野党「統一候補」初合意も共闘の本気度は「?」 “32分の2”が物語る深刻なお家事情

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  • 参院選1人区の候補一本化で初合意
  • まだ2選挙区…”大御所”から苦言
  • 調整進まぬ”3つの理由”

「1強多弱」打破へ正念場の野党

全国の自治体の多くで首長選挙・議会選挙が行われる統一地方選挙は、3月21日の知事選告示で火ぶたが切られる。2019年は、12年に1度の統一地方選挙と参議院選挙が重なる年であるうえ、参院選にあわせた衆議院解散による「ダブル選挙」も取りざたされ、まさに「選挙イヤー」だ。

野党にとっては、「1強多弱」といわれる現在の政治情勢において、数的不利を打開する絶好の機会。各党とも「野党共闘で安倍政権を打倒する」と息巻いているのだが、具体的な協力態勢の構築はなかなか進んでいないのが現状だ。

参院選”勝敗のカギ”1人区で初合意

14日 野党6党の幹事長・書記局長会談

14日、野党6党派は「共闘の一里塚」といえる合意に至った。幹事長・書記局長が会談し、参院選の1人区で初めて候補者の一本化にこぎつけたのだ。

立憲民主党・国民民主党・共産党・自由党・社民党・衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」は、愛媛・熊本の2つの選挙区で、無所属候補を「統一候補」とすることで一致。沖縄についても、地元での調整を経て近く候補が決まる見通しだ。

立憲民主党の福山幹事長は「1つ1つの結果を積み重ねていくことが、野党が1人区で連携をして安倍政権に対峙していくということを国民に示すいちばん適切な方法だ」と意義を強調したうえで、「作業をさらに加速させたい」と述べた。

参院選は、定数が1~6人の選挙区選挙と、全国統一の比例代表選挙で行われるが、これまで与野党の勝敗の帰趨を決してきたのは常に1人区だった。それだけに民進党の事実上の分裂以降の”バラバラ野党”にとって1人区の候補者の一本化は不可欠なものであり、今回の決定は、標ぼうする「安倍政権の打倒」に向けて一定の成果ともいえるだろう。

「32分の2」に”大御所”から苦言

野田前首相(左)と岡田前副首相(右)

しかし、各党派の代表が会談し、32ある1人区で候補者を一本化する方針で合意したのは1月のこと。その後2カ月近くの調整を経て、選挙本番まで約4カ月の時点で、合意できた選挙区がわずか2つという状況に、首相経験者らベテラン議員は厳しい見方を示した。

「2つだけではなく、もう少しいくつかの選挙区が発表されることを期待していた」(野田前首相・14日)

「前回並みの結果(※野党の11勝21敗)が出せるのかということすら、現時点では、相当、厳しいと思う。もっと危機感をもった方がいい」(岡田前副総理・15日)

実は、今回、合意した愛媛と熊本の無所属候補は、前回2016年の参院選でも野党統一候補となった実績があり、いわば「調整しやすい選挙区」であった。野党側から複数の候補者に出馬の動きがある「調整しにくい選挙区」については、先送りとなった形で、”大御所”が指摘する通り、共闘に向けた「出遅れ感」は否めない。

6党派の幹事長・書記局長は、次に会談を行い、新たな統一候補を発表するのを、4月半ば以降としているが、候補者にとっては、統一候補の”お墨付き“がないまま、選挙に向けた準備期間が刻一刻と減っていく状況となっている。

一本化の必要性では一致しながらも、なぜ具体的な調整が遅々として進まないのだろうか。その背景には、複雑に絡み合う各党の思惑がある。大きく3つの要因があるといえるだろう。

「12年に1度」のチャンスが逆に足かせに

立憲民主党の枝野代表(左)と国民民主党の玉木代表(右)

夏の参院選を前に、4月には統一地方選が行われる。参院選と統一地方選が重なるのは12年に1度のことで、野党にとっては一気に勢力を挽回するチャンスなのだが、このことが逆に野党の参院選候補者調整の進展を鈍らせているといえる。

地方議会の議員は、各党の都道府県連を支える基盤ともいえる存在だ。各党とも、統一地方選で自党が推す候補者を当選させ、基盤を拡大させようと図っている。

特に、野党第一党の立憲民主党は、おととし10月に誕生したばかりであり地方組織が現状ではぜい弱で、今後の躍進に向けてこの統一地方選は重要なものとなっている。また、第二党の国民民主党は、民主党・民進党の存続政党だが、支持率は低迷を続けており、民進党時代から残された地方組織を維持しなければ、足元から崩壊する危険性をはらんでいる。

「参院選の1人区では野党で一致して戦いたいが、その前の統一地方選では自分たちの勢力を拡大させたい」との両党それぞれの思惑が、参院選での調整を停滞させているのだ。

立憲民主党の幹部からは、去年すでに「候補者調整が本格化するのは春の大型連休前後」と、まるで予防線を張るかのような発言が相次いでいたが、32の1人区すべてで一本化の作業が済むのは、まさに統一地方選が終わった後のゴールデンウィーク以降となりそうだ。 

「打倒与党」の陰で”野党内抗争“

ともに民主党・民進党を起源にもつにもかかわらず、立憲民主党と国民民主党の間の”溝“は深い。今国会でも、互いが参院での野党第一会派を目指し、少数野党との統一会派、議員の会派間移動、無所属議員の会派入りといった「数の抗争」が繰り広げられた。

表向きは、「安倍政権打倒」「参院選での野党共闘」を訴える両党だが、幹部らと話をすると、政府・与党への批判と同時に、両党どうしの非難や不満という本音を耳にすることが多い。

参院選の1人区について話を聞いてみても、「あそこの選挙区は勝てそうだからウチの候補者でやりたい」「勝ち目が薄い選挙区は向こうにやらせよう」という類の話は少なくない。

参院選の結果は、与野党の勢力図だけでなく、当然、野党内の勢力図を塗り替える可能性もある。1人区の候補者調整をめぐっては、野党統一とする候補が当選後にどの会派に入るかを重視する向きもあり、永田町での「立憲VS国民」の軋轢が、全国の選挙区にも影響を及ぼしている状況だ。

「どうせ最後は下ろしてくれる」は通じない?

共産党の志位委員長

また、共産党の動向も候補者一本化の大きなカギとなっている。

共産党は過去の選挙で、共闘する野党勢力全体の議席数を増やす観点から、一本化のために、擁立した共産党候補を取り下げるという対応をしてきた。しかし、次の参院選については「相互推薦・相互支援」を原則に掲げ、一方的な候補者の取り下げは行わない方針だ。

共産党は、1人区のうち、すでに20を超える選挙区で候補者を内定している。共産党の主張する「相互推薦・相互支援」を実現するためには、一部の選挙区で共産党候補に一本化し、他の野党が候補を取り下げる措置が必要になるが、候補者本人はもとより、各党の支持組織の理解を得ることは容易ではないという。

立憲民主党や国民民主党からは、「最後はこれまで通り、共産党が下ろしてくれるだろう」と楽観視する声があがっているが、共産党の志位委員長は14日、「今回は一方的な対応はしない」と改めて強調。小池書記局長は先月、「共産党が候補を下ろしてくれると期待していたら大失敗する」と警告している。

立憲民主党と国民民主党との”溝”を越えた先にも、「譲らない共産党」との調整という高いハードルが構えているのが現状だ。

「1強多弱」を打破したいなら…

昨今の政界については「安倍1強」と言われて久しいが、「1強」を許している「多弱」の野党側の責任の大きさは、多くの野党幹部も述べている。その現状を打開するために、来る参院選は最大のチャンスなのだが、個別の党利党略にばかり囚われて一本化調整が遅れているようでは、「1強多弱」を崩すことは難しくなるばかりだろう。

「『1人区で一騎打ち』とぶれることなく言っている。それぞれの党が(主張を)飲み込まないといけない」(立憲民主党・枝野代表)

 「1人区においては野党が協力していかなければならない。協力すれば勝てる」(国民民主党・玉木代表)

 「今年を『安倍政治さよなら』の年にしよう。どんな困難があっても粘り強く乗り越え、本気の共闘をとことん追求する」(共産党・志位委員長)

3人の党首の言葉は、いずれも今年1月4日に発せられたものだ。年明けに表明したこの決意を、野党候補一本化という形でどこまで具体化できるか、それは「安倍政権打倒」を声高に訴える野党の言葉の本気度がどれほどのものかを如実に表すことになる。


【執筆:フジテレビ政治部 野党担当キャップ 古屋宗弥】

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