北朝鮮の“核兵器”の数は? 韓国・文在寅大統領の米朝首脳会談への思惑は日米と一致するのか

 

カテゴリ:ワールド

  • 米インド太平洋軍司令官「北朝鮮実験場爆破はリバーシブル」
  • 米ランド研究所「2020年、北は30~100個の核兵器」
  • 文在寅大統領発言と対北朝鮮国連経済制裁

米インド太平洋軍司令官「北朝鮮が核兵器をあきらめるとは考えにくい」

来週27日に迫ってきた第二回米朝首脳会談の大きなテーマは、非核化。昨年の第一回米朝首脳会談のあと、北朝鮮は、核実験も弾道ミサイル発射試験も行っていない。

しかし、2月12日に、米上院の公聴会に臨んだインド・太平洋軍の司令官、デーヴィッドソン提督は「北朝鮮が核兵器や核生産能力をすべて、あきらめるとは考えにくい」「北朝鮮は、特に(北朝鮮北東部の)豊渓里(プンゲリ)核実験場のトンネルのリバーシブルな分解のように、非核化に向けて、いくつかのステップを踏むなどしてきたが、意味のある進歩を遂げるためには、なすべきことがたくさんある」との考えを示した。

デーヴィットソン提督

つまり、デーヴィッドソン提督は、北朝鮮自身の手によって2018年5月24日に爆破されたはずの豊渓里核実験試験場は、再開可能と認識していることを意味する。

豊渓里核実験試験場の爆破2018年5月24日

さらに、デーヴィッドソン提督は、「北朝鮮がいまだに米国と国際社会にもたらしている脅威に警戒しなければならない。 北朝鮮はこれらの行動の見返りに米国に”対応措置”を要求した。金委員長は、2019年の新年のスピーチで「新たな道」の可能性について警告した。これは、交渉のペースと潜在的な利益に満足できない場合、ミサイルと大量破壊兵器の試験へ戻る可能性がある。わが軍(米軍)の戦闘への即応性及び複合的な殺傷力は依然として最良の抑止力であり、最良の北朝鮮からのあらゆる脅威に対する梃子である」との認識を示した。朝鮮半島も担当する米インド・太平洋軍司令官は、警戒心を解いていないのだ。

「北朝鮮の核兵器用物質は増えている」(米CISAC)

CISAC=国際安全協力センター報告書

その背景には、北朝鮮の核兵器の保有状況もあるかもしれない。
米スタンフォード大学のCISAC=国際安全協力センターが2月11日に発表したところによると、2017年に、大体、核兵器30個分のプルトニウムや濃縮ウランを保有していたと分析。さらに、2018年には、5~7個分増えたと衛星画像などから分析している。

「2020年、北朝鮮の核保有数は30~100個」(米ランド研究所)

”水爆?”と金正恩委員長

また、米ランド研究所が1月11日に発表した報告書「朝鮮半島における四つの問題:北朝鮮の拡大する核能力が諸問題を複雑にする」では、現時点での北朝鮮の核兵器保有数を「15~60」2020年における保有数を「30~100」と見積もっている。
そして、「最大100個となれば、紛争初期の段階で、警告として1発、または、それ以上を爆発させた上で、兵力の集中している場所や、航空基地、それに、港湾施設を立て続けに攻撃するために、20~60発をとっておくことができる。これは、韓国、日本、中国、ロシアの都市に対し、最終的に立て続けに攻撃すると脅かすため、30〜40個の核兵器で十分余裕があり、さらに彼らが運搬手段を開発すれば、米国が標的となりうる」としている。

「ソウルで、核兵器が爆発したら・・・」

スカッドER連射 (2017年3月7日)

また、同報告書は、ソウル市江南区が1発の核兵器に襲われた場合、核爆発の火球、致死放射線、爆風、熱放射で、10キロトン級なら、死者:9万人、負傷:33万人100キロトンなら、死者:40万人、負傷:153万人との試算を掲載している。ソウルの人口が1000万人弱と言われることを考えると衝撃的な分析だ。
南北の休戦ラインである38度線から、ソウルまで60㎞余り。同報告書は、核弾頭搭載可能とみられるスカッド弾道ミサイルが約400発(スカッドER含む)、日本のほぼ全域を射程とするノドンが250発、射程3000㎞のムスダンが200発などと分析しており、韓国含め、北朝鮮周辺国には、厳しい数字だろう。

北極星3 (2017年2月2日)

韓国:北朝鮮の核・ミサイル以外の脅威

コックサン自走砲

さらに、韓国にとっては、砲兵部隊やロケット砲部隊も脅威だ。同報告書によれば、北朝鮮のコックサン自走砲(射程40~60㎞)等、900門もの長距離砲システムは、「韓国の人口の50%、経済活動の50%をリスクにさらしている」と分析している。これに、北朝鮮の1万門もの、中距離砲システムが加わるというのだ。
この分析が正しければ、北朝鮮は、核・ミサイル以外にも、韓国にとって、大変な脅威を保有していることになる。

対北朝鮮「相応の措置」「制裁」 日米韓の思惑の行方

米朝首脳会談を前に、トランプ米大統領は、韓国の文在寅大統領と、19日夜、電話会談し「最終的には、北朝鮮の非核化を期待する。とても前向きなことが起きるだろう」「北朝鮮の金正恩委員長は、会談について前向きに考えている」としたうえで、非核化をめぐる北朝鮮との合意については、「ミサイル発射や核実験がない限り、急いではいない」と述べた。

一方、韓国大統領府によると、文大統領は、北朝鮮の非核化への行動を引き出す「相応の措置」として、トランプ大統領に「韓国の役割を活用してほしい」と伝え、南北間の鉄道や道路の連結、経済協力などに言及したという。北朝鮮の”脅威”を意識した発言だったのだろうか。

トランプ米大統領と電話会談をする文在寅大統領

文在寅大統領の発言が、この通りなら、国連の対北朝鮮制裁との関係は、どう整理されるのか。筆者には、不詳だ。トランプ大統領は、15日の記者会見で「制裁は残っている。 すべてが残っている」と発言しており、文在寅大統領の発言を受けて、制裁緩和に米政府が動くのかどうか、興味深いところである。

(フジテレビ 解説委員 能勢 伸之)

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