「良いサービスができた」で満足していませんか? Slush Tokyoで見つけた“ムーブメント”のきっかけ

Slush Tokyo 2019が開幕

カテゴリ:テクノロジー

  • 日本最大級のスタートアップの祭典「Slush Tokyo 2019」。
  • 単なるテクノロジーの延長ではなく「新しいムーブメントを起こそう」という機運が高い。
  • スタートアップにも大企業にも目立つ「ひとつのきっかけ」を見つけた。

単なるテクノロジーの延長線上ではなく…

日本最大級のスタートアップの祭典「Slush Tokyo 2019」が22日、東京都内で開幕した。

「Slush」は、フィンランド発のイベントで、東京での開催は5回目となる。場所は東京・ビッグサイトだが、公用語は英語。展示ブースでは日本語の利用も可能なブースが多いが、セッションは日本人スピーカーでもすべて英語で行われる。

世界中から幅広い分野のスタートアップや投資家、大企業の新規事業開発担当などが集まり、2日間の日程で70以上のプログラムが実施される。

今回のテーマとして設定されたのが、「Call for Action(一歩を踏み出そう)」というもの。単なるテクノロジーの延長線上ではなく、「新しいムーブメントを起こそう」という取り組みも多い。オープニングトークで登場した東京都の小池百合子知事も「若い起業家の情熱と決断力で世界を変えてほしい」と語った。

マッチングサービスは数多くあるが…

ムーブメントのひとつとして感じられたのが、「コミュニケーションを生む」という仕組みの構築だ。

例えば、学生チームが考案したのは、ランチタイムに企業内の社員たちをマッチングするサービス。

「オフィスでの日常がルーティン化していて刺激がない」
「毎日同じメンバーと仕事をしていて新しい発見がない」
「他部署の社員とコミュニケーションを取りたいが出会うきっかけがない」

企業に勤めていて、そんな悩みを持っている人も多いのではないだろうか。

開発したアプリでユーザーがすることは、スマホでランチの時間帯を選択するだけ。すると、同じ時間帯を選択した社員を2~4人をランダムにマッチングしてくれる。あとは時間通りにスマホが指定した場所に行くだけ。相手のプロフィールも事前にスマホに表示されるので、それをきっかけにコミュニケーションをとることも可能となっている。

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このネットワーキングで、社員のクリエイティビティや発想力の向上につなげるのが狙いだ。今後は、AIで自分の仕事の領域を広げてくれそうなマッチングを行なうことや、企業内だけでなくシェアオフィスでの展開なども視野に入れる。

実際に企業の社員食堂を見学して、ランチタイムにひとりでスマホをいじっている社員が多いことから、問題意識を持ったという。

マッチングサービスは様々なアプリがすでに世に出ているが、企業や男女など「なかなか出会えない人同士」のマッチングが多い。それに対し、このサービスは「そもそも出会える範囲内にいる人々」をつないでコミュニケーションを生むというコンセプトが非常にわかりやすい。

大企業が挑む「コミュニケーションを生む未来」

大企業もブースをいくつか構えていて、「コミュニケーションの大事さ」を根底に据えているサービスも多い。

avexは「未来の音楽」と称して、VR(バーチャル・リアリティ)を使った音楽体験を提案。自分の家の中にいながら世界中の様々な人と一緒の空間に入り、様々なテクノロジーを駆使して「音楽をみんなで楽しむ」というサービスを作り上げていた。

パナソニックのブースでも、コミュニケーションを大事にしているサービスがいくつか見られたが、興味深かったのは「家事のあり方」を変えるようなサービス。

展示されていたのは、家事を掃除や洗濯など日常の家事を「美しくなるためのトレーニング」ととらえ、姿勢などをアドバイスしてくれるという短いエプロンのような形をした“家電”。

例えば、この短い“エプロン”をつけてモップがけをすると、位置センサーなどの仕組みを使って「もっと足を開いた方がいい」などのアドバイスをリアルタイムでしてくれる。さらに、毎日の家事でどれくらいの運動量があったのかを、どんどんアプリに記録していき、年齢や運動能力に合わせた家事を提案してくれるという。

「自分ひとりで行なう負担」であることが多い家事を「良い運動のチャンス」に変えるという面白いアイデアのプロダクトだが、開発を担当した鍛治茉里奈さんに話を聞いてみると、必ずしも本質はそこではなかった。

「大学時代に作業療法の勉強をしていて、孤独死の問題などを何とかできないかと思っていたんです。自分の家事がトレーニングに変わって目に見える形で表示されれば積極的に家事をしたくなるし、高齢者施設などでほかの人と一緒に使ってもらったら盛り上がると思うんです」

鍛治さんはそう言って、嬉しそうに笑った。

鍛治茉里奈さん。マネキンや左奥の女性が巻いている短いエプロンが開発したプロダクト“KajiTrainer”

「家事の負担を楽にしたい」という課題だけなら、仕事量の削減や効率化を図るサービスを目指していただろう。しかし、「高齢者に毎日を楽しく過ごしてもらいたい」という課題から出発しているため、“すごいテクノロジーのアイデア商品”で終わらせることなく、「家事でコミュニケーションを生む」という未来まで見据えている。それが、プロダクトをさらに魅力あるものに変えていた。

世界中の様々なビジョンが集まるSlush Tokyo。今年のイベントでも、スタートアップも大企業の新規事業担当も、海外からの参加者も日本からの参加者も、同じ土俵に立って、「新しいムーブメント」を起こすためのビジョンをあちらこちらで語り合っていた。