猫に見せたら“ガン見”する「猫専用の交通安全動画」 ニャンでなのか?仕掛けを聞いた

カテゴリ:暮らし

  • 猫専用の交通安全動画を、イエローハットと京大の動物心理学研究チームが共同制作
  • 生態に合わせた音声や演出で、猫の興味を引く工夫がしてある
  • 担当者「興味を持ってもらえていることは確かでした」

猫の生活には危険がいっぱい

2月22日は「(にゃんにゃんにゃんで)猫の日」。

ペットフード協会の「全国犬猫飼育実態調査」では、近年、犬より猫の飼育数が多くなっており、猫は現代社会で最もポピュラーなペットと言えるだろう。

その一方、環境省の「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」(2018年)では、2017年度に負傷した猫の収容数は1万1,884匹にのぼり、犬の816匹よりもかなり多い。
この収容数全てが交通事故によるものではないが、猫が交通事故の被害に遭うケースは後を絶たないのが現状だ。

このような悲劇をなくそうと制作された動画が、「猫の日」を前に公開され、反響を呼んでいる。
まずは、“猫専用動画”と謳ったその動画をご覧いただきたい。

動画は自動車教習所の「交通安全講習」をオマージュした内容で、タイトルは全国交通安全運動をもじった、その名も『全国交通にゃん全運動』
貫禄たっぷりの「教官ネコ」が3匹の生徒(猫の人形)に、「猫が交通事故に遭うのはなぜか」を解説していくストーリーとなっている。

貫禄たっぷりの「教官ネコ」

動画内では2本の「教習用ビデオ」の構成となっていて、軽快な音楽や猫の鳴き声などに合わせて、猫の生態や交通事故の恐怖などを紹介。

1本目のビデオでは、車が行き交う車道の危険性を伝えつつ、猫が獲物を求める狩猟本能から飛び出してしまう様子などを説明しつつ、「それでも獲物を見つけたら 追わずにはいられない」「それでも道路の真ん中で ひなたぼっこやめられない」といった歌詞が、猫の気持ちを代弁している。

2本目のビデオでは、着ぐるみに身を包んだ3匹の猫がアップテンポな音楽とともに、夜が更けた市街地で躍動。
人間の通勤時間帯でもある薄暮時から行動が活発化する習性や、物陰から飛び出す可能性、車のクラクションやライトが猫に及ぼす影響を伝えている。

交通ルールを守らなかったそれぞれのビデオでは最後に、ブレーキ音と転がる鈴で、交通事故に遭う結末が暗示されてしまった...。

そして、動画の最後には「教官ネコ」が再登場。「猫を見たら徐行運転を心がけてほしいにゃん」「猫はクラクションやハイビームに驚き、立ち止まってしまうことがあるので要注意にゃごん」と人間に注意喚起する内容で終わっている。

世界初?「猫専用の交通安全動画」

“世界初”(イエローハット調べ)となる「猫専用の交通安全動画」と、話題性を狙っただけのようにも見えがちな動画だが、実はちゃんと猫の視覚や聴覚に合わせて制作されているらしい。
株式会社イエローハットのキャンペーンの一環として、京都大学の動物心理学研究チーム「CAMP-NYAN」と共同制作したという。

ツイッターでは「ロードキルを減らすことは、俺たちドライバーにもできることの一つ」「ご自宅のニャンコと飼い主さん一緒に観られるような内容になってます。ぜひチェックして観てください」など好評の声が上がっているが、そもそも、なぜこのような動画を制作したのか。
そして、本当に猫に訴えかける効果はあるのだろうか。
さまざまな疑問を、イエローハットの担当者に聞いてみた。

猫の生態に合わせた音声や演出

――なぜこのような動画を制作した?

当社は猫をモチーフとした「ハットにゃん」をマスコットキャラクターとするなど、猫とのつながりがあります。
車社会に関わる企業として交通安全も推進しており、交通事故の被害に遭う猫を少しでも減らせればと思い、動画を制作しました。


――動画制作でこだわったポイントは?

「CAMP-NYAN」の協力を得て、動画には猫の興味を引くような仕掛けをいくつか施しています。
例えば、猫の可聴領域(60Hz~100kHz)に合わせて、獲物であるネズミがコミュニケーションしているような効果音を入れています。
ヒトが聞くことができる音の周波数が、最高でも20kHzとされているため、この音は通常の人間には聞こえません。

猫は鳥やネズミの鳴き声、子猫の鳴き声などに反応することが分かっているので、動画内の音響にはこれらの鳴き声も使用しています。
猫の鳴き声に関しては、様々な感情(子猫、甘えた声、悲しい声、テンション高い声、威嚇など)の声を使い、猫が飽きることのないよう工夫をしています。


――このほかには?

猫は自分に似た姿形の物体に興味を示すとされているため、動画には本物の猫や猫の着ぐるみなどを登場させています。
このほか、動く物体に反応する習性を利用して、画面にはチョウを模した黒色の影を漂わせています。


――実際の猫に効果はあるの?

猫カフェで複数回行った実証実験では、タブレット端末などで再生された動画に対して、じっと見つめたり、画面を手で引っ掻くなどの動作を見せました。
興味を持ってもらえていることは確かでしたが、猫に交通事故の危険性が伝わっているかどうかは、正直のところ分かりません。
車を運転する人や飼い主と一緒に見てもらうことで、人間の注意喚起にもつながればと考えています。

この動画を猫に見せた様子を撮影した動画を見ると、確かに、ガン見する猫もいれば、ちょっかいを出す猫もいて、興味を引くという試みは成功しているようだ。ただ、残念ながら注意喚起の内容が理解できてるかはわからないという。

“猫でも安全に暮らせるクルマ社会”の実現へ

――猫が交通事故に遭いやすい理由などはある?

猫が人間のペットとして飼われるようになったのは、他の一般的な動物と比べると最近だと言われています。古来から人間と暮らしてきた犬や牛などの「コンパニオンアニマル」と違い、猫には狩猟本能が残っているため、獲物を見つけると車が来ていても道路に飛び出してしまいます。


――運転手に気を付けてほしいことは?

猫はその習性上、道路の両端を歩いていることが多いですが、車両の速度を出しすぎると存在が確認しづらくなります。
交通事故を防ぐためには、早めのライト点灯や周囲の確認とともに、「猫が飛び出してくるかもしれない」という意識を持つことが大切です。

道路に飛び出した猫は、クラクションを鳴らしたりすると萎縮して、動かなくなってしまうことが多いです。
そうするとブレーキが間に合わず、事故につながることも考えられます。何もしなければ逃げるので、可能であれば優しく見守ってください。


――飼い主にはどんなことを伝えたい?

身もふたもない話になりますが、交通事故を防ぐ観点では、可能な限り室内で飼うことをお勧めしたいです。
今回のキャンペーンを通じて、“事故に遭いやすい猫でも安全に暮らせるクルマ社会”が実現できればと思います。

ルールを守らないと「教官ネコ」に怒られるかも...

イエローハットの特設ページでは「猫の気持ちで見られる」という、字幕なしバージョンの動画も公開されている。
大切な愛猫を守り、命を奪う加害者とならないためにも、一度見てみてはいかがだろうか。