SXSW2019で見えた“移動”の未来。私達はそろそろ日常的に空を飛ぶ

カテゴリ:ビジネス

  • 渋滞緩和「電動キックボード」のサービスアプリは便利
  • Uberは2023年から「空飛ぶタクシー」実用化へ…課題は“安全性”
  • 「街の移動が変われば、ライフスタイルも変わるはず」

SXSW2019での“移動”

Uber(ウーバー)、Lyft(リフト)という名前を聞いたことがある人は多いのではないだろうか。スマートフォンを使って配車ができる、いわゆるライドシェアサービスだ。アメリカではタクシーよりも安いこともあり、移動手段の大きな柱となっている。

SXSW2019が開催されているテキサス州オースティンでも、宿泊施設から街の中心部、そして様々なイベントを見て回った後に宿泊施設に帰る人々は、皆スマートフォンからUberやLyftで配車された車を利用して移動する様子が多々見られた。

コンベンション・センター

多くのセッションや展示が行われているメインの展示場であるコンベンション・センター以外にも、オースティン市内の様々なホテルの催事場や、レストランなどを借り切って展示がされているSXSW。そのため、日中は車で移動しようとしても渋滞で動かないような状況だ。

コンベンション・センターから、日本館『THE NEW JAPAN ISLANDS』が開催されていた800 Congressまでは高低差150mのほどの道を1kmほど。歩くと20分近くはかかってしまう。

こんなときに大活躍していたのが、電動キックボードだ。

赤いものがUber、黄緑色を使用しているのがLime、白黒のものがBirdの電動キックボード

Uber(JUMP社を買収してUber上で利用可能に)、Lyftといった配車アプリサービス以外にもLime、Birdといった電動キックボード専門サービスアプリのものが、あらゆる交差点や大きな建物の前に置いてある。配車アプリを使っている人がそのまま使えるため、Uber、Lyftのものがみつからない事が多く、LimeやBirdのものは余っていることが多かった。

左:Uber社の利用画面、右:Lyft社の利用画面 共にQRコードをスキャンすることで利用開始できる。

利用料金は明快で、1分0.15ドル。Uber以外はロック解除に1ドルがかかる。

キックボードに付いているQRコードをアプリで読み取り、ロック解除ボタンを押せば利用可能だ。上記写真のように(Uberのアプリでは電気自動車も利用可能)多数あるので、少し離れた所にあるキックボードを指定して、予約することもできる。

操作方法も簡単で、ハンドル脇の親指あたりにアクセル(右側)とブレーキ(左側)があり、通常のキックボードの要領で数回地面を蹴って前に進んだ後は、アクセルを押して進む。

使用が終わったら、アプリ上で終了ボタンを押し、しっかりと止められていることを確認するために写真を撮り、アップロードすればおしまいだ。

壊れたまま放置された電動キックボード

数キロ圏内ならわざわざタクシーを呼んだり、配車アプリで車を呼ぶよりも早く現地に到着ができる上、圧倒的に安くつく。そんなこともあり、多くの人が利用し、夕方ころには電動キックボードを探し回る、“キックボード難民”のような人々も現れていた。


一方、現地で車のドライバーに話を聞くと「邪魔だ」と不機嫌そうに吐き捨てていた。

アメリカの多くの都市で起こっている慢性的な渋滞の緩和のために役立つとも言われ、多くの都市で流行っている電動キックボードだが、マナーを守らない使用者などもいるため、交通事故やトラブルも増え、渋滞が減ってはいないという意見もあった。

各社のホームページや、配車アプリの電動キックボード用の登録をするときなどに、ヘルメットの使用を求められるが、実際のところ被っている人は殆どいない。サンタモニカでは法律で義務付けられているが、多くの都市では義務にはなっていない。また他にも、18歳以上であることや、バイクレーンを走り歩道を走らないこと、アメリカ合衆国のドライバーライセンスを持つことなど求められているが、守られていないことの方が多かった。

Lyft社のホームページにもあるように、オースティンではドライバーライセンスが求められているわけではないが、今はまだ実証実験段階とも言えるかもしれない電動キックボード。法的な整備がしっかりと進められれば、アメリカでもさらに多くの都市で利用できるようになり、その利便性から今後日本でも移動手段の一つとなり得そうだ。

空飛ぶタクシーは現実のものに?

“移動”に革命を起こし続けるUber。これまでにUberは2023年から空飛ぶタクシーの運用を始めると言っている。その国外候補地の1つとして日本も選ばれている。

一番左に座るアメリカ合衆国運輸省Ariel Wolf氏と、その右隣に座るUber・Danielle Burr氏

『Up Next in Transportation: Flying Cars and Drones?』と題されたセッションでは、UberのDanielle Burr氏とアメリカ合衆国運輸省のAriel Wolf氏を中心に“空飛ぶタクシー”について話し合われていた。参加者に2023年までに空飛ぶタクシーが現実になりうるかと聞くと、9割近くが手を上げたこのセッション。

アメリカでは交通渋滞が大きな問題となっている。実際にアメリカを訪れた多くの人がそれを感じるのではないだろうか。Danielle Burr氏は「それを解決できるのが空への道だ。時間を節約し、他の事に多くの時間を割けるようになる。Uberではすでに乗り物のデザインは進んでいるし、モーターの開発なども進んでいる」と明かした。

Ariel Wolf氏も、今年末までにダラスとロサンゼルスで行われる予定の飛行実験に対しての協力を約束しつつ、「最も大切なのは安全面だ。飛行機以上の難度を求められるが、管制塔のような仕組みを作り上げ、利用者や街の人々が決して事故に合わないようにしてほしいし、セキュリティ面も安全性が高くなければいけない」と話しつつ、政府として政策の準備を進めていることを明らかにしていた。

セッション最後の質疑応答で、実際の利用料がどれくらいになるか聞かれたDanielle Burr氏は、「エネルギーの問題など、様々なことを考慮した上で、Uber Black(通常のUberXの2倍程度の値段)と同じくらいになると思う」と述べ、利用者が増え、車両が増え、スケールが大きくなれば通常のUberXと同等の値段になる見通しを示した。

セッション中、Danielle Burr氏が何度も繰り返していたのが“安全性”だ。中国との実用化に向けての開発競争についても議題になったが、「私達が何よりも大切にしているのは“安全”であるということだ」と主張していた。

実証実験のために街を作る?

一番左に座るBellのMichael Thacker副社長と、その隣に座るNASA・Jaiwon Shin氏

一方、Uber社が掲げる2023年までの空飛ぶタクシーが現実になりうるか、との質問に3割ほどしか手を挙げなかったのは、『Death to Roadways: Ending Traffic with Flying Cars』というセッションだ。

こちらはNASAの航空機部門のナンバー2・Jaiwon Shin氏や、軍用などを中心にヘリコプターを作るBellからMichael Thacker副社長が登壇。

Jaiwon Shin氏は「これまで国は移動のために、道路や橋の建設や、電車や地下鉄などの敷設などのインフラ整備に多くの時間と資金を投入してきた。空飛ぶタクシーはその費用を無くすことができる」と国にとっての利点を挙げ、国家として後押しすべきと主張。さらに、モーターやバッテリーの開発に革命が無い限りは、車体の重さなどを考えた上で“バッテリー式空飛ぶ車”の出現は少し先の話になり、ハイブリッドが主流になるのではないかと話した。

Michael Thacker氏は自社の開発は安全性を第一にしているとした上で、「リアルな街中で最初から実験を行うのはとても難しい。政府にも協力してもらい、街を再現したような場所を作りあげ、実験を行いたい」との考えを示していた。

また、話はオートパイロットにまでも及んだ。しかし空飛ぶ車は、気象や街中でのビル風など、飛行機とは飛ぶ環境が大きく違うことなどから、飛行機の大多数の事故は人為的なミスだとしつつも、近い未来ではオートパイロットは難しいのではないかという結論に至っていた。

さらに、自由な場所から自由な場所へと移動できることから、出入国管理についても言及。Jaiwon Shin氏は、「TSA(トランスポーテーション・セキュリティー・アドミニストレーション)に関しては大変気にしている。国家間の問題になるが、これまで空港で政府がやっていたことを、地方でもやっていけるようになるのではないかと思う」と持論を展開していた。

空港はより小さく街中に。数は20〜30倍に?

一方で車をベースとした“移動”ではなく、小型飛行機をベースとした“移動”でセッションが進んだ『Flying Taxis and Ambulance Drones: SciFi 2 Reality』。

バッテリーを使用した小型飛行機を開発するロサンゼルスのベンチャー企業Ampaireの副社長Susan Ying氏は、「そもそも今の飛行機は二酸化炭素をたくさん排出する。燃料も大量に使用するので、新しい形のバッテリーを利用した飛行機を作らないといけない。私達が開発したものはバッテリーを利用した飛行機で、4.2mの距離があれば飛ぶことが出来て、3.5mあれば着地できる」と話した。

飛行と着陸に長い距離が必要無いということは、これまで長い滑走路が必要なために、郊外に作られていた飛行場を、街中に作ることができるということだ。

「空港の未来は変わっていく。ショートランディングの飛行機になれば、コミュニティのすぐ近くに、20個〜30個の空港ができるだろう。そうなると飛行機自体が出す音が小さくならないといけない。音が小さい電気飛行機になれば、それも可能だ。また、空港に多大な燃料を貯蔵する必要もなくなり、ソーラーパネルや風力などどんな手段でもいいが、エコな手段を使って飛行機に充電をするようになる」と続けたSusan Ying氏。

世界で初めて垂直飛行型の電気飛行機を開発したLilium Gmbh社のTassilo Wanner氏は、
「エアースペース(空域)をこれまで飛行機が使っているものと共有するため、誰かがルールを作らないといけない。FAA(アメリカ連邦航空局)はグランドキャニオンで起きた飛行機の衝突事故など3つの航空事故が起きたために1958年に始まった。
一方で小型電気飛行機が実際に飛ぶようになれば、エアースペースは圧倒的に複雑になってくる。そのためエアースペース・マネジメントが必要で、そこに革命が必要だ。FAAだけではなく、新しい形の飛行機の開発会社や、昔からある飛行機会社、さらにはテクノロジー分野、旅行会社など、考えられるもの全てが1つにまとまって考えていかないといけない」
と、法的な整備の必要性を強く訴えていた。

“移動”が変われば世界が変わる

前出のNASA・Jaiwon Shin氏がセッションの最後、未来の移動はどうなるかという質問に対して答えていた内容が印象的だった。

「スマートフォンなどのテクノロジーがどうやって我々の元に来たかを思い出してほしい。スマートフォンに10万円も払うなんて当時誰も思ってなかっただろうけど、今はそうじゃない。それだけ払ってでも無くてはならないものになった。空飛ぶ車も同じ様に変わってくるはずだ。
パソコンもスマートフォンも無い時代は、大学の図書館で積み上げられた本を横に勉強をするしか無かったが、今では違う。カフェで仕事もできる。スマートフォンが我々の生活を変えたように、街の移動が変われば我々のライフスタイルも変わるはずだ」

全てのセッションで一致していたことは、空飛ぶ新しい移動の形は、間もなく“リアル”になるということだ。パソコン・スマートフォンで私達の生活が激変したように、空飛ぶ移動は私達の生活にどんな変化をもたらしてくれるのか。

電動キックボードを体験した筆者は、あまりの利便性に日本でも乗ってみたいと強く思った。実際日本でも徐々にではあるが、公道走行可能なものが開発され、サービスも始まろうとしている。
空飛ぶ車が現実のものとなり、一度乗ってしまったら、私達の生活に無くてはならないものになりそうだ。

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