「しつけ」と「虐待」境界線…海外に学ぶ“対処法”の最前線

  • 日本では約半数が「虐待」と「しつけ」の明確な線引きができない
  • 子どもに「何が危険でどう対処すべきか」を教えるアメリカ
  • フランスでは家庭での体罰を禁止する法案が可決

痛ましい児童虐待の事件が後を絶たない中、そのたびに繰り返し聞かれる「しつけのため」という言葉。
FNNが3月に行った世論調査では、「虐待としつけの明確な線引きができるか」との問いに、ほぼ半数の44.9%が人が「できない」と回答している。

一方、世界に目を向けると、アメリカでは大人だけではなく、子どもに対して虐待とは何かを考えるプログラムが行われている。海外の事例を取材して見えてきた、日本の児童虐待対策の在り方について考える。

“安全”と“危険”な大人の違いを教育

アメリカ・アリゾナ州の都市、フェニックスの小学校では、2年生を対象とした授業で、児童虐待防止のための教育プログラムが行われている。
この授業は、虐待問題などに全米各地で取り組む全米最大級のNPO法人「チャイルド・ヘルプ」が実施。

授業では、プログラムを担当するリサ・チオリさんの呼びかけに合わせ、子供たちが「私は選択できる」「走って逃げるか声をあげてノーと言う」「ハイタッチは元気な証拠」「変なところを触ると逃げて誰かに言いますよ」などと復唱。
虐待という言葉は使わず、子どもたちに“安全な大人”と“危険な大人”の違いなどをジェスチャーを交えて教えている。

授業を受けた児童は「とてもよかった。自分の体の安全に関するルールなどを説明してくれた。自分のせいではないってことも。もし大人から傷つけられてもそれは僕のせいではないって」と話した。

チオリさん:
残念なことに虐待をする人は子どもたちと面識があり、信頼して人だったりするので、学ぶことにより違いを認識できるように教えています。

このような予防教育プログラムは、高校まであるという。
アメリカでは、子どもたちにとって何が危険でどう対処するべきなのかを教えることで、虐待被害の抑止を図っている。

フランスでは保護を受ける未成年者が増加

一方、フランス・パリ市内の小学校前には、子どもたちの家族やベビーシッターたちが集まっている。、
フランスでは、原則として子どもだけでは下校させず多くの学校で、保護者などによる送り迎えが必要なためだ。

現地の日系企業で働く、須田佳央莉さん:
例外的に子供だけで帰っていいという届け出をしている場合を除いては、親、家族、ベビーシッターが学校の門まで責任を持ち、迎えに来る仕組みです

子供を守ろうと意識が高い一方で、フランスでも虐待などの結果、保護や家庭訪問などのケアを受ける未成年者は増加。2003年の24万4,648人に対して、2015年は29万5,357人に増えている。

1日1,000件のうち15%が子どもからの訴え

子どもたちの救済には国も積極的で、その一つとして虐待の通報窓口「119」がある。
こちらの窓口では、虐待の被害に気づいた大人はもちろん、その当事者である子どもたちでも通報が可能。
通報には、臨床心理士などの専門家が常駐して対応する。

窓口には1日およそ1,000件の通報があり、そのうち子どもからの訴えは15%を占める。
取材した日には、16歳の少女が「母親から虐待を受けている」との通報があった。

この案件に対応した担当者は「母親が大量に酒を飲み、身体的にも言葉でも暴力的でネグレクトの問題があります。通報した子供は何回か自殺未遂をしました。憂慮すべき事態と報告し“緊急”と付け加えます」と話した。

「虐待がどれだけ子供に深刻な影響を与えるか理解させるべき」

虐待防止に取り組む審議会の委員となった、医師のセリーヌ・ラファエルさんも、幼いころ虐待を受けていた1人。幼いころに父親のピアノの指導がエスカレートし、何時間もの猛練習を課されたほか、間違えるとベルトでお尻をたたかれたうえ、十分な食事も与えられなかったという。

フランスでは2018年12月、家庭における体罰を禁止する法案が議会で可決された。
セリーヌさんは、この法律が家庭から暴力を遠ざける力になると考えている。

セリーヌさん:
虐待を受けた全ての子どもには身体的・精神的な後遺症が残ります。
虐待防止に最も重要なのは虐待がどんなもので、どれほど子どもに深刻な影響を与えるか世論に理解させるべきです。


(「プライムニュース イブニング」2019年3月26日放送分より)

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