看板俳優は92歳!劇場は商店街…注目集まる「徘徊演劇」って何?【岡山発】

カテゴリ:暮らし

  • 街を劇場に見立てた一風変わった徘徊演劇「よみちにひはくれない」が話題
  • 劇団の看板俳優は92歳の岡田忠雄さん 
  • 劇団主宰の菅原直樹さんは文化庁芸術選奨の文部科学大臣新人賞に選ばれている

国も認めた「徘徊演劇」

役者と観客が一緒に街を巡り、老いや認知症介護について考える演劇「よみちにひはくれない」が2月に発祥の地・岡山県和気町で4年ぶりに上演された。「ボケは正さず演じて受け入れるー」彼らの考えに共感の輪が広がっている。この徘徊演劇を行う劇団OiBokkesShi(オイボッケシ)の菅原直樹さんは、芸術分野の優れた業績を表彰する今年度の文化庁芸術選奨の文部科学大臣新人賞に選ばれた。

主人公の青年:
じいちゃん?定国のじいちゃんだよね?

老人役:
驚いたが、しんちゃんか、あの時の…

主人公の青年:
そう、20年ぶり。 

             
20年ぶりに和気町へ戻ってきた主人公が子どもの頃、かわいがってくれたお年寄りに再会する所から物語は始まる。喜びもつかの間、お年寄りから認知症の妻がいなくなったことを聞かされる。

 老人役:
徘徊、うちのばあさん、さっきもいなくなったの

主人公の青年:
えっ、じいちゃん、(ばあちゃん)今いないの?今徘徊してんの?

この演劇は、主人公と一緒に観客も実在する商店街を回って捜すというユニークな鑑賞スタイル。

介護の現場から生まれた「徘徊演劇」

劇団OiBokkeShiの徘徊演劇「よみちにひはくれない」、4年ぶりに岡山県和気町での再演だ。劇団OiBokkeShiを主宰する菅原直樹さんは、介護福祉士でもある。菅原さんはかつて、勤めていた特別養護老人ホームで認知症患者と会話している時に、患者の間違いを訂正するより、演技して、相手に合わせた方が対話が深まり、相手の感情に寄り添えることに気付いたという。

劇団OiBokkeShi主宰 菅原直樹さん:
(介護の現場では)認知症のお年寄りに、(自分は)息子や時計屋と間違われる。演じると即興芝居が始まる。お年寄りも受け入れられるから表情が明るくなったり、ちゃんとコミュニケーションが取れる状態になる。こういう関わり方も良いのでは。

「ボケは正さず、演じて受け入れる」という理念のもとこれまでに数々の演劇作品を上演。認知症の世界を肌身に感じることができ、演劇関係者だけでなく福祉関係者にも高い評価を受けている。

劇団OiBokkeShiのデビュー作となった「よみちにひはくれない」は菅原さんと、現在92歳になる看板俳優・岡田忠雄さんとの出会いから生まれた。
岡山市の自宅で認知症を患う同い年の妻を介護する岡田さんの口癖が「夜道に日は暮れない」という言葉。

92歳になる看板俳優・岡田忠雄さん(左)
認知症を患う岡田忠雄さんの妻

劇団OiBokkeShi主宰 菅原直樹さん:
岡田さんのように歳をとって、日が暮れ始めているけど、もう日は暮れているんだからゆっくり行こうよと。とてもプラス思考でいいなと思った。

「老い」と向き合うリアルな内容

和気町での「よみちにひはくれない」の再演は“徘徊演劇”の原点に返り、より質の高い作品に仕上げるのが狙いだ。菅原さんは脚本を書き直し、演出家として裏方に徹している。認知症で徘徊し、いなくなった女性を探す主人公。しかし、その女性は既に亡くなっている事実を知るのだ。

【劇中の主人公とカフェ店主やり取り】
カフェ店主:
ばあちゃんな、死んでおらんのよ。

主人公の青年:
じゃあ、じいちゃんは…

カフェ店主:
それからじゃな、じいちゃんがボケたのは。徘徊しだして、ありもしないことを話し始めたのは。ばあちゃんが死んだことを認めたくないのだろう…  

【劇中の主人公と老人のやり取り】  
 

老人役:
うちのばあさん、おったわ家の中に。あのばあさんは本当に…わしもくたびれた。家の中におったんよ…
夫婦というものは、必ず最期まで、離すな…わかったか

主人公の青年:
わかった…

老人役:
うちの、ばあさんを最期まで看たい(老人ホームに)預けるのはもう少し先にする…

主人公の青年:
じいちゃん…そしたらばぁちゃんを探しに行かないとね
 

徘徊演劇を鑑賞した観客:
そのうち自分が世話をすることになるのかなと思ったら、色々と相手の身になって行動しないといけないのかなと思った。       

徘徊演劇を鑑賞した観客:
リアルで、客観的に見ているがどこか主観的に、自分の身近な人と置き換えてみたり、作品を見ながら自分自身のことを思い返すことがとても多かった。

日々、老い衰えていく中で老いを嘆くより、その日を人間らしく生きようー。
地域での「老い」との向き合い方、そして、そこにある希望を劇団OiBokkeShiはこれからも伝えていく。

劇団OiBokkeShi主宰 菅原直樹さん:
認知症になって、もしかしたらさっき覚えたことを忘れたり、愛する人が誰か分からなくなる。どこにあるか分からない家に帰ろうとしてしまうこともある。しかし、関わり方によっては今この瞬間を楽しむことができる。地域で認知症の方と今この瞬間を楽しむことができるような関わり方を演劇を通じて発信できたらと思っている。  

(岡山放送)

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