「明日への羅針盤」海中熟成酒で観光ツーリズム 人や産業をつなぐプロジェクト【岩手・陸前高田市】

被災3県の今を伝える「明日への羅針盤」、11月のテーマは「新しい東北」。

岩手・陸前高田市では、ワインなどのお酒を海に沈めて熟成させるプロジェクトが2018年から行われている。

漁業や農業など様々な業種と結びついた観光ツーリズムとして新たな価値を作りだしている。

陸前高田市で、11月9日、海中に沈めたホワイトリカーでりんごの果実酒を作る初めての取り組みが行われた。

これは陸前高田市の広田湾で進められている「広田湾海中熟成プロジェクト」の一環。

震災復興や人口減少といった課題を抱える中、地域とつながり続ける人を増やそうと市内の漁業者などで作る組合が2017年に立ち上げた。

ワインや日本酒などを海の中に沈めることで、波に揺らされて熟成が進み、まろやかなのど越しに仕上がるという。

広田湾遊漁船組合事務局長の鍛治川直広さんは「漁師さんと話をしていると、船の上にお酒とか水を置いておくと腐らないとか、波の揺れがおいしくなるっていうのは聞いていたので」と話す。

この海中熟成酒づくりを体験できる観光サービスが、2018年から本格的に始まった。

プログラムのなかには、養殖カキの漁場見学も含まれている。

これまでに県の内外から約210人が訪れて体験し、日本酒やワイン合わせて730本あまりが沈められた。

カキ養殖漁業者の佐々木学さんは「まだまだ試作段階、検討段階ではあるんですけど、沈めている酒の量が増えるにつれて、訪れるお客さんの笑顔も増えているし、段々この事業が育って町のシンボルになればと思って頑張ってます」と話した。

11月9日、水揚げされたのは春に参加者が沈めたホワイトリカーなど、約20本。

今回はこのお酒を使って果実酒を作るのが目的で初の試み。

このあと近くの農園に移動し、リカーに漬け込む特産の米崎リンゴを収穫した。

リンゴ農家は「農家のリンゴを利用してやってもらえれば、非常にいいんでないかなと(思う)。いっぱい売れれば農家のためにもなるから」と話す。

このように、農業など他の産業との連携も広がっている。

「農業で旬のいろんな果物でもこういう果実酒づくりできますし、来ていただいたお客様も満足いただけるんじゃないかと思って、結果として海だけでなく山の農家の方々にもお金が落ちるように、市全体の地域活性につながるんじゃないかとの思いがあってやっている」

海中熟成酒は、最近では観光だけでなく、市内の飲食店や宿泊施設からも注文が入っている。

ツアーの最後には、水揚げしたお酒の試飲も行われた。

参加者「普通のと違って飲みやすかった。とげとげしくない」

3回目の参加者「自分が作ったのを、また違うお酒に作る体験ができたので楽しかったです」

また、漁業者など生産者とも話に花が咲き、海中熟成酒を通して交流の輪がひろがっていた。

今後沈めるものもさらに種類を増やしていく構想を描いている。

広田湾遊漁船組合事務局長の鍛治川直広さん

「他の地域のお酒だったりいろんなジュースを陸前高田に沈めて、そこからまた観光に来てもらったり代わりにこっちからモノを送ったり、地域同士がつながる取り組みをしたい

多くの、人や産業をつなぐ海中熟成プロジェクト。

今後の発展に期待が寄せられている。

なお、この取り組みが評価され10月には、産業観光まちづくり大賞の最高賞となる金賞を受賞した。