「食べづらい。味気ない」はもう古い? 多様化する“非常食”のいま

カテゴリ:国内

  • 東日本大震災以降、国内における非常食市場は拡大している
  • 非常食はしまっておくものではなく、普段使いもできるものへ
  • 「サバの味噌煮」や「おでん」など種類が多様化…実際に試食してみた

東日本大震災からきょうで8年。

震災以降、防災意識は高まっているものの、“大災害への備え”についての調査では、備えとして行っていることの1位が「避難場所や避難所の確認」で48.1%、2位は「日用品・水・食料品などの備蓄」で47.2%という結果だった。上位ではあるものの、避難場所の確認や食料などの備蓄について、いまだ過半数が行っていないのだ。(マクロミルによる「災害や防災に関する定点調査」2月14日発表)

(出典:株式会社マクロミル)

こうした中、政府の地震調査委員会は、2月26日、大規模地震の発生予測に関する見直し内容を発表し、宮城県沖では震災以降「ほぼ0%」だった今後30年以内の巨大地震(マグニチュード7.9程度)の発生確率が20%程度に引き上げられた。

もしもの時のために、日ごろから備えをしておく必要性は言わずもがなだが、今回は非常食について改めて考えてみたい。
非常食の賞味期限は3~5年が多く、震災をきっかけに準備したものでも保存期間を過ぎてしまってるものもあるだろう。かつては「食べづらい。味気ない」というイメージもあった非常食の多様化する今とともに、備蓄方法の一例をこの機会に紹介したい。

次の買い替え時期となる2021年は、16年を上回る需要と予測

まず、非常食の市場をみてみると、富士経済の「2018 防災食品のマーケット分析と将来性予測」によれば、国内の防災食品市場は、特に東日本大震災後の2012年に前年比17.2%増と一時的に拡大。その後、危機感の高まりによる需要増は収束したものの、国や自治体、企業ともに備蓄計画の拡大は続いているという。

そして2016年は備蓄計画拡大による備蓄需要の増加に加え、賞味期限切れによる買い替え需要、また、防災食品メーカーや商社による新型インフルエンザや食中毒対策などに向けた備蓄提案が始まり、市場は前年比36.0%増と大幅に拡大。

その後、買い替え需要は一段落するが、自然災害以外の危機に対する備蓄提案なども進み、「2021年には備蓄率も高まっており、次の買い替え時期となることなどから2016年を上回る需要が期待され、市場は195億円が予測される」としている。

国内防災食品市場における近年の推移(出典:株式会社富士経済)

“美味しさ”に焦点あて市場に参入

こんな非常食市場に東日本大震災後に参入した企業がある。
それが、杉田エースが手掛ける長期保存食「IZAMESHI」のシリーズだ。日本災害食大賞2016の美味しさ部門でグランプリ、同2018年のうまみ部門で銅賞を獲得している。(グランプリ獲得商品:名古屋コーチン入りつくねと野菜の和風煮、銅賞獲得商品:ヨーグルトが隠し味のスパイシーチキンカレー)

今まであまり重視されていなかった非常食の“美味しさ”を追求することで注目を浴びている商品だが、営業企画グループの加藤伶佳さんと福満美穂さんに開発のきっかけやこだわりを聞いた。

グランプリを獲得した「名古屋コーチン入りつくねと野菜の和風煮」(画像:杉田エース株式会社)

――なぜ非常食のブランドを立ち上げたのか?

弊社は建築資材などを扱う商社で、東日本大震災の際には他社様の商品を販売していました。その時に非常食を食べてみた社員が「物足りない」と感じ、「必要なのは、災害時に心から元気になれるおいしい非常食だ」と開発に取り掛かりました。発売は2014年で、開発からはけっこう時間が経ちました。


――こだわりは?

今までの非常食は、押入れや防災袋の中などに隠ししまっておく存在だったと思います。しかし、「いざ災害が起きたというときにすぐ使えるよう、生活の中に溶け込ませることが重要」だと考えていましたので、まずパッケージのデザインをおしゃれにすることに力を注ぎました。

これまでのパッケージですと、黄色や赤などの奇抜な色合いが多かったと思います。それをおしゃれなパッケージにすることによって、より生活に身近な商品になったかと思います。

身近な場所に置き、普段使いとして食べてほしい

杉田エースの加藤さん(左)と福満さん

――非常食をより身近な商品にする理由は?

メーカーや政府などは現在、非常食の保管についてローリングストック法を推奨しています。保存期間の長い食品を多めに買い置き、賞味期限を考えながら随時消費し、使った分だけまた補充するという備蓄方法です。

しかし弊社の調査でも、ローリングストックがなかなか一般の方に浸透していかないことが分かりましたので、普段使いできる長期保存食として企画しました。IZAMESHIの“いざ”は「いざというとき」を意味するのですが、これは災害時だけでなく、「雨で外出したくないけど食料がない」「体調を崩して料理ができない」などの小さな“いざ” も想定しています。


――賞味期限が3~5年と長期保存にする上で大変だったことは?

使える材料が限られてくることです。他社の非常食と比べていただくと分かるのですが、具材は肉や根菜が中心で、白菜などの葉物の野菜はほとんどありません。たまねぎも実際は扱いにくい素材ですが、弊社ではおいしさのためにあえて使っています。作ったときには形が残っているのですが、時間が経つにつれて溶けてしまうのです。さらに3~5年という期間おいしさを長持ちさせることに苦労いたしました。

――個人的におすすめなのは?

梅と生姜のサバ味噌煮です。普通のおかずとして出ても分からないくらいおいしいです。初めて食べたとき、「普通のおかずじゃないかな」と思ったのがサバ噌煮でした。(福満さん)
 
私はサバ味噌煮も好きですが、日常的に軽食やおやつとしても食べるのでしたら、あずきマフィンが大好きですね。あずき感がしっかりしているので、ついつい食べちゃいます。(加藤さん)

「梅と生姜のサバ味噌煮」

――非常食の適切な保管とは?

ローリングストックも重要ですが、それよりも身近な場所に置き、普段使いとして食べていただくことがさらに良いかもしれません。ローリングストックが浸透しないのは、単語を聞いても意味が分かりにくいということがあると思うで、「ストックして普段から食べてもらう」ということを、おすすめします。


――今後の非常食はさらにどう変わっていくのか?


もっとおいしさを求めていくようになるのではないでしょうか?弊社では、より家庭の味に近い、化学調味料を使わないIZAMESHIを展開していきたいと考えています。食事は生活の上で重要ですから、非常時でもより普段の生活に密着した商品を味わっていただきたいです。

実際に試食してみた

IZAMSHIは2014年の発売から現在までに41種類を展開している。「美味しさ」を求めてきた非常食の味を確かめるべく、実際に試食してみた。
食べたのは、しっかりおでん、煮込みハンバーグ、梅と生姜のサバ味噌煮、五目ご飯、ごはん、チョコバー、きつねうどん、あずきマフィン。

ご飯はアルファ化米で、水またはお湯を入れれば食べられる。おかずは、お湯やレンジで温めることもできるが、そのままでもOKだ。うどんはお湯を注いで作る。

あずきマフィン

まずは社員オススメの「梅と生姜のサバ味噌煮」。脂の乗った身は食べ応えがあり、生姜もしっかり効いていて生臭さを感じない。確かに家で知らずに出されたら、非常食だと分からないくらいのクオリティだ。

そのほか、きつねうどんはつるっとしたのどごしが良く、マフィンもあずきのほのかな甘さがちょうど良い。非常食というと、「味気ない味でとりあえず空腹を満たせたらいいもの」というイメージを持っていたが、最近の非常食は、いつもの晩ご飯でも楽しめるほどとなっていた。

きつねうどん。缶を持っても熱くならない構造となっている。

美味しさやパッケージを追求することで、しまっておくものではなく普段使いとしても食べられる非常食になればより身近な存在になる。非常食を保管している方は今一度賞味期限などを確認し、備蓄していない人はこれを機会にそろえてみるのはいかがだろうか。

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