差はありませんが、ペン先を傷めることを防ぐために、また、誤ってカバンなどをインキで汚さないためにも、書かないときにはノックを戻してペン先を収納してください。

キャップ式の場合、キャップ(フタ)にはインキの種類によってはインキの乾燥を防ぐ役割があります。そのほか、ノック式同様にペン先を傷めることを防ぐことと、誤ってカバンなどをインキで汚さないためにも、書かないときにはキャップを閉めてください。

(提供:パイロットコーポレーション)
(提供:パイロットコーポレーション)

なお、保管期間について、油性インキは製造から3年、水性インキや水性ゲルインキは2年を目安に使ってほしいとのことだが、保管や使用の条件によって異なるため、使用に問題がなければ、目安を過ぎたボールペンを使っても大丈夫だという。

急に書けなくなった!ということが、普段の使い方次第で避けることができるかもしれない。最後まで快適に使っていくためにも日々の扱いを大切にしてほしい。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。