和田アキ子さん告白「加齢黄斑変性」“社会的失明”リスクとiPS再生医療の可能性

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  • 最も重要な網膜の中心が障害される
  • 眼に注射して治療
  • “iPS医療”で、根治へ向け大きな一歩

「見たいもの」が見えなくなる

和田アキ子さんが9日、ラジオ番組で、左目が「黄斑変性症」であると診断を受けたことを明らかにしました。「黄斑変性症」は、「加齢黄斑変性症」とも言い、欧米では失明の主要な原因として、よく知られています。

一方、日本では、失明という深刻な事態を招きかねない病気であるにもかかわらず、一般にはまだ広く認知はされていない疾患です。しかし40代以上ではどなたでも発症する可能性があり、50歳以上の約1%が罹患しています。また、男性の患者数が、女性の約3倍にのぼることが分かっています。

眼の中の網膜は、よくカメラのフィルムに例えられます。見たもの(写したもの)が、そこに画像を結ぶからでしょう。ただ、両者には大きな違いがあり、カメラのフィルムではどの部分でもよく写りますが、網膜は違います。網膜の中心部である「黄斑」では大変良い視力が得られますが、それ以外のところでは十分良い視力は得られないのです。

黄斑には、ものの大きさや形、色など、視力のほとんどの情報を担う重要な視細胞が集中しています。実は、人間は文字など「見たいもの」「注視するとき」は、視野の中心部分で見ているのです。したがって、黄斑が障害されると、視野の重要な部分が失われ、「見たいものが見えない」状態になります。

「加齢黄斑変性」とは、その黄斑に出血やむくみをきたし、視野を失ったり、ゆがんだりして、視力が著しく低下する病気です。そして、障害を受けた部分の視細胞を再生させることは出来ません。

ゆがみ、黒い影…「社会的失明」に

では、見え方にどのような障害が現れるのでしょうか。

その特徴は、視野の中心部分が波打つようにゆがんで見えたり、かすんで見えたりすることです。さらに進むと、中心部に黒い影のようなものが現れ(中心暗点)、見ようとするものが見えなくなるので、文字を読んだり書いたりすることが困難になります。二種免許の取得・更新も難しいでしょう。色の識別が分からなくなる場合もあります。

このような状態を、光を完全に失うのではないものの、最重要な中心部の視野に障害を伴うため、『社会的失明』と言います。

「加齢黄斑変性症」は、欧米人に多く、日本人に少ない「萎縮型」と、日本人に多い「滲出型」に分類されます。萎縮型では、黄斑部の視細胞がゆっくり障害されます。一方の滲出型は、進行が速く、治療が遅れると、網膜に深刻な障害を残してしまいます。

治療では、眼に直接注射!

和田アキ子さんは番組で、「これは完治しないんですって。進行させないようにするだけ」「1カ月みて、(症状が悪いままならば)目に注射して手術とかね」と話しました。

では、「加齢黄斑変性」には、どのような治療法があるのでしょうか。萎縮型には、治療法がありません。ただし、滲出型に移行して急激に視力が低下するケースがあるので、定期的な検診が必要です。

浸出型も、障害を受けた網膜の視細胞を再生させる治療は、現時点ではありません。
しかし、近年有効性の高い治療法が相次いで登場し、早期に発見できた場合、多くの患者さんで視力の維持や改善が得られるようになってきました。

滲出型は、網膜の外側にある脈絡膜から「脈絡膜新生血管」という異常血管が発生し、これが破れて出血したり、血液成分が滲出することで、網膜の視細胞が障害されます。そこで、抗VEGF薬療法という「脈絡膜新生血管」を沈静化させる薬剤を、眼に直接注射する方法が一般的です。外来で出来る治療ですが、簡単な手術のような治療になります。

和田さんが「目に注射して手術とかね」と話したのは、この治療のことかもしれません。「眼に注射!」と聞くと、思わず縮み上がってしまいそうですが、もちろん注射の前に麻酔をしますので、痛みはほとんどありません。

病状により異なりますが、長期にわたって注射を継続する必要があることもしばしばあります。その他には、レーザー照射で「脈絡膜新生血管」を破壊したり、焼いたりする、「光線力学的療法」や「光凝固法」などの治療法があります。

iPS再生医療に根治の光明!

(画像はイメージ)

そして、「加齢黄斑変性」の新たな治療法では、iPS細胞による再生医療が大きな期待と注目を集めています!2014年、患者さん本人の皮膚組織を培養してiPS細胞を作製した、「滲出型加齢黄斑変性」に対する網膜色素上皮細胞シートを移植する手術が行われました。

実は、iPS細胞から作製した組織を使用した臨床手術としては、これが世界初の事例だったのです!もちろん実用化されるまでには、長期にわたる臨床研究が不可欠ですが、根治につながる新たな治療法確立への、大きな一歩であるのは間違いありません。

「加齢黄斑変性」の最も大きなリスク因子は、喫煙です。
喫煙歴が長く、喫煙本数が多く、煙を深く吸い込む人ほどリスクが高いとされ、発症率はタバコを吸わない人の2~3倍にもなります。禁煙は有効な予防になります。

また太陽などの紫外線は網膜にダメージを与え、黄斑変性症になりやすくなります。

そこで2017年に米国眼科学会が紫外線による目の健康被害を予防するために、幼少期からの適切なサングラス着用を紹介しています。UVA、UVBの防護率100%を選ぶべきで、レンズの暗さや色、価格は関係ないとのことです。

さらに、アメリカの調査研究で、亜鉛と抗酸化ビタミンを積極的に摂ると、「加齢黄斑変性」の発病率が低くなることがわかりました。亜鉛が豊富な食材(カキなど)や濃緑色野菜などの摂取も心掛けるといいでしょう。

【執筆:松和会大泉学園クリニック院長 草場 岳(医学博士)】
【画像:時事】

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