「やんわり断る」日本語は奥ゆかしくも難しい!? 改正入管法みすえた新感覚の“日本語レッスン”を受けてみた

カテゴリ:国内

  • 4月の改正入管法施行で今後35万人の外国人材が増加する見込み
  • 会社では日本の文化は教えてくれない
  • 外国人は「自分が悪くないのに謝る日本人」が理解できない

35万人の外国人材増加

4月から施行される改正入管法は日本で働きたい外国人への門戸を広げるものだ。今後5年間で35万人の外国人材が増えることが見込まれている。
しかし、その多くの人たちが日本文化に苦戦することになるかもしれない。
「日本語が話せる」から、「日本人と円滑なコミュニケーションが図れる」というわけではないからだ。たとえば…


上司「ミシェルさん、例のプロジェクトうまくいったみたいですね。素晴らしい仕事ぶりでした!」

<×悪い例>
ミシェル「はい、頑張りました」
<〇良い例>
ミシェル「ありがとうございます。先輩方にたくさんお手伝いいただいたおかげです。今後は一人でもきちんとできるようにしていきます」


・誉め言葉に対してお礼を言う
・相手や周りの人を持ち上げる
・今後改善しようと思う点に触れる

これがポイントだ。
 
こうしてあらためて文にしてみると、謙遜とはなんて素敵なんだろう。
しかし、謙遜はストレートな物言いを好む外国人にとって、とても難しい。下手したら思いつきもしない。ただ、日本の会社組織でやっていくためには、こうした「日本らしさ」も身につけなければ苦労するのではないだろうか…そうした思いから改正入管法施行をにらみ、「文化」も組み込んだ新感覚の日本語レッスン「Zipan」(ビズメイツ社)が5月からはじまる(上記例文はこの教材より)。

東京・秋葉原のBizmates社オフイス

組織での生き方は教えてくれない

カナダ・バンクーバー生まれの日系カナダ人、伊藤日加(43)さんは、21歳のときに日本に移住。グローバルに展開する大手語学学校の英会話講師になったのだが、日本の組織になじめず、つい外国人同士でかたまってしまっていた。冒頭のような「日本らしさ」を誰も教えてくれなかったから日本人と完全に打ち解けられなかったのだ

「語学を教えることは、文化を教えることでもある」

そう感じた伊藤さんはその後、この語学学校の仲間3人とともに、文化も学べる語学学校を立ち上げた。そして、この度の法改正を受けて、外国人向けの日本語レッスンを始めることにしたのだ。

Bizmates株式会社 伊藤日加 取締役

外国育ちの彼らが感じ取った「日本らしさ」は、一瞬、大げさにみえたのだが、いや、これがずばり真髄を捉えていた。

「相手をたてる」「やんわり断る」

<相手をたてる文例>
上司「ごめん。会議室間違えて、遅くなっちゃった」

×悪い例
ニッキー「大丈夫です」
〇良い例
ニッキー「いいえ、とんでもありません。こちらこそ、会議室の変更について口頭でもお伝えすべきでした。今日はお忙しそうですね」


いい部下じゃないか…最後のねぎらいは、私だと嫌味をこめて言ってしまいそうだが、なにより、その前の気遣いがいじらしい。

ポイントは
相手のミスをフォローする言葉をかける
・こちらにも非があった旨伝える
・話題を変える


社会人になり12コ上の先輩ともめて、内心ぶちぎれながらも、とりあえず謝らなくてはと思い謝罪に赴いたのに「言葉では謝っているが、顔がまだキレまくってるんだよ、おまえは!!」と、さらに怒られた私としては、当時、もっとはやく学びたかったポイントがてんこ盛りだ。

※イメージです

<やんわり断る文例>

上司「マイルズ君。きょう、仕事の帰りに飲みに行かないか?」

×悪い例
マイルズ「すみません。きょうはいけません」
〇良い例
マイルズ「いいですね。でも、あいにく今日は先約がありまして…申し訳ありません。ぜひまた別の機会にご一緒させてください」


そりゃ、きょうのきょうだと予定あるよね、マイルズ君…もう一度別日に誘いたくなるではないか!!

絶対やりたくなかった番組のリハーサルを、反抗心からすべて無視し、数か月後に突然番組から降ろされた私は、あれからかなり長い年月がたつのに、いまだに廊下でその当時の番組責任者とすれ違うと気まずい。「やんわり断る」なんて…はやく教えてよ。

「なぜ日本人は自分が悪くないのに謝るのか」

こうしたレッスンはすべてビデオチャットでおこなうため、場所を選ばない。PCにテキストを表示させながら、対面で会話。スマホでも受講可能だ。講師は「日本語専門の講師」ではなく、実際に日本の企業で働く人たちを兼業として採用し、実践的な会話を学んでもらうという。

試用期間のテスト生として受講しているエジプト人で薬剤師のシャイマ・ハタブ(28)さんは、日本の製薬会社で働くことを目指し、このプログラムで日本語を学んでいる。「なぜ日本人は自分が悪くないのにまず謝るのか理解できなかった」というシャイマさんだが、いまでは「日本の文化として理解できる」と笑顔を見せた。

エジプト人受講生 シャイマ・ハタブさん

このレッスンを仕掛ける伊藤さんは自身の経験から「話せるから、働けるわけではない」と力説する。さらに30代40代のミッドキャリアは新人扱いしてくれないから、なおさらカルチャーギャップに苦しむという。確かに外国人の視点でみたこうした日本語レッスンならば、そのギャップを埋めることには役立ちそうだ。

やがてこの国を訪れる多くの外国人労働者が、こうしたスクールで日本語を学び、文化を楽しみながら暮らしてほしいと切に願う。

アメリカのバーで飲んでいた時、つまらないボケをかました隣に座るアメリカ人を、サンダルではたいて突っ込んだら、「なぜ君はそんなことをするんだ」と死ぬほど悲しい顔で訴えられた。人を間違えたら、撃たれていたかもしれない。

文化を学ぶことは大切だ。

(執筆:フジテレビ プライムオンラインデスク 森下知哉)

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