月額4万円で渋谷・品川に住める!4月から始まる「全国住み放題」サービスとは?

カテゴリ:ビジネス

  • 一定の金額を払えば、全国各地にある拠点に住み放題のサービス
  • 都会の若者は日本の「家」に違和感を持っている
  • 3月から取締役自らが実践予定

近頃、定額を払うと、新車に乗れたり、毎日お弁当がゲットできたりするサービスが広まりつつあるが、今度は「住宅」の常識を変えそうな新サービスが始まろうとしている。

月4万円から全国住み放題。
旅するように暮らそう。

こんな刺激的なキャッチコピーを打ち出している株式会社アドレスは、今年4月から「ADDress」というサブスクリプション(月額定額制)型の多拠点コリビング(co-living)サービスを提供する。
つまり一定の金額を払えば、全国各地にある拠点に住み放題になるという。

料金設定は、年契約で12か月間毎月4万円ずつ支払う「年会員」と、月5万円の「月会員」の他、法人会員がある。
提供するのは個室だが、リビングやキッチンはシェアハウスのように共同で、wifi・アメニティ・共有の家具も用意されるという。
宿泊するためには会員専用サイトで予約を行い、管理人に連絡することが必要となる。
また、1親等の人は無料で一緒の個室を利用可能。
4月1日から東京渋谷・品川を含む全国11拠点が住み放題となり、物件はその後も続々と増えるとしている。

品川区の物件

都内の渋谷・品川に4万円で済めるとは激安ではないか?
いったいどんなからくりがあるのか、株式会社アドレス代表の佐別当隆志さんに聞いてみた

空き家で「人口をシェアリング」する

佐別当隆志 株式会社アドレス代表取締役社長

――そもそも「コリビング」とはどういう意味?

海外では一般的な用語なんですけど、コリビングの基本的な定義としては「シェアハウス」+「シェアオフィス」。
日本では、何人かが一緒に暮らす「シェアハウス」だけとか、様々な仕事の人が働く「シェアオフィス」だけのところが多いですが、両方の特徴を合わせた物件です。


――コリビングサービスを始めたきっかけは?

私自身「シェアリングエコノミー協会」という業界団体を3年前に立ち上げて、事務局長としていろんなコンセプトのシェア活動の普及と推進に力を入れていました。
今は少子高齢化によって「空き家」がすごく増え、シェアするスペースは増えていますが、人口が少ない地域では物件のシェアリングは難しい。
そこで、クラウドマーケティングやクラウドソーシングやインバウンド観光などを活用し、都心部の人が地方に行って空いているスペースを有効活用する「人口のシェアリング」をやろうという発想がコリビングサービスに繋がりました。


――「ADDress」の特徴は?

僕らが話題になっている大きな理由の一つは、やはり日本の「空き家」をターゲットにしている事だと思います。
他のサービスでは、場合によっては建物をゼロから作ったりして、すごくきれいなインフラを整えるところもありますが、僕らは空き家に注力しているところが特徴でしょう。


出典:プレスリリース(実績は総務省「住宅・土地総計調査」より。予測値はNRI)

総務省の調査によると、日本の空き家は2013年時で全国に約820万件。
空き家率は1998年に10%を超えてからも伸び続け、一部の試算では2033年に30%を突破し2100万件が空き家になるとも言われている。

出典:首相官邸

一方、内閣府の調査では東京在住者のうち地方への移住を検討したいと思っている人は約4割。
そのうち関東圏以外の出身者では、半数近くが地方への移住を考えたいとしているという。

このような社会背景もあってか、株式会社アドレスは2018年11月に創業した若い企業にも関わらず、多くの注目を集めることに成功している。
12月20日にサービスを発表してからティザーサイトには1000人を超える会員や物件の応募が殺到し、今年2月18日からクラウドファンディングで正規会員を募集したところ、たった1日で目標金額を達成して今もなお支援者が増え続けている。


「都会の若者は日本の住宅に違和感を感じています」

――「ADDress」に応募してきたのはどんな人?

12月20日のサービス発表から一か月間で約1200人からご応募をいただきました。
その内訳としては、20~30代が7割で、40代を含めると9割を超えます。
一番多いのは都心部の人たちです。
週5日間、満員電車に揺られて都心で仕事をすることや、礼金敷金が必要などの日本の独特な住まいの状況に対して、ソーシャルメディアやシェアエコノミーに親しむ若者は、かなり違和感を持っているんだと思います。

彼らはテレワークなど郊外でも働けるスキルを持っている人が多いのですが、自分で物件を持ってるわけではありません。
都会で働いて週末は地方で暮らしたいと思っていてもできない、そんな人々に「ADDress」というサービスが支持されたのでしょう。


――物件オーナーにはどんなメリットがある?

僕らは物件を持っているオーナーと、サブリース(転貸)OKの賃貸者契約を結んでいます。
物件を売ったらお金が入ってこなくなる形ではなく、定期収入があるのがまずメリットの一つです。

もう一つのメリットは、オーナーが好きな時に物件を使えることです。
実は、自治体が空き家を仲介する「空き家バンク」という制度はあるんですが、登録していない空き家が多いんです。
なぜかと言うと、誰かに貸したり売ったりすると、たまに帰ってくる子供に使わせたいなど自分が好きな時に使えなくなってしまうので、「空き家バンク」に進んで登録しないからです。

僕らの契約の形態は、オーナーが使わない時だけ貸してくださいというものです。
例えば、お正月や夏休みはオーナーが使って、そのほかを貸してもらう。
それに加えて、水回りや家具の用意、リノベーションとか掃除とかは僕らがやります。

鎌倉市の物件

渋谷・品川に月4万円は安すぎない?

――月額4万円は安すぎない?

僕たちは普通の賃貸契約とは違って、オーナーが使っていない期間だけを借りているので、一般的な市場価格より安く契約しているケースがあります。

ただ面白いなと思うのは、月額4万円と聞いて都会の人たちは「安い」と言いますが、郊外の人は「高い」って言うんですよね。
都心部だったらシェアハウスのような1部屋が月4万円で安いと感じても、郊外なら2LDKで月5万円という物件もあるので高いと思うのでしょう。


――それでも渋谷・品川に4万円は安いのでは?

渋谷と品川に関しては、まるまる1か月間を4万円で提供できるわけではないんです。
先ほど申し上げた通り、個室を1か月間アドレス社に貸すわけではなく、「オーナーが使わないこの日とこの日」という契約をして、それを会員が使うことになります。
渋谷区は1か月間のうち1週間ぐらいを使わせてもらう契約です。
その「使える日だけ」予約ができるという形になります。

ちなみに品川に関しては、僕も家の一部屋を貸し出しています。(笑)

渋谷区の物件

さらにアドレス社は、都心にゲストハウスを展開するLittle Japanや、全国に19拠点の共有スペースを持つ一般社団法人ハンモサーフィン協会と提携。
「ADDress」会員は両社の施設も特別料金で使うことができるようになる。

住民票を移すこともできる

――リリース資料の中に「住民登録可」と書いてあるのだが、どういうこと?

例えば、年間契約でドミトリータイプ(ユースホステルのような相部屋)固定ベットを借りた場合、そこは1年間ずっと使えて、住民票を移すこともできます。
さらに、予約をすることによって別の場所の個室のベッドも使える権利が月4万円のサービスの中についてくるというわけです。

群馬県の物件

――コリビング生活を実践している人はアドレス社にいる?

僕自身がやりたいんですけど、家族がいるのでなかなかできません。(笑)
実は、桜井里子というアドレス社の取締役が、3月からアドレスの物件を転々としながら生活する予定です。
使用感を調べるのはもちろん、物件の開拓もしていきます。


――一親等との個室利用はできるが未婚パートナーなどは?

婚姻と同等の証明書などがあれば同室を使ってもかまいません。
また、お子さんがいるとなかなか移動できないという方々が多いので、家族連れで気兼ねなく泊まって頂きたい。
家族にやさしいサービスにしたいと思っています。

鳥取県の物件

佐別当社長はインタビューの最後に「コリビングサービスを、何十万・何百万の人が使う方が当たり前の社会にしたい」と語っていた。
空き家問題は今後の日本が抱える課題だが、ライフスタイルが多様化する中、空き家を活用する「多拠点コリビング」という考え方は、今の時代にマッチしているのかもしれない。