「日本人より日本人らしい」 地球の裏から来た外国人僧侶 静岡・袋井市

カテゴリ:暮らし

袋井市の寺に、地球の裏側から訪れ日々修行に励んでいる僧侶がいます。

一体、どんな思いをもって取り組んでいるのか、取材しました。

◆早朝の坐禅で一日が始まる

お寺の1日の始まりは、まだ外が真っ暗な早朝5時。

起床した僧侶たちが最初に向かうのは、坐禅堂です。

約1時間、雑念を無くし心を落ち着かせます。

その中に一人、外国人の僧侶がいます。ウリセス・熊醒(ゆうせい)さんです。

ブラジル国籍の38歳、3年前から可睡斎(かすいさい)で修行をしています。

熊醒さん 「みんなと一緒に気持ちいい。心が静かな気持ち」

600年の歴史を持つ東海道一の禅の修行道場、可睡斎。約25人の僧侶が、日々修行にはげみます。

熊醒さんは現在、准役寮(じゅんやくりょう)という修行僧12人の教育係を担当しています。

◆ブラジルで僧侶になった熊醒さん

元々はブラジルの名門・サンパウロ大学で、歴史を教えていました。

音楽も大好きで、ギターが得意な若者でした。

しかし大学で働き始めると 大きな組織の中で翻弄されストレスに悩まされるようになります。

熊醒さん 「(大学で)自分のやりたいことができませんでした。まだ私は若かった。30歳くらいで未熟だったと思います」

精神の安定を求めて座禅に通う中、自分の中でも変化を感じ仏教を学び始めた熊醒さん。

33歳でサンパウロのにある可睡斎ゆかりの寺「南米別院佛心寺」の修行僧となりました。

熊醒さん 「坐禅で自分の心を見て、自分だけでなく世界を見て、私の生き方が変わって、気持ちも変わり、ストレスもなくなりました」

◆「日本人より日本人らしい」と熊醒さん

熊醒さんは3年前、師匠の勧めでさらに修業を積もうと可睡斎の修行僧に。

当時は、日本語も話せず苦労もありました。

熊醒さん 「日本語ゼロから、ここに来ました。耳から言葉を何回も繰り返して、頭に入ってきました」

今では仏教用語は間違いなく読めるようになりましたが、求道心を絶やしません。

先輩の僧侶は・・・

望月有道 老師 「非常に真面目ですね。ある意味、日本人より日本人らしいところがあります。外国人の修行僧も増えていることもあり、熊醒さんのような指導監督する立場に外国籍の人がいることが必要になってきたかなと思います」

◆「庭」を眺め生と死を感じる

忙しい修行の合間で、毎日、必ず熊醒さんが足を止める場所があります。

それは、お寺の庭園です。

熊醒さん 「毎日必ず違います。季節が変わったら、この庭も変わっています。生まれるものと亡くなるものとのご縁がある。それは私たちの生活と同じ」

「全てのものは一瞬一瞬で変化している。だからこそ一つ一つのことを大切にしていきたい」と熊醒さんは話します。

今年はラグビーワールドカップもあり、寺を訪れる外国人観光客が増えました。ポルトガル語と英語が話せる熊醒さんは、案内役を務めます。

熊醒さん 「外国の人が訪れると、自分の心が喜びます。みんなの目の光も見ます。『おっ、こんな生き方もあります。お坊さんすごいね』って共感してくれる」

母国を離れ地球の裏側である日本で、日々修行に励む熊醒さん。自分が体験した新たな生き方、仏教の道を、国境を越えて伝えようとしています。