なくなることはない?会社の飲み会で気疲れ…「マナー」の壁の乗り越え方

カテゴリ:ワールド

  • たった10年で飲み会マナーは大きく変化している
  • 「マナー違反を指摘すること」こそマナー違反
  • マナーが変化することはあっても消滅することはない…?

職場の飲み会は、上司や先輩に気を遣うもの。

「1杯目はビールで乾杯」「お酒がグラスの1/3以下になったらお酌をする」「大皿料理は先輩社員が箸をつけてから」など、飲み会マナーはたくさんあり、気疲れして終わる人も多いだろう。

20~35歳の男女100人に行った編集部の独自アンケートで、「飲み会はどちらかと言えば不要・不要」と答えた52人に「会社の飲み会が不要だと思う理由」を聞いたところ、「気を遣うからイヤだ」という答えが最も多かった。(インターネットによる独自調査。調査期間:2019年2月実施。調査協力:ネオマーケティング)

こういった声からも「飲み会のマナー」は職場の飲み会を、敬遠する理由の一つとなっている。その必要性について、『本当に必要とされる最強マナー』(日本文芸社)の著者でコラムニストの石原壮一郎さんに聞いた。

「話を転がす努力をしないのは、マナー以前の問題。職場の飲み会は、みんながちょっとずつ頑張らないと成り立たないですから」(石原さん)

「1杯目はビール」10年前と変化したマナー

――マナー本やネット上で見かける飲み会マナーは、必要なのでしょうか?

全部忘れていいと思います。

もちろん「いきなり相手の短所を指摘しない」など、人間関係を築く上で当たり前のマナーは大事ですが、「グラスの1/3以下になったらお酌をする」といった飲み会マナーは、知ってる人がひけらかしたいだけのマナーなので、気にしなくて大丈夫です。

少し前に話題になった「徳利は横から注ぐのが正しい」という人がいれば、「正面から注いでもいい」という人もいるので、マスターしようとすると切りがありません。

最近は、マナーも変化してきています。

10年前は「最近の若者は1杯目にビールを頼まない」と話題になりましたが、今はそんなことを言う人もいなくなりました。1杯目に、好きなものを頼める時代です。

ガラケーの時代は「テーブルの上に携帯を置くのは失礼」というマナーがありましたが、スマホになってからは言われなくなりました。

――今のご時世、飲み会マナーは覚えなくてもいい、ということですか?

一概にそうとは言えません。知っておいた方が、印象がよくなる場面は多いです。

まったく知らずに、「マナーを守らない人は失礼だ」という価値観の上司の前に行ったら、意図せずに悪印象を与えてしまうかもしれません。

例えば、名刺を片手で適当に渡したら、印象はよくありません。同じように、ビール瓶も片手で持って注ぐより、両手で持って注いだ方が、丁寧に接しようという気持ちが相手に伝わりやすいです。

「グラスが空いたらお酌をする」というマナーも、そこから「ビールはお好きですか?」と話題を広げるきっかけになります。マナーは、お互いが心地よい時間を過ごすためのものなんです。

若手社員は仕事で半人前だからこそ、飲み会の場で気が利いたり、上司との会話を広げようと努力したりするだけで、「頼りになりそうだ」と評価が上がりやすいです。

身につけたマナーが会話のネタになることもあるので、社会人として最低限のマナーを知っておいて損はないでしょう。


――マナーは相手のためでもあり、自分自身のためでもあるんですね。

そうですね。覚えようと思うと億劫になるので、一種の遊びと考えるといいでしょう。

例えば、神社をお参りする時に、「二拝二拍手一拝」をしなくても誰も困らないですが、やると願い事が叶いそうな気がしますよね。

飲み会のマナーも同じように、人生をちょっと楽しくするものなんです。

「郷に入っては郷に従え」は恥ずかしい言葉

――近年、外国人労働者が増え、飲み会でも日本のマナーが通用しなくなっている気がしますが。

その傾向はあると思います。だからといって、日本人が「郷に入っては郷に従えだ!」ってマナーを強要するのはよくないし、恥ずかしいですよね。

日本のやり方に興味を持つ外国人の方がいたら、「お酌がコミュニケーションのきっかけになるんだよ」のように教えていけばいいと思います。

価値観も文化も違う人同士であれば、違うことを会話の糸口にすることが、次の段階のマナーだと思いますね。

――部長クラスと新入社員でも、文化の差がありますよね。

お互いに外国人みたいなものですよね(笑)。

飲みの場での一番のマナー違反は、相手のやり方に対して、「そのマナーは間違ってる」と頭ごなしに指摘すること。上司がしがちなことですね。

目に余る部分があれば、「こうした方がいいよ」と言ってあげれば済むことですから。

教わる側のマナーもあると思います。注意されてムキになるのは打たれ弱すぎるし、上司を老害扱いするのは大人げないです。

「知りませんでした」と上司を持ち上げた方が場が楽しくなるなら、そう振る舞うのもマナー。必要ないと思えば、相槌だけ打って聞き流せばいいんですから。

飲み会マナーがなくなることはない

――飲み会に対してさまざまな意見が交わされる中、今の若手が課長クラスになる頃、職場の飲み会はどうなっているでしょう?

一時期「職場の飲み会は無駄だからやめよう」という考えが広まったことがありますが、結果的に飲み会はなくなっていないので、将来的にもなくなりはしないでしょう。

ただ、マナーは大きく変わってきているので、10年後、20年後はさらに変わっていると思います。瓶ビールを頼むから、お酌をするかしないかって気を遣うので、「缶ビールで乾杯」が常識になっているかも(笑)。

グローバル化が進めば、なおさらでしょうね。外国のスタイルを、取り入れているかもしれません。


――マナーそのものがなくなることは、なさそうですか?

人間は「自由にしていいよ」って言われると、途方に暮れる生き物だと思うんです。

多少はルールがないと不便なので、今あるマナーが消えることや進化することはあっても、すべてがなくなることはないでしょうね。その中で、自分がやりやすい方法を選べばいいと思います。

「マナーを守らなきゃ」と思うから肩が凝るけど、「できる範囲でやればいい」と思えれば、そこまで負担ではないと思いますよ。

飲み会マナーが時代に合わせて変化していることは間違いなさそうだが、さらに時代が進んだとしても、マナーは存在しそうだ。それならば、相手も自分も気持ちよく働くためのツールと考え、楽しむくらいの姿勢でいた方がよさそうだ。

石原壮一郎
コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、“大人”をテーマにした著書を発表している。郷土の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」を務める。著書に『本当に必要とされる最強マナー』など多数。
http://www.otonaryoku.jp/

取材・文=有竹亮介(verb)

「飲みニケーションの新ルール」特集をすべて見る!

飲みニケーションの新ルールの他の記事