職場の飲み会は残業になるのか? その境目は“強制力”があるかないか…。

  • 「労働時間」の判断基準は“会社の指揮命令下にあるかどうか”
  • 参加が強制されている飲み会は残業に当たる可能性がある
  • 交通費の支給は、法律では義務付けられていない!?

働き方改革が叫ばれ、「残業を減らせ」と言われる一方で、職場の飲み会は終電を超えて朝までコース…ということはよくあるだろう。

20~35歳の男女100人に行った編集部の独自アンケートでは、「会社主催の飲み会は残業扱いにすべきだと思いますか?」という質問に、53人が「はい」、47人が「いいえ」と回答。五分五分だが、少なからず飲み会は残業扱いにすべきだと思っている人もいることが分かった。(インターネットによる独自調査。調査期間:2019年2月実施。調査協力:ネオマーケティング)

もし、職場の飲み会が残業と認定されたらどうなるのか。果たして、職場の飲み会は残業と認められるのか、弁護士法人勝浦総合法律事務所の勝浦敦嗣弁護士に聞いた。

残業認定のポイントは「強制参加」

残業代未払い請求を専門に扱う弁護士法人勝浦総合法律事務所の代表・勝浦敦嗣弁護士

――職場の飲み会は、残業扱いになりますか?

ポイントは、労働時間に当たるかどうかです。

労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のこと。つまり、会社に命令され、拘束されている時間は労働時間に当たります。


――上司に半ば強制的に連れていかれる飲み会は、労働時間に当たるのではないのでしょうか。

その判断は難しいところです。

事前に「参加しないとペナルティがある」「重要な取引先も来るから、必ず参加してくれ」などと言われていれば、参加が事実上強制されており、労働時間に当たると認められる可能性があります。

しかし、「送迎会あるけど、出られたら出て」と言われていたら、参加が強制されていたとまではいえず、労働時間に該当しないと思われます。

職場の飲み会が労働時間に当たるか、裁判で争われたケース自体はあまり見当たりません。東京地裁で平成23年11月10日に出された判決でも、「会社業務終了後の懇親会・食事会等は、業務終了後の会食ないしは慰労の場に過ぎず…(中略)…『当該懇親会等が、予め当該業務の遂行上必要なものと客観的に認められ、かつ、それへの出席・参加が事実上強制されているような場合』を除き、労働時間に含まれないものと解するのが相当である」と判断されています。


――朝までコースになった場合も、明らかな命令がないとダメ?

時間が長くなったとしても、残業と認められやすくなるわけではありません。むしろ、会社のオフィシャルな行事の度合いの強い1次会に比べ、2次会、3次会となると業務との関連性が減っていくでしょうから、残業と認められにくくなるでしょう。

2次会、3次会と続けば、途中で帰っていく人はいますよね。帰った人がいる時点で、参加が強制されていたとはいいにくくなります。


――相応の強制力がなければ、飲み会は残業扱いにならないのか。

裏を返せば、飲み会を主催する側は、誘い方に注意した方がいいでしょう。「強制参加だからな」と言ってしまった場合、部下から「労働時間だ」と訴えられても文句は言えません。

事前に出欠を取るなど、自由参加であることを明確にしておくと安心です。

交通費の支給は会社の規則次第

――強制力があれば労働時間に当たるということは、接待は認められやすい?

その可能性は高いです。

大切な取引先とのゴルフコンペや、重要な仕事の割り振りが発表される懇親会など、業務との関連性が高く、出欠の自由度が低いものは、労働時間と認められやすいでしょう。

休日に開催されるイベントなどに、勤めている会社のスタッフとして参加する場合は、当然労働時間と認められます。普通の休日で、後輩がスタッフを務めているブースにふらりと遊びに行くのは、労働時間には当たりませんよ。


――飲み会参加のために、会社から交通費を支給してもらうことはできるのでしょうか?

実は、会社に社員の交通費を支払うよう義務付ける法律はありません。

つまり、交通費を支給するかどうかは、会社との契約次第です。通勤時の交通費も、全額支給の会社があれば、上限を定めている会社もありますよね。交通費を一切支給しないというルールを定めることも、法律上は問題ありません。

交通費が会社から支給されるか知るには、就業規則や労働契約書を確認しましょう。支給条件が記載されていると思います。ただ、懇親会に行くための交通費の支給条件について明確に定めている会社はほとんどないでしょうから、実際は就業規則や労働契約の解釈の問題になってきます。

少なくとも、労働時間に該当しない任意参加の懇親会に行く費用については、会社に請求することは無理だと思います。

「残業にしてほしい」というビジネスパーソンの心情とは裏腹に、職場の飲み会が残業と認められることは、稀であるという悲しい現実を突きつけられた。だからこそ、職場の飲み会は「参加しなければならない」という強制力をなくし、「今回は欠席」と言える環境を作っていくことが大切なのかもしれない。

弁護士法人勝浦総合法律事務所
https://zangyo-dai.jp/

取材・文=有竹亮介(verb)

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