米朝首脳会談と米空軍F-22Aラプター・ステルス戦闘機の横田飛来

カテゴリ:国内

  • 米朝首脳は、ハノイに空陸で大移動
  • 米軍は、最短コースのアラスカ周りを選ばず、大西洋周りを選択 
  • 日本周辺に出現した露Su-35S戦闘機と日本に飛来したF-22Aステルス戦闘機 

米朝首脳会談 首脳の移動は一大オペレーション

護衛や移動用のリムジンをイリューシン76MD型輸送機でハノイに送り込んだ後、自らは鉄路ベトナム入りした金正恩委員長に続き、トランプ米大統領は、現地25日、ワシントンDCに近いアンドリュース基地から、米空軍のVC-25A要人輸送機に搭乗、ハノイに向かった。

搭乗の際、カメラに映りやすいタラップではなく、後ろの扉から搭乗したのは珍しい。VC-25Aは、ボーイング747を改造して作られた軍用機で、大統領搭乗時のみ、“エアフォース・ワン”と呼ばれる。米軍にとって、米大統領の海外への移動は、一大オペレーション。

VC-25に搭乗するトランプ大統領(2月25日)

米全軍を指揮するE-4B国家空中作戦センターの待機場所

米大統領が、いざという場合に、全世界に展開する米軍の指揮を執るためにE-4B国家空中作戦センターという航空機を大統領の移動先に近い、同盟国の航空基地に展開させる。

この飛行機も、ボーイング747型機の改造機で、背中に軍用通信衛星と連接するためのパラボラアンテナを入れたこぶ状のドームを持ち、機体後部からは、全長8㎞にも及ぶというラインアンテナを機体の後ろに繰り出す。このアンテナは、海中の潜水艦、特に戦略核ミサイルを搭載した戦略ミサイル原潜に直接指示を与えるためという。

E-4B国家空中作戦センター

米大統領が、ハノイで移動に使用する装甲リムジン、ビーストは、重量6.8トンともいわれ、その重量は、装甲の厚さをうかがわせる。
そして、いざという場合に大統領をE-4Bに移動させるための要人輸送ヘリコプター、VH-60型やVH-3型といった特別仕様のヘリもしばしば、大統領の外遊先に控える。
ビーストや要人輸送ヘリは、C-17型輸送機で、米大統領の移動先にVC-25Aより先に運ばれた。

エアフォース・ワンとE-4Bの通過ルート

今回、興味深いのは、前述のE-4B国家空中作戦センター機は、航空軍事評論家の石川潤一氏によると、米本土から最短コースの北極回りではなく、大西洋経由で移動し、「シンガポールのパヤレバーで待機のようだ」。大統領の搭乗機、VC-25A“エアフォース・ワン”も、北極回りではなく、昨年の第一回米朝首脳会談同様、大西洋経由となった。
なぜなのか。

極東のバランスに波紋 露 Su-35S戦闘機の展開

最近の極東情勢で、注目されることのひとつは、極東ロシア軍への強力な戦闘機、Su-35S型機の配備である。

Su-35S型戦闘機(2月15日 航空自衛隊撮影)

防衛省・統合幕僚監部によると、2月15日午前から午後にかけて、Su-35S型戦闘機4機が、Tu-95MSベアH戦略爆撃機4機とともに、二手に分かれて、日本海側と太平洋側を飛行した。

Tu-95MSベアH戦略爆撃機(2月15日 航空自衛隊撮影)
統合幕僚幹部が発表したロシア軍機の動き

航空軍事評論家の石川潤一氏によると、防衛省が画像を公開したSu-35Sは、「飛行コースから、ウラジオストクのツェントラーナヤ・ウグロバヤ空軍基地の第303混成航空師団 第22戦闘機航空連隊 所属機と推定される。主翼下に搭載されているのはNATOコードネームAA-11アーチャー系の短射程空対空ミサイル、R-73Lあるいはその改良型R-74Mとみられる。爆撃機護衛という任務から考えて、実弾だと思われる」とのこと。

ステルス機は、敵に探知されないために、レーダーに映らにくい形状、表面処理をしているだけでなく、レーダーや通信の電波も極力、出さないようにする。
しかし、Su-35Sは、その逆をいく戦闘機で、90㎞先の0.01平方メートル、10㎝四方のモノも捕捉できると喧伝された強力なレーダー、イルビスE搭載で知られる戦闘機。
さらに、アフターバーナーという装置を使う加速時のみ、最高速度が音速(マッハ1)を超える従来の戦闘機と異なり、アフターバーナーを使わなくても超音速で飛べる戦闘機とされる。
しかも、噴射口の向きを変えることができるので、急角度で進行方向を変えることが出来る。だから、機動性も高いはずだ。
つまり、米空軍が日本に配備しているF-15CやF-16C戦闘機より、素早くて、機敏かもしれない。こんな戦闘機が日本周辺で、空対空ミサイルの訓練弾ではなく、“実弾”を積んで日本列島の東側と西側を飛んでいたとなると、穏やかではないだろう。

こんな飛行機が、万が一にも、機密の塊である、E-4BやVC-25に、さまざまな電波情報を収集する電子偵察機を伴って接近したら、米軍は、反応せざるをえず、米軍の反応速度や機密の通信のプロトコールが収集される可能性はゼロではないかもしれない。

横田基地にF-22Aラプター・ステルス戦闘機飛来

このような状況が背景となっていたかどうかは不明だが、フジテレビのインターネット番組「週刊安全保障」(休止中)の視聴者、「SPAR65」さんによると、Su-35Sが日本周辺に現れたほぼ一週間後の2月21日午後、横田基地に、米空軍F-22Aラプター・ステルス戦闘機2機が、2機の空中給油機を伴って飛来した。午後の明るい時間帯だったことから、米空軍は、ラプターの飛来をまったく隠すつもりはなかったようだ。

F-22A 戦闘機 (2月21日横田基地 SPAR65さん撮影)

この2機のラプターは、SPAR65さんによると、アラスカの部隊に所属する機体。グアムで実施される予定だった日米豪共同の「コープノース・グアム」演習に参加する予定だったが、グアム近辺に当時、発生した台風2号を避けるために横田基地に避難したともいわれていたが、実態は不詳だ。

ラプターは、世界最強ともうたわれるステルス戦闘機として知られるが、ラプターもまた、アフターバーナーを使わなくても超音速に達し、噴射口の向きを変えることが出来る戦闘機だ。

米大統領の乗機や、E-4Bがアラスカ回りのコースをとっていたなら、アラスカのF-22Aの部隊が、アリューシャン列島周辺などでは、護衛できただろうが、それより南下した場合、万が一、日本近海上空を飛ぶ、複数のSu-35Sへの対応は難しかったかも入れない。

今回の展開が、台風避難だったとしても、2機という横田基地に飛来したF-22Aラプターの数は、ロシアが日本の太平洋側に飛ばしたSu-35S戦闘機の数と一致する。
偶然をも利用するのが、軍隊だとすれば、台風避難で横田に飛来したF-22Aが、米大統領の移動に伴う、何らかの護衛的任務を考慮していたとしても不思議ではないだろう。

ただ、前述のとおり、25日、トランプ大統領が搭乗したVC-25“エアフォース・ワン”は、大西洋経由となり、E-4Bも大西洋経由となったもようだ。
アラスカ経由ではないことを確認したのか、F-22Aラプターも25日、横田基地から離陸。26日午前、横田基地に戻っていない。本来の予定に沿って、グアムに行ったのかもしれない。日本周辺の軍事情勢は、さらに厳しくなっているのは確実なのだろう。

(フジテレビ 解説委員 能勢伸之)

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