焦点は国境問題!展望なきEU離脱でイギリス領北アイルランドの紛争再燃や経済縮小の不安広がる

  • イギリスEU離脱の焦点は“北アイルランドとアイルランドの国境問題”
  • アイルランドで醸造し北アイルランドで瓶詰め…ギネスビールにも影響
  • 「合意なき離脱」なら北アイルランド経済は2030年までに最大5.6%縮小

焦点は“北アイルランドの国境管理問題”

日本時間2月26日夜、イギリスのメイ首相はEU(ヨーロッパ連合)離脱方針をめぐって下院で演説し、条件次第で3月29日の離脱期日の延期もあり得るという見方を初めて示した。

イギリス・メイ首相:
はっきりさせたいが わたしは離脱を延期したのではない。期日通りに合意を得て 離脱することが最大の目的だ

イギリス・メイ首相

そのEU離脱をめぐって最大の焦点の一つがイギリス領北アイルランドの国境管理問題。イギリスの隣のアイルランドは独立国でEUの加盟国だが、その一部はイギリス領の北アイルランドで、同じ島の中に国境が存在している。

現在の国境区分は路肩の線の色の違いだけ

アイルランドとイギリス領北アイルランドの国境近くを訪れてみると、かつて税関だったという小屋があるだけで、実際にどこが国境なのかは、まったくわからない。

かつて税関だったという小屋

今の国境の区分は路肩の線の色の違いだけで、黄色の線がアイルランド共和国、白色の線がイギリス領北アイルランドとわずかに確認できる。

手前の黄色側はアイルランド共和国、白側は北アイルランド

北アイルランド市民は、
「今は国境が開かれているので自由にアイルランドに行ける。EU離脱でチェックの厳しい国境ができれば、大きな影響がある」と話す。

北アイルランド紛争では3500人の死者が…

もともと北アイルランドでは、1960年代からその帰属問題をめぐり住民同士が対立し、紛争に発展。和平成立までの30年間で、3500人の死者を出した。

北アイルランド紛争

その対立の象徴は、今も北アイルランドの首府ベルファストに残されている。

双方の住民を分ける20kmにも及ぶ壁は、かつて対立したカトリック系とプロテスタント系の住民地域を分けている。

20kmに及ぶ壁(ベルファスト)

元武装組織戦闘員「紛争を乗り越え 今は良い状態」

武装組織アイルランド共和軍IRAの元戦闘員は、
「後悔しているが、その時はどうしようもなかった。紛争を乗り越え、今は、はるかに良い状態になった」と振り返る。

EUは、紛争の記憶を消さないように、元武装組織メンバー団体に補助金を出し、北アイルランドにあるベルファスト市内の紛争資料施設などで、体験を語り継ぐ活動をサポートしている。

武装組織アイルランド共和軍IRAの元戦闘員

しかし、EU離脱で財政支援がなくなれば、こうした活動も継続が困難となるだけでなく、一般市民の生活にも大きな影響が出るとみられている。

北アイルランド市民
「ブレグジット(イギリスのEU離脱)になれば、北アイルランドは再び危険にさらされる。特に厳しい国境ができれば、紛争当事者双方から攻撃の対象になる」

北アイルランドで瓶詰め…ギネスビール生産にも影響

さらに、EU離脱は、アイルランドを代表する世界的黒ビールの物流にも影響を与えることが懸念されている。1日150万リットルも生産されるギネスビールの本社と醸造所は、アイルランドの首都ダブリンにある。

ギネスビール

一方、瓶詰めの工場はイギリス領北アイルランドのベルファストにあるため、ギネスビールは大型トラックで一度北アイルランドに送られ、瓶詰めの作業を行った後、世界各地に出荷されている。

醸造所があるアイルランドのダブリンから瓶詰め作業のため北アイルランドのベルファストへ

現在は同じEU圏内にあるため、スムーズに国境を超えた移動が可能となっているが、EU離脱に伴い、国境管理が厳格になると時間と費用がかさむため、多大な経済的ロスが発生するとみられている。

WTO(世界貿易機関)の試算では、イギリスがEUから「合意なき離脱」に陥った場合、北アイルランドの経済は2030年までに最大で5.6%縮小することになるという。

人やモノの移動だけでなく データの移動も制限

経営コンサルタントの松江 英夫氏は、
「EU離脱により、人や物の移動に加えてデータの移動も制約を受ける。EU内では一般データの持ち運びを自由にするという法律が施行され、EU圏内であれば自由にデータを移動できるが、ブレグジットになれば、データにも国境が存在することになる。
そこを見越して、アイルランドにデータセンターを作る動きが加速している。アイルランドは、法人税の実効税率が10%前半と非常に低い。また、寒いところなので、熱を発するデータセンターには良い気候。さらに、英語を話す人が多いなど条件が揃っている」と指摘する。

松江 英夫氏

(「プライムニュース α」2月26日放送分)

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