社内で交流を深めたい人たちへ…お酒に頼らないコミュニケーションの方法

  • 大人数の飲み会で話せない原因は“初速の遅さ”
  • これからは「飲み会」に代わる“新語”が必要になる…?
  • コミュニケーション活性化のカギは「くり返し雑談すること」

友達3~4人だけの飲み会なら流暢にしゃべれるのに、職場の大規模な飲み会になったとたんに話せなくなる人も多いだろう。

お酒も入って声が大きくなった人を中心に会話が展開する中、自分だけノリきれていないと感じ、来るんじゃなかった…と、大人数の飲み会を敬遠したくなる気持ちも芽生えてしまう。

せっかく参加するのだから、上司や同僚との仲を深めるために、大人数の飲み会を楽しむ方法はないのだろうか。そして、お酒を飲まない人が増えている中、そもそも社内の親睦を深めるために「お酒」は必要なのか。

これまで3000人以上に雑談指導を行ってきたコミュニケーション講師・川島達史さんに、飲み会でのコミュニケーションについて聞いた。

大人数での会話=パン食い競争

――少人数だと話せるのに、大人数の飲み会で話せなくなるのは、なぜなのでしょう?

飲み会で話すのが苦手だと感じる原因は、初速の遅さ。つまり、話すスピードです。

コミュニケーションはパン食い競争です。足が速い人がパンを食べてしまうのと同じように、会話の初速が速い人が話題を独占してしまう傾向があります。初速が速くても気配りができる人は他の人に話を振ってくれますが、初速が速い上に空気が読めない人がいると、その人の独壇場になりがちです。

話す速度を10段階評価し、評価が「10」「7」「7」「5」「5」「3」の6人で飲み会をしたとします。この場合、「10」「7」「7」の3人が会話の大部分を持っていき、「5」「5」「3」の3人はあまり話せないでしょう。

話す速度が遅い人ほど、大規模な飲み会に苦手意識を抱きやすいと思います。

積極的に話せなくても、場にいるだけで意味がある

――飲み会が苦手な人や、話すのが遅いと自覚している人ができる会話のテクニックはありますか?

話す速度は筋力と一緒で、18歳ぐらいまでに基礎ができてしまうので、速くすることは難しいんです。だから、飲み会で話せなくても自分を責めず、落ち込まないことが大事。

その上でできる対策は、話のネタを3つ、参加者に聞きたい質問を3つ用意しておくことです。考えておくと不安感が薄れ、ポジティブな気持ちで参加できるでしょう。ネタを披露することではなく安心材料にすることが目的なので、結果的に考えたものが使えなくてもいいという感覚で臨みましょう。

あと、大勢の前で話すのが苦手な人は、人の目を気にする「公的自己意識」が強い人が多いです。一方、楽しく話せる人は、自分が楽しいかどうかに重きを置く「私的自己意識」が強い傾向があります。「公的自己意識」が強いと、あらゆるコミュニケーションが嫌になってしまうので、多少は自分勝手に話した方が気疲れしないと思います。

――とはいっても、意識を変えて自ら話し始めるのは、ハードルが高い気がします。

すぐには実践できないですよね。もっとも簡単な会話のコツは、アイコンタクトです。上越教育大学の青山康郎氏・戸北凱惟氏が行った「発話を促す話し合いの場に関する研究―アイコンタクトに着目して―」では、参加者と目が合う量が多い人ほど、発話数が高いことがわかっています。

人より顔を5cm前に出して、話している人の目を見ながら、楽しそうに相槌を打つだけで、話を振ってもらいやすくなります。

たとえあまり話せなかったとしても、その場にいるだけで役に立っていることもあります。初速が速い人だけが集まっていると、まとまりにくいですが、ゆったり話す人が1人いるだけで、場に安心感が生まれます。初速の速い人達の承認欲求も満たされるので、意外と重要なポジションなんですよ。

「飲み会」に代わる“新語”がこれからは必要かも

大人数の飲み会での会話のコツは分かったが、それでもお酒が入ってしまうと、ついつい言わなくていい“本音”まで言ってしまうこともあるだろう。職場とは違う場所だからこそ、普段言えないことも打ち明けたいものだが、そういった話はお酒の力を借りるしかないのだろうか。

――職場の人達と本音で語り合うには、やはりお酒が必要なのでしょうか?

会話は促進されると思います。ただ、酔っ払って絡んだり本性をさらけ出しすぎたり、ネガティブな一面も出やすいので、お酒に頼るのはハイリスクハイリターンです。

職場の親睦会の呼び名が「飲み会」で定着していて、その名称的にお酒と切り離しづらいですが、「飲み会」は“仕事から切り離す”という意味の用語でもあると思うんです。なので、「飲み会」の趣旨さえ明確になっていれば、お酒はなくてもいいと思います。

社員同士の交流を深める場として、「飲み会」とは別の“仕事と切り離された食事会”という意味の新しい言葉が生まれれば、お酒に頼らなくても親睦を深める機会が作れるかもしれません。食事や軽食が楽しめて、会議室でも居酒屋でもない居心地のいい空間が出てくると、よさそうですね。


――最近は、ランチや休憩時間に“懇親会”を開く会社も出てきましたね。

社内のコミュニケーション活性化のポイントは、くり返し接することで好感度を高める「単純接触効果」を利用すること。

日常的にプチ親睦会・プチ飲み会を組み込むと、社員同士の仲が深まりやすくなります。会議の後半30分間は雑談タイムにするとか、金曜は30分だけ軽食を食べながらおしゃべりする時間を設けることが必要です。年に一度の飲み会だけでは、あまり意味がないんです。

飲み会であってもランチ会であっても、開催する意味を参加者全員に共有することが大切です。


――参加する意味を理解することで、どのような効果が生まれるのでしょう?

趣旨に沿った楽しみ方、コミュニケーションの取り方ができるようになっていきます。

会の目的は、「とにかくお酒を飲むんだ」って日があってもいいし、「親睦を深めるためにお酒はセーブしながら話そう」って日があってもいいと思います。参加者が趣旨を知っていれば、不満も出にくくなりますね。

そして、ネタや質問を用意したり、アイコンタクトを意識したり、個々が会話を楽しむための努力をすることで、自分もみんなも楽しい飲み会になると思います。

大人数が集まる場で話せないのは性格の問題ではなく、持ち前の性質が原因だとわかれば、少しは気がラクになりそうだ。

そして、「飲み会」を開く際にはその目的を明確にして、たまにはお酒抜きの会を開いてみると、お酒が飲める人と飲めない人の隔たりもなく、社内の交流が図れるかもしれない。働き方改革が叫ばれる中、「飲み会」という言葉自体も含めて、これからは「飲み会改革」を考えることも必要だろう。

川島達史
コミュニケーション講師、精神保健福祉士。自身も対人恐怖症に苦しめられた経験を持ち、会話術を勉強。社会復帰して一般企業で働いた後、ダイレクトコミュニケーションを設立。これまで10~70代3000人以上の雑談スキルを指導。著書に『結局どうすればいい感じに雑談できるようになるんですか?』など。
https://www.direct-commu.com/

取材・文=有竹亮介(verb)


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