“和牛のオリンピック”連覇を目指す鹿児島県 和牛改良に打ち込む現場の人々

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2017年、宮城県で開催された「和牛のオリンピック」とも言われる全国和牛能力共進会、通称「全共」で、鹿児島県は団体優勝を果たしました。これで、晴れて“和牛日本一”の座を獲得したんですが、和牛のさらなる改良を目指す取り組みは、その後も続けられています。その最前線を取材しました。

2年前に宮城県で開催された全共。過去2大会連続で団体2位だった鹿児島にとって、この時は是が非でも団体優勝を勝ち取りたい大会でした。

最初の審査は、将来の種牛候補が出場する部門。

堂々とした体格で終始落ち着いていた鹿児島の「金華勝(かねはなかつ)」は、ここで見事、一席を獲得。これでスタートダッシュを決めた鹿児島勢は、ライバル・宮崎県との激しい戦いを制し、念願の団体優勝を果たしました。

宮城全共で鹿児島勢に勢いをつけた金華勝はいま、曽於市の県肉用牛改良研究所にいました。

(県肉用牛改良研究所 上村利久所長)

「日本一を取るスタートということで、うれしい弾みのついた一席だった」

優秀な種牛の発掘は、和牛改良の大きな柱ですが、金華勝の評価は、実はまだ定まっていません。種牛としての価値は子牛によって決まります。

研究所では、金華勝を含む6頭の若い種牛の子牛が8頭ずつ飼育されています。

これらの子牛は1年4カ月にわたって餌の種類や与え方など全く同じ条件で育てられた後、肉量や肉質を検査されます。

そして、この時初めて若い種牛の評価が定まるのです。

とはいえ、肉量、肉質、脂肪などに優れた「優良種牛」と認められるような種牛は、5年に1頭出るかどうか。

和牛改良という終わりのない目的の中では、“全共一席”という輝かしい経歴を持つ金華勝でさえも、特別ではありません。

鹿児島の和牛の肉質検査は、南九州市知覧町で連日のように行われています。

室温が1度前後に保たれた枝肉保管庫。

格付け協会の職員が枝肉全体の部位を測定し、「サシ」と呼ばれる霜降りの入り具合や、「MUFA」と呼ばれる牛肉の風味に関わる脂肪酸の数値などを確認します。

肉質の良しあしは、親牛からの遺伝のほか、餌の種類や量などからも影響を受けます。

ここで蓄積し、大学で解析したデータを肥育の現場に還元し、それをもとに育てられた子牛の枝肉のデータを再び集めて、解析する。

数年がかりの積み重ねの結果として、肉質は改良されていきます。

(JA県経済連肉用牛課 下永吉功一さん)

「生産者と関係者が一緒になって取り組まないと、肉牛(枝肉)も種牛も勝てない」

和牛改良のもう一つの柱は“人”です。

JAや市町村の職員などおよそ35人が、生まれた子牛を検査する登記検査員の資格を得るための講習会に臨んでいました。

和牛のレベルアップを図るためには、人による目利きの良さも重要な要素となります。

指導する坂元信一さん。和牛登録協会県支部の主要メンバーとして、宮城全共における鹿児島の団体優勝に貢献しました。

次の全共は2022年、鹿児島で開催されます。連覇を見据え、牛の改良と人の育成に余念がありません。

(全国和牛登録協会鹿児島県支部 坂元信一副支部長)

「日本一を取ったおかげで、農家や関係者のやる気が非常に感じられる。それを糧にしながら、(再び)日本一が取れるように頑張っていきたい」

3年後の鹿児島全共での連覇を目指して。そして、鹿児島の和牛の底上げというゴールのない目標を目指して、和牛改良の最前線ではきょうも、牛と人が試行錯誤を繰り返しています。