保険医療破綻の懸念も…1回5000万円!? 超高額な白血病治療薬「キムリア」承認

  • 1回5000万円の白血病治療薬を承認へ 人工遺伝子を使ったがん免疫療法とは?
  • 治験では約8割の患者に効果の一方 臨床試験では一過性の心不全などの副作用
  • 増加する医療費…超高額医薬品の課題「オプジーボ」など薬価引き下げの前例も

患者自身の免疫細胞からつくる

大手製薬会社のノバルティスが開発した白血病などの新薬「キムリア」。厚生労働省の審議会で2月20日、日本での製造・販売が了承された。

すでに使われているアメリカでは、1回の治療費がなんと約5000万円と超高額。それでも患者団体からは期待の声が上がってる。

悪性リンパ腫の患者団体、グループ・ネクサス・ジャパンの天野慎介理事長は、「ようやく待ちに待った期待の新薬が承認されたことは、多くの患者さんや家族にとって、非常に大きな喜びだと思う」と話す。

キムリアに用いられているのは、日本では初となる人工遺伝子を導入したがん免疫療法「CAR-T細胞療法」だ。

元となるのは、患者自身から取り出した免疫細胞「T細胞」で、この免疫細胞から遺伝子操作によってがん細胞を狙って攻撃する「CAR-T細胞」を作る。

その細胞を培養して増やし、点滴バッグに詰めたものが新薬「キムリア」だ。

点滴を通して患者の体内に細胞を戻すことで、CAR-T細胞ががん細胞を狙って攻撃する。治療の対象となるのは一部の白血病患者などで、投与は基本的に1回のみ。

治験では約8割の患者に効果がみられたといい、アメリカでキムリアによる治療を経験した患者は「このくらいのサイズの点滴をつないだら、本当に10分ほどで治療が終わりました。(副作用で)たびたび高熱に苦しんだ時期は大変でした。免疫細胞が、がん細胞と戦っている影響だと感じました」と話す。

劇的な効果の一方、臨床試験では白血病患者の80%弱で副作用が出ていて、一部では一過性の心不全や呼吸困難などが起きたという。

「1回5000万円」キムリアが超高額なワケ

製薬会社の試算によると、日本では約260人が治療対象になるというが、課題となるのは1回あたり5000万円という治療費だ。

なぜ、これほどまでに高額なのだろうか?

東京大学の田倉智之特任教授は「まずは、研究開発費が多くかかるようになってきたのが一点。もう一つは、新しい薬もしくは治療が、臨床で使われるようになるまでに確率が低くなっているということで、一治療、治療薬の値段が上がってきている」と指摘する。

高額な新薬といえば、昨年ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑特別教授の研究から生まれた「オプジーボ」がある。

2014年の発売当初の価格は、100mgで約73万円。複数回継続して投与する必要があるため、当初の総額は1000万円以上になるといわれた。
しかし、その後、市場の拡大などにより価格が引き下げられ、現在は発売当初から8割ほど下がっているという。

今回の新薬、キムリアについては、今後の正式承認後に価格が決まる見通しだ。

公的保険どこまで? 増加する医療費…超高額医薬品の課題

倉田大誠キャスター:
この画期的な白血病の治療薬「キムリア」は、アメリカでは1回の投与が約5000万円と超高額な薬でもあるんですね。日本で治療する場合、私たちの自己負担額はどれくらいになるのか?
通常、現役世代の自己負担というのは、かかった医療費の3割ですが、高額な医療、薬、治療に関しては、収入に比例して患者の負担の上限を定める「高額療養費制度」というものがあります。
例えば69歳以下で年収が約370万円~770万円の人がキムリアを使った場合は、自己負担額が約60万円で済みます。残りの約4940万円は誰が払うのか?それは公的保険から給付されることになります

倉田大誠:
そこで心配になってくるのが、やはり医療保険の財政ですね。
1人あたりの医療費の推移を見ていくと、30年前の1989年度には約16万円だったのが、2017年度には約33万円と2倍以上になっています。
そんな中で認められた高額なキムリアの承認。反町さん、財政の圧迫になるのではないかという懸念もありますが…

反町理キャスター:
そこが心配ですね。超高額の医療品を保険適用されると、保険医療財政が破綻するという懸念は、今回が初めてではないんです。
5年前にオプジーボが特効薬として脚光を浴びた時にも、年間で数千万円に上る費用のほとんどを保険で負担する薬であるとして、これを保険適用する是非が問われました。
オプジーボはその後、対象とするがんの種類が広がったことや薬の価格を決める会議が年2回から4回になって、価格が4分の1程度にまで下がりました。

反町理:
今回の新薬キムリアにも同じような経過をたどることが期待されているんですが、キムリアという薬は遺伝子治療薬という新しいジャンルの薬で、これは各製薬会社が研究しています。
キムリアが超高額のまま認可されると、各社が自分で研究している遺伝子治療の新薬を次々に市場へ出してきます。
そうすると、保険財政の破綻か保険料の引き上げが見えてくるという状況になります。
国民皆保険は、日本が世界に誇る非常に誇れる制度ですが、さまざまな種類の超高額の医薬品をカバーするためには、保険料をさらに上げなければならないかもしれない。
負担とサービスのバランスをどこに置くのか?という国民的な議論が必要な時期にきているような気がします。

さらに、国民負担が33万円まで増えているという話もありましたが、その軸になっているのが保険料率です。
保険料率を健保組合の平均で見ると年々上がり続けていて、2017年には給与と賞与を合わせた総所得に対する9.2%が、保険料になっているわけです。
それに介護保険料も加えられているので、税とは違う形の社会保険料の負担が我々にどんどんのし掛かってくる時代になってきています。

(「プライムニュース イブニング」2月21日放送分より)

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