鹿児島市の観光PRを担う「かごしま親善大使」。実は2023年で募集が終了し、任期が2年のため2024年が最後となる。県内ではいま、鹿児島市に限らず観光親善大使が役目を終える自治体が相次いでいる。その理由を取材した。

第18代が“最後の大使”に

11月2日、鹿児島市の秋の風物詩・おはら祭の前夜祭「夜まつり」が開かれた。毎年ここで、2年の任期を終えたかごしま親善大使の退任式が行われる。

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その一人、第17代かごしま親善大使の穗滿結衣さんは「親善大使として活動してきた2年間は、私にとってかけがえのない宝物」とあいさつした。

だが、例年なら同時にお披露目される新たな大使の姿が、2023年はなかった。退任する17代の隣には2022年に任命された2人の第18代、“最後の”かごしま親善大使がいた。

かごしま親善大使の前身は「ミス鹿児島」だ。その活動は1977年から続いてきた。
2004年に周辺5町と合併したのを契機に2005年、「かごしま親善大使」となり、県内外のイベントで鹿児島のPRに取り組んできた。

11月3日に行われた、おはら祭の本まつり。歴代の「かごしま親善大使」も集結し、おはら節やハンヤ節を踊った。
参加するかごしま親善大使のOGからは、終了を残念がる声が聞かれた。

第16代かごしま親善大使・中村美月さん:
かごしま親善大使は、これから先もずっと続くと思っていたので、寂しいという気持ちは正直あります

相次ぐ観光親善大使の終了…

コロナ禍によるイベントの減少、そして、観光PR方法のSNSなどへのシフトチェンジ。これがかごしま親善大使終了の理由だ。

鹿児島観光コンベンション協会・大坪聡さんは、「不特定多数の人に観光PRをするとしても、それを聞いたからと言って鹿児島に来たくなるのは少数なのでは」とした上で、「やはりデジタルで『来たい』と考えている人に、ダイレクトに鹿児島の魅力を伝えていくのが、これからの時代に即したことではないか」と話す。

鹿児島県内の自治体では、同様の理由で観光親善大使の終了が相次いでいる。2016年には、少なくとも20の自治体や地域で活動が確認された親善大使。しかし、7年後の2023年、その半数近くの9つの大使が姿を消すことになった。

観光の専門家は、観光親善大使の減少は全国的な流れと話す。
みなみあそ観光局・久保尭之戦略統括マネージャーは、「コロナを契機にして『正直、必要なかったよね』という、そういったイベントなどがなくなってきた。SNSとかデジタルになると、インフルエンサーとかタレントを起用したほうが、より誘客効果が高くなる」と指摘する。

イベントに生中継…大忙しの親善大使

そんな中、親善大使を続ける自治体もある。鹿児島・指宿市の「いぶすき菜の花大使」の活動に同行した。

2023年9月に就任したばかりの下川紗耶香さん。この日は、翌日に福岡・博多で開かれる、薩摩半島南部地域の観光フェアに参加するため新幹線で現地に入った。

下川さんの県外での活動は今回が2回目だ。移動中の車内でもイベントに向けて予習に余念がなかった。

「指宿以外の3市の特産品も頭に入れておいたほうが良いかなと思う」と話す下川さん。「大使は制服を着て目立つので、笑顔でいろんな方々に発信していけたらと思います」と目を輝かせた。

博多に到着した下川さん。制服に着替え向かったのは、福岡のマスコミ各社だった。翌日のイベントを告知するため、新聞社やラジオ局を訪問した。

迎えた翌朝。イベント会場は博多駅のコンコースだ。オープン前には、会場の設営も自ら行う。そしてイベントがスタートすると、ブース前には次から次へと客が訪れ、下川さんも笑顔で接していた。
さらに福岡のラジオ局の生中継にも出演と、大忙しの2日間だった。

「多くのお客さんに足を運んでいただき、驚きが一番ですが、だいぶ手応えがあります」と話す下川さんの笑顔がはじけた。そして、「一人でも多くの人に指宿の魅力を、私自身の言葉で発信し、なおかつ足を運んでもらえるPRを全国で行いたい」と、今後への意欲を見せた。

「観光親善大使がいるとその場が明るくなる。直接話して『ここが良い』という話が出てくると思う」と、訪れた人にも好評だった。

指宿市観光協会の原幸一さんも「今はイベントでのPRにとどまらず、『まちおこし』の観点で企画に携わっているので、指宿の町を盛り上げるには欠かせない」と、その存在を重要視している。

2023年で終了することになった鹿児島市のかごしま親善大使。最後の親善大使となった第18代の小田原千裕さんが、鹿児島市の繁華街・天文館のイベントで表彰式の業務にあたっていた。

小田原さんは「最後の親善大使ということで、これまでの先輩の思いや関係者の思いを背負い、責任をもって頑張っていきたい」と、残る任期1年の決意を語った。

ミスの時代から時は進み今、観光親善大使を取り巻く環境は変化しているが、これまで大使が果たしてきた役割は、決して小さくない。新たな時代に親善大使がどう活躍するのか注目される。

(鹿児島テレビ)

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