職場の飲み会に広がる“独自ルール”...成功の秘訣は「心理的ハードルの低さ」にあり

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  • 調査では9割以上が飲み会に“ルール作り”を希望
  • 「居酒屋使い放題」「知らない社員との飲食代補助」さまざまな“独自ルール”
  • 「飲み会のデメリットな部分が人々を疲弊させている」

飲み会は企業のコミュニケーションツールとして用いられてきたが、近年では独自のルールや社内制度を定めるところも増えた。
その内容はさまざまだが、若手社員が参加しやすく、交流の広がりを後押しするような取り組みが目立っている。

読者には「飲み会は楽しければ良い!」と思う方もいるだろうが、時代とともにコミュニケーションのあり方も変わるもの。

20~35歳の男女100人に行った編集部の独自アンケートでは、「会社の飲み会にはどのようなルールがほしいですか」という質問に対し、「二次会なし」や「参加費は経費」「終了時間に制限を設ける」といった回答が支持される一方で、「特にルールはいらない」と答えたのは、全体の5%にとどまっている。
(インターネットによる独自調査。調査期間:2019年2月実施。調査協力:ネオマーケティング)

“飲みニケーション”に逆風が吹く時代だからこそ、飲み会を有意義な時間にできるような企業側の試みが求められているとみてもいいだろう。
今回はユニークな社内制度やルールを作ることで、職場の飲み会を交流・発展に役立てている企業にその事例を聞いた。

福利厚生で“居酒屋が使い放題”

IT事業を展開する「株式会社アイディーエス」に勤める人の多くは、業務を終えると、本社近くの居酒屋「くろきん 田町本店」に足を運ぶ。
この居酒屋、アイディーエスが福利厚生として法人契約を結んでおり、従業員なら雇用形態を問わず、誰でも無料で利用できるのだ。

「くろきん 田町本店」の外観(提供:株式会社ゲイト)

利用条件は、2人以上で来店することのみ。1.電話予約 2.店舗で社員証を提示 3.名簿表に利用者の氏名を記載の3ステップで簡単に利用できる。
何度使用しても食べ・飲み放題ということもあり、2016年10月の導入から、毎月70~80人が利用しているという。

なぜこれほどまで太っ腹な制度を始めたのだろうか?そして、その飲みニケーションの効果はどうなのか?
アイディーエスの担当者に話を伺った。

「飲み会のデメリットな部分が人々を疲弊させている」

――居酒屋の無料開放をする目的は?

会社内部のコミュニケーションを活性化させ、所属・年齢・役職といった垣根を越えられる場所にしようと始めました。
気軽に居酒屋があることで、いろいろな方と人間関係のパイプが巡り、日常業務でのコミュニケーションも取りやすくなります。
それは社員が自由なパフォーマンスを発揮できる環境につながり、最終的には組織力の向上、より良いビジネスにもつながると考えました。


――企業や従業員にはどんな効果がある?

グループの垣根を越えた、横断的なコミュニケーションは確実に増えました。
以前は隣の席で仕事をしていても、業務担当が分からないことがありましたが、今では個々の業務内容や得意な分野などを共有できています。
「この案件はあの人に話してみよう」といった従業員同士の相乗効果も生まれ、業務効率の向上にもつながりました。

また、普段の会話量自体が増えたことで、ビジネスの話をしやすくなりました。
仕事上だけの関係だと、頼み頼まれたりすることがつらくなったり、良好な関係を保つことが難しくなったりすることもあります。
ですが、居酒屋でコミュニケーションできることで、他の従業員の人となりが理解でき、仕事もより進めやすくなりました。

食べ・飲み放題を楽しむアイディーエスの従業員たち(提供:株式会社アイディーエス)

――職場のコミュニケーションには飲み会は必要?

当社はコミュニケーションにお酒が必須とは考えていません。
しかし、「飲み会」文化が今日まで続くのは、そこに良さもあるからだと考えております。

飲み会は今や、「面倒」「会費がかかる」「お酒を飲まされる」「幹事が大変」「セクハラの温床」といった定義をされることが多いです。
ですが、それは”酒の席で楽しく集う文化”が悪いのではなく、飲み会のデメリットな部分が人々を疲弊させてしまっているからではないでしょうか。

こうした考えから「くろきん 田町本店」の利用に関しては、以下のような方法で、飲み会のデメリットをなくすように心がけました。  
・「会費がかかる」→会社が負担することで解決
・「お酒を飲まされる」→苦手な人は飲まなくても良い
・「幹事が大変」→電話予約一本での利用を実現

ランチミーティングのように、コミュニケーションの在り方自体を変えることにもメリットはあると思います。
しかし、飲み会の在り方よりも参加する人々の考え方を変えれば、コミュニケーションがより楽しく自由になるのではないでしょうか。

「知らない社員」と利用で飲食代補助

クラウド名刺管理サービスを提供する「Sansan株式会社」では、飲み会の費用を1人当たり3,000円補助する社内制度「Know Meを導入している。
この制度、利用するためには「上限3名」「そのうち2名は他部署」「3名のうち2名は初めてのペア」という条件を満たさなければならない。
つまり、お得に飲み食いするためには、必然的にほぼ知らない人と同席しなければならないのだ。

「Know me」を楽しむ社員たち(提供:Sansan株式会社)

この条件だけを聞くと尻込みしてしまいそうだが、同社によると、現状は社員400人のうち、毎月約3割がコンスタントに利用しているという。
制度の都合上、参加した人同士は一定期間(現在は3カ月)ペアになれないため、社内のさまざまな人と相互に交流を深めていることになる。

「飲み」と「Know Me(私を知って)」という言葉の意味をかけたという、制度名もユニークな「Know Me」。
なぜこのような制度を導入したのだろうか?こちらも飲みニケーションの効果が出ているというので広報担当者に話を聞いた。

「少人数で密度の濃い時間を過ごしてほしい」

――「Know Me」を始めた経緯は?

創業間もないころ、社員がこれから増えても、社内コミュニケーションを希薄化しないようにと、人事担当者の発案で始まりました。
「誰がどの業務担当か知らない」「話したことがない」といった状況は、生産性の悪影響につながる可能性もあるためです。


――なぜ上限を3人にした?

飲み会ではよくあることなのですが、4人だと2対2に分かれてしまい、5人以上だと宴会のような雰囲気になってしまいがちです。
上限を3人とすることで、ただの宴会ではなく、少人数で密度の濃い時間を過ごせるように促しています。
飲食代を補助しているので、利用する側も「ただの飲み会では終わらせない」という意識を持ってくれていると感じています。


――利用者の反応は?

金銭的な補助が出るため、「おごってください感がなく、後輩からも誘いやすい」といった反応が多いです。
上司・役職者は特別な理由がなければ誘いにくいものですが、「Know Me」は社内の共通言語化していて、社員も目的を理解しています。
会社側が制度利用を後押ししていることもあり、立場や役職関係なく「Know Meしませんか?」と誘い合うことが当たり前となっています。


――飲み会は職場のコミュニケーションに役立っている?

企業の目標を達成するためには、スピード感ある事業成長が不可欠ですが、それには1人ひとりのパフォーマンスが大きく影響します。
当社の社内制度全てに言えることですが、目的は「社員の生産性の向上」であり、制度はそれを後押しする手段です。

お酒に関する制度も、立場や部署が違うメンバーのコミュニケーションが円滑になり、業務がしやすくなる効果が見込めるため採用しています。
「楽しく飲み会をしてほしい、ただ仲良しになってほしい」という意図ではなく、お酒が生産性の向上にマイナスになると判断した場合は、制度内容自体を見直す可能性も充分あります。

しかし、現時点では社員の利用率も高く、飲み会の場で接することで「日々の業務が円滑に進むようになった」というプラスの声が多数を占めます。
やはり、お酒は有用なコミュニケーションツールであると判断しています。

お酒やおつまみを楽しみながら交流できる「つまみーの」(提供:Sansan株式会社)

Sansanではこのほか、ビュッフェ形式でお酒や食事を楽しめる社内制度「つまみーの」も定期開催している。
こちらは「部署を超えて目的に進む」という社風を感じてもらうことが狙いで、入社検討中・選考中の人、協力会社の人も自由に招待できるという。

今回取り上げた2つの企業に共通していたのは、飲み会を自由に利用できる環境を整えつつ、参加や飲酒を強制していないことだ。
金銭的負担や精神的負担は減らすが、利用するかしないかの判断を自主性に委ねることで、飲み会に対する心理的ハードルを下げていた。

このほかにも、時代が変化する中での飲み会に関するユニークな独自ルールはたくさんある。機会があれば、他社の導入例を調べてみるのも良いかもしれない。

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