夫婦で営むパン店が“再出発” 被災からたった3ヵ月…「営業することで地域住民に元気を」 長野

カテゴリ:地域

 特集です。千曲川の堤防決壊から3ヵ月の1月13日、被災した長野市豊野町のパン店が営業を再開しました。店を営む夫婦は地域に活気を取り戻そうと急ピッチで準備。オープンは被災地の住民を励ましています。

 カレーパンにメロンパン。焼きたてのパンを求めて次々と客が訪れます。こちらは長野市豊野町のパン店「穂の香」。沼倉洋さんと妻の美代子さんの夫婦で営んでいます。3ヵ月前に店が被災。「再出発の日」です。

沼倉洋さん:

「(この3ヵ月は?)あっという間と言えばあっという間だけど…長かったね。体がついていかない。サボってたから」

 大量の濁流にのみこまれた豊野町。店にも水が押し寄せ高さおよそ2メートルまで水に浸かり、ほぼ全ての機械が使えなくなりました。

妻・美代子さん:

「あぜんとするしかなかった。悲しいとかつらいとか、そういう気持ちの前になんだろうこれと」

 2人の念願だったパン店。堤防決壊の3日前にオープン4周年を迎えたばかりでした。

沼倉洋さん:

「笑うしかないよね、逆に。もうやめようかなと少し思った、一瞬」

 洋さん、実は以前にも大きな災害を経験しています。25年前の阪神大震災。当時、洋さんは神戸市のパン店で働いていました。店は崩れ、同僚も亡くしました。つらい経験をしたからこそ、立ち直ることの大切さも身にしみて感じています。

沼倉洋さん:

「今回もそうだけど、いじけて体育座りしてたら直るんかと。それならいくらでもいじけてるけど。悪いことがあっても、その分いいこともこれからめぐってくるので。今回も4年たってマイナーチェンジ、リニューアルしたと思えば」

妻・美代子さん:

「前向きすぎる」

 浸水被害が広がった豊野町。いち早く営業することが、地域を元気づけることにもなると2人は復旧を急ぎました。

沼倉洋さん:

「売り上げがとか、儲けようとかではなく、とりあえず営業しているんだよということを早く見せたいな」

そして、1月13日午前6時…。

沼倉洋さん:

「グシャグシャの状態から見てきているので感無量。好きなことだから楽しいよね」

 オーブンなどの器具は借金をして揃え、営業再開の日を迎えました。店の自慢は、国産の小麦を使った食パン。絶妙な焼き加減によるやわらかさが売りです。

沼倉洋さん:

「他人はもう少し焼くと思う。(食パンが)ギリギリ立つくらい」

 新しい器具にまだ慣れていないこともあり、被災前に比べ種類も量も半分程度ですが、3ヵ月ぶりに焼きたてのパンが並びました。

朝7時30分、いよいよオープン。多くの客が訪れます…。

沼倉洋さん:

「久しぶりですね」

客:

「本当によかったですね、楽しみにしていました」

「いつもいつも来てておいしいので、とてもうれしい。ずっと待っていたので」

被災後、市街地のアパートで暮らす住民もかけつけました。

客:

「明るい話題になっていくのはいいかなと。早く戻ってきたいですね」

 周辺は仮設住宅などに移った家が多く、以前のような活気はありません。しかし、店の営業再開は2人が思ったとおり、住民を元気づけるものとなりました。

穂の香・妻 美代子さん:

「たくさんのお客さんが来て、うれしいの一言。ずっと、やれる限りやりたい」

穂の香・沼倉洋さん:

「開店できたということは、小さい、いいこと。(店が)安定して近所の皆さんが戻ってきて、以前のように活気がでれば」

 復興に向けてまず一歩。被災地においしそうなパンの香りが再び漂い始めました。