“商店街からコンビニへ”小選挙区初のWはあるか 憶測消えぬダブル選挙 その実情と実現性【2】 選挙制度

カテゴリ:国内

  • 衆参ダブル選の検討と選挙制度の深い関係
  • 商店街からコンビニへ…変容した「議員と選挙」
  • ダブル選なら小選挙区制で初!リスクは増加

衆参ダブル選挙検討の重要ファクター「選挙制度」

夏の参院選にあわせて安倍首相が検討しているのではないかと噂される衆参ダブル選挙を考える際、忘れてならないのは選挙制度である。現在の衆議院の選挙制度は「小選挙区比例代表並立制」、ひとつの選挙区で1人が当選する仕組みだ(比例復活を除く)。

かつての中選挙区制度は、より広い選挙区で議席が複数あったため、主に自民党から複数の候補が出馬し、派閥同士の争いになることが常態化していた。この「派閥政治」を改め、政党本位の選挙にしようという目的で小選挙区制度が導入された。これにより、政党は1選挙区に1人の候補者を擁立する原則が確立され、自民党は派閥ではなく、執行部に権限がより集中することになった。 

商店街とコンビニ~選挙制度の変遷

かつての中選挙区時代は、小選挙区よりも選挙区の範囲が広いため、特定の政策に通じる候補が、関係団体や業界の支持を集めることで当選できた。政策だけでなく集票地域、つまり地盤が、同じ選挙区内で分かれていることも当たり前であった。

良く言えば「専門性が高く、政策に通じた」また「強い地盤を持った」議員が出やすいが、これが「族議員」と呼ばれる議員を多く生み出し、役所や業者との癒着が指摘されたことは選挙制度改正の大きなきっかけにもなった。

それに比べ今の小選挙区制度は前述の通り、狭い選挙区で当選者は1人だ。老若男女、あらゆる年齢層や業界、地域に幅広く浸透しなければ当選はおぼつかない。特定の政策や地域に精通するというかつての「価値」は、小選挙区制度の下では確実に小さくなったといえる。

店に例えれば、商店街のように肉屋、魚屋、八百屋といった店舗がそれぞれ軒を連ね、互いに違う役割を担っていた「狭く深く」が中選挙区。コンビニエンスストアのように、あらゆるものを取り揃えて幅広い顧客を集める「広く浅く」が小選挙区、といったところだろうか。

議員の変化と“振れる”選挙結果

この選挙制度の改正により衆議院の選挙戦は様変わりした。そして自民党議員の「専門性」は以前より薄れ、強固な地盤を持つ議員は少なくなった。商店街が廃れ、コンビニが増えたということである。

「広く浅く」ということは顧客との関係もドライということだ。その店舗ブランド(政党)のイメージが悪化したり、他に近くて安いライバル店(他党)が出てくれば、簡単に客(有権者)は離れ、他店へと流れる。地元の店主との密接な関係から「何はなくともこの店で」という感覚がないためだ。結果として議員は時の空気に流されやすい選挙戦を強いられることになる。いわば、時の(政権)政党が支持されるかどうかが勝敗を大きく左右することになったのである。

事実、旧民主党政権が誕生した2009年、自民党が政権を奪還した2012年、前回野党が割れた2017年の総選挙は、いずれも旧民主、自民のどちらかに大きく振れる「大勝、大敗」という結果だ。

中選挙区の「何位で当選するか」から小選挙区の「勝ちか負けか」という選挙になったため、そのような結果が出やすくなったのは当然である。

2012年の衆院選で自民党が政権を奪還

過去のダブル選挙との違いがはらむ“リスク”

この小選挙区制度での衆院選は1996年に初めて実施された。過去2回のダブル選挙は1980年と86年。いずれも中選挙区制の時代である。つまり、今年ダブル選挙が実施されれば小選挙区制度の下では初めてとなる。

自民党の現状を見ると、不祥事やスキャンダルが相次いだ2012年初当選組は今や「魔の3回生」。2014年、17年に初当選した若手議員と合わせると党の衆院議員全体の4割を超える。いずれも“コンビニ型”選挙で当選した、確固たる基盤のない議員が多いとされ、結果が大きく振れやすい衆議院の選挙では、かなりのリスクを抱えているといえる。

加えて、現状で2/3の改憲勢力を持つ中、安倍自民党にとって解散するメリットがないという見方もある。「86年のダブルは衆議院の議席を回復させる必要があった。これ以上議席が増える見込みがない今、(ダブルを)やる必要がない」という関係者の解説もうなずける。

中選挙区制度を経験し「強固な基盤を確立した」議員が少なくなった今、安倍首相が以前よりリスクが増した「解散カード」を切れるのかどうか。その決断は、多くの自民党若手議員の命運と密接に絡んでいる。

(フジテレビ 政治部デスク 山崎文博)

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