電話コード会社が「キャビア」生産! “老舗オーナー企業”ならでは発想と勝算

  • 電話コードやケーブルなどを製造する企業が「キャビア」を生産
  • オーナー企業ならではの長い目で見た発想で異業種事業に参入
  • 10年はかかる長期事業に社長在任期間の短い大手は参入できない

電話コードなどの製造企業が「キャビア」を生産

ミシュラン二つ星を獲得したフレンチレストラン「Ryuzu」(東京・六本木)のシェフもうならせた高級食材「キャビア」。

そのキャビアを生産したのは、懐かしい黒電話のコード部分を作った老舗企業だった。
全くの異業種事業に取り組んだ企業の思惑とは。

「金子コード」(静岡・浜松市)

のどかな自然が広がる静岡・浜松市。
この土地に建てられた平屋建ての建物には、複数に分かれた生けすがあり、中では、生まれたての小さなものから、おなかにキャビアを持ったものまで、およそ7,000匹のチョウザメが養殖されていた。

約7,000匹のチョウザメを養殖する生けす(静岡・浜松市)

手がけているのは、東京・大田区に本社を置く「金子コード」。
ケーブルや電線などを製造する1932年創業の老舗メーカーで、今では医療用カテーテルのチューブで国内トップの供給量を誇る。

1932年創業の老舗メーカー「金子コード」

将来につながる仕事をゼロから探す

なぜ、そんな会社が、キャビアづくりを始めたのか。
そこには、オーナー企業ならではの発想があった。

金子コード・金子智樹社長(3代目)
「どういう仕事、どういうものを探してきたら、将来につながっていくのかということを探す段階から若い社員に教育していきたい。そういう気持ちで、完全にゼロなものを探してほしかった」

電電公社の民営化で需要が減少

NTTが電電公社だった時代、電話機用のコードを納入し、売り上げを伸ばしていた金子コードだが、電電公社が民営化され、NTTになると電話機の製造・販売の主流は家電メーカーに移行
需要は減り、経営は一気に悪化したという過去が。

金子コード・金子社長
「時代が変わっていけば、医療用カテーテルも将来しぼんでいく可能性もある。また次に向かって、新しいものを生み出さなければならないという気持ちがずっとあった」

親方日の丸でも安定などない。
そんな経験が、キャビアづくりという新事業につながっていた。

国内トップの供給量を誇る「医療用カテーテル」

キャビア事業を軌道に乗せるまでには“最低10年”

国が「きれいな水」とお墨付きを与えた天竜川のすぐそばで行われているキャビア事業。
今では、ミシュランガイドで紹介されるレストランなどと取引があるというが…

金子コード・中村秀憲食品部部長
「採算ベースに乗るには、残り4年ぐらいかかる予定です」

キャビア事業開始から5年。
だが、稚魚を育て始めてからキャビアを取り、事業を軌道に乗せるまでには最低10年と見積もっていた。

3代目の金子社長は、ここにも狙いがあるという。

オーナー企業だからこそ取り組める長期事業

金子コード・金子智樹社長(3代目)

金子コード・金子社長
大手企業の社長の在任期間は、だいたい平均で6.2年。新規事業に6.2年以上かかるものであれば、大手はこの業界に参入してこないであろうと。大手企業はステークホルダーの目を気にしながら経営しなくてはならないとなると、9年先の話をしても株主の心には響かない。わたしたちは9年後も間違いなく、わたしが社長をやっていますので

スピード感が求められる時代に、長い時間がかかるからこそ、他の追随を許さないゼロからの新規事業。
オーナー企業の強みがここにあった。

長期のブレない軸を持つことが長寿企業の秘訣

松江 英夫氏

経営コンサルタントの松江 英夫氏は、
「長期の目線に立って経営ができるというオーナー企業ならではの強み。『時間軸の連鎖』という言葉をよく使うが、長い時間軸を世代が変わっても引き継いで繋いで行ける。この辺がオーナー企業の強み。金子社長も三代目だが、9年間社長をやる約束をしている。それを9年ごとに更新していって10年の時間軸で先の経営をやっている。思い切った事業のリスクをとれる強みの源泉になっていると思う。
不確実な時代だからこそ目先に惑わされない長期のブレない軸を持つこと。日本企業は長寿企業世界一で、このうちの大半はオーナー企業だが、これはまさに長期のブレない軸を持っているからで、長生きの証だと思う」と話す。

(「プライムニュース α」2月19日放送分)

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