地震発生からわずか1分で津波が…

 復興庁の復興推進委員会の委員長も務める東北大学災害科学国際研究所の今村文彦教授は、能登半島地震後、国土地理院のデータなどを基に発生した津波を解析した。 

東北大学災害科学国際研究所・今村文彦教授
東北大学災害科学国際研究所・今村文彦教授
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 その結果、石川県珠洲市では地震発生から1分程度で、石川県七尾市には2分程度で、富山県富山市には5分程度で、新潟県上越市には12分程度で津波が到達していたこととみられることが分かった。 

 2011年の東日本大震災では岩手県宮古市に発生から15分後。福島県いわき市小名浜には22分後に第1波が到達した。

 今村教授は「今回の災害は地震発生から津波の到達までが非常に早い。避難に対して難しい地震津波になってしまった」と話す。 

 この文脈の中で言う「到達」という言葉は「地震発生による押し波か引き波により、平常の海面から数十センチでも変化した場合」を指すもので、「陸上に遡上する状態」を指すものではないが、今村教授は「釣り人や海水浴を楽しむ人がいた場合は、この津波の影響で流されてしまう」と、この「到達」を避難の目安として重要視してほしいと話す。

日本側と太平洋側の特徴の違い

 なぜ、能登半島地震では津波が早く到達したのか。今村教授は「地震・津波が発生したエリアが陸地に近かったこと」を挙げ、「これが日本海側の地震の特徴のひとつ」と話す。

東日本大震災での津波被害の様子
東日本大震災での津波被害の様子

 2011年3月11日に発生した東日本大震災や今後の発生が見込まれる南海トラフ地震は、太平洋側のプレートの境界付近で発生する「海溝型地震」であるのに対し、能登半島地震は陸地に近い「海底活断層」で発生した。そもそも日本海側は陸地に近い断層が多いのだ。

 そして、今村教授が挙げる日本海側の地震のもうひとつの特徴が「津波が継続する長さ」だ。今回の地震では最終的に津波注意報が解除されるまで約18時間かかった。 

 これは、津波が日本列島だけではなく、ロシアや朝鮮半島といったユーラシア大陸にも到達していたことが理由で、波が反射し繰り返し襲ってくることが理由だという。日本列島とユーラシア大陸の津波の片道は2時間。往復で4時間。18時間継続されたということは、少なくても4往復はしていたことになる。 

 さらに、その18時間の中のどこかで最大波が襲来することになり、その点も避難の難しさにつながっているという。

避難の在り方「揺れたらすぐに避難」

東日本大震災での津波被害の様子
東日本大震災での津波被害の様子

 では、限られた時間の中でどのような避難をするべきなのか。気象庁が注意報や警報を出す目安は発生から3分だ。早いところだとその3分以内で既に津波が到達する可能性がある。

 今村教授は「日本海側の多くの断層の幅、長さなどから浸水域は太平洋側と比べ比較的限られることも多い」とし「揺れたらすぐに避難」を徹底してほしいと話す。

「作業や釣り、海水浴などで沿岸部にいる方は、強い揺れを感じたらまずは沿岸部からは離れていただきたいと思います。加えて河口や河川に沿ったエリアも非常に早いので、そこからも離れていただきたい。その後、避難タワーや避難場所に即移動していただくことになるが、そうした行動が遅いと、命を守ることは非常に厳しいということになります」           (東北大学災害科学国際研究所・今村文彦教授)

太平洋側も例外ではない  

 一方、太平洋側は避難の時間があるというわけではない。太平洋側の地震でも神奈川県の相模湾、静岡県の駿河湾、そして南海トラフ地震などでは、断層の位置などから1分以内で津波が到達する可能性があるという。

 災害はいつ・どこで発生するか分からない。今回の能登半島地震は、その事実をまざまざと見せつけた。今村教授は今回の地震を教訓に一人一人が事前の備えをしてほしいと呼びかける。 

「仕事であったりレジャーなどで沿岸部に行かれると思うが、特に見知らぬ土地に行く場合は、最初に高台であったり安全なところを確認していただきたい。それによって実際に、地震・津波にあったときに冷静に行動をとれますので、そういうことを心がけていただきたいと思います。」                                       (東北大学災害科学国際研究所・今村文彦教授)

(仙台放送)

仙台放送
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