正午過ぎたらアルコール! “喋らないと負ける国”スペインの飲み会事情

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  • 25歳以下の若者の失業率は32%超 歓送迎会という風物詩はない
  • 「飲みすぎない」「口説かない」「政治、宗教の話をしない」
  • 仕事と個人の線引きをはっきりさせている裏事情とは・・・

歓送迎会シーズンという風物詩はない

そもそも、大学生が一斉に始める就職活動というコンセプトもないスペイン。25歳以下の若者の失業率は32.6%。大学を出ても仕事がないのが通常なのに加え、入社時期も企業によってまちまちなので、歓送迎会シーズンという風物詩もない。

エクスパンション紙データ 2018年12月より

さらに、アルコールが特別な場や時間の飲み物ではないことは明らかだ。 スペインで平日の定食屋に入ると、昼間でも必ずビールまたはワイン(または水)が付いてくる。

極端な例を言えば、子供の夕方の迎えに出かけた親が学校前で一杯飲んで待つというのも、世間では問題視されない。昼の12時を過ぎれば、アルコール飲料は食卓にあってもおかしくなく、自己管理で飲むもの。

故に、「酒の席なら話せる」「酒の力を借りて」という感覚もないので、日本の職場であるような、交流を建前に酒の席を設けるという習慣は最小限だ。

政治と宗教の話はNG

唯一職場で尊重されるのは、クリスマス時期の食事会。12月は日本の忘年会よろしく、職場やクライアントとの酒の席も多くなる。こうした会席で最も注意しなくてはいけないのは、「飲みすぎない」「口説かない」「政治、宗教の話をしない」ことだという。

職場の飲み会の必要がない理由に、元来のコミュニケーション上手という国民性も上げられるだろう。ラテン諸国に一般的に言える傾向だが、社会全体が子供に優しい。個人レベルでも子供好きが多い。子供は自由な環境で育ち、お行儀よりも個性を尊重される。

日本人からみると「クソガキ」レベルの奔放さも、スペインでは「元気がいい」というポジティブな評価になる。学校生活でも自由な発言が許され、喋らないと負けてしまう国ゆえ、自分の意見を主張することにかけては、スペイン人が最も得意とするところだ。

ゆえに会社生活に入っても、コミュニケーションで困ることはあまりないのかもしれない。一般的にNOはNOと言える社会で、新入社員でも比較的過ごしやすい会社生活なのではないだろうか。

アクティブなイベントでコミュニケーション

とは言え、昨今ではスペインでも企業には様々な地方や国からの社員が集まっている。その交流をより円滑にしようと、社内イベントなどが催されるのも、都会の会社では一般的だ。その場合、交流=飲み会開催ではなく、一緒に何かを楽しんだり、成し遂げたりするというアクティブなイベントが多い。ゴーカートやシューティングゲーム、料理教室や楽器演奏、ワインの試飲会など、社内交流目的のイベントも年々多様化している。

スペインでは仕事と個人の線引きがしっかりしているので、勤務後の上司が誘う飲み会も稀だ。労働者の権利については一般人でも普通に持ち合わせている知識なので、サービス残業やパワハラなど、会社とのトラブルになりうる要素は敏感に察知され、回避される。

皆奢られ好きなので、上司や会社が費用を出すという食事会には誰もがこぞって参加するが、自腹で仕事後も同僚や上司とつるんでいるという人は少数派だ。定刻上がりで自宅に直帰がスタンダード。皆、趣味の仲間や家族と過ごすのにも忙しい。

どのセクターでも労組が強いのもスペイン社会の特徴の一つ。国の定める労働条件を常に監視し、労働者の権利を主張し続けるという雇用者と被雇用者の関係が、ひいては社内飲み会の有無に影響しているのかもしれない。

日照時間と労働時間

もう一つ、気候や日照時間も文化の違いを生み出す大きな要因だ。スペインでは3月末の夏時間が始まると、1日がとにかく長い。夏至の頃には暗くなるのが22時近くと極端だ。

昼食時間が14時〜15時、都会では随分昼休みが短縮されてきているものの、商店など職種によってはまだ2時間の昼休みがある。家に戻って家族と昼食というスタイルは地方都市では健在だ。

イギリスとスペインの労働時間比較(出典:2018年4月5日ヨーロッパプレス)

そして夕食時間は全国的に20時〜22時ごろ。この時間からの飲み会だと、次の日に響くのも必至というわけだろう。日本で飲み会が18時や19時始まりと聞くと、驚くスペイン人は多い。こうした自然環境も、スペインでの職場飲み会を難しくしている要素の一つかもしれない。

【執筆:ライター&コーディネーター 小林 由季(スペイン在住)】

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