「ダウンロード違法化」対象拡大…“マンガ学会”が反対する真意を聞いた

  • スクショもアウト!マンガを海賊版と知ってダウンロードしたら違法に…
  • マンガ家を守るためのはずだが…マンガ学会が4項目を柱とする反対声明
  • 海賊版への効果は「まったく期待できません」

「ダウンロード違法化の対象範囲をマンガなどにも拡大する」…
こんな報告書を2月13日に文化庁の文化審議会著作権分科会がまとめたことに対し、マンガ関係者などからも様々な意見が噴出している。

そもそもダウンロード違法化は、2010年に「音楽・映像」を対象にして始まり、2012年から被害者に訴えられた違反者は2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金を科す、と改められた。
そしてこの度まとめられた報告書では、対象の範囲を「マンガ・イラスト・写真などの静止画や文書」など全ての著作物に拡大
これにより、権利者の許可なく違法にインターネットで公開されているマンガなどを、海賊版と知りながらダウンロードすることが違法となり、スクリーンショットも著作権侵害の対象になる可能性があるという。
文化庁は、悪質なケースに罰則を科すことや、海賊版サイトに利用者を誘導する「リーチサイト」の規制なども報告書に盛り込み、今国会に著作権法の改正案を提出する方針としている。

この「ダウンロード違法化」は、もちろん著作権をもつ作者やアーティストを守るためのものだと誰もが思うだろう。
ところが一報が報じられると、違法ダウンロードによって被害を被っているはずのマンガ家や関係者からも反対意見が上がった。

・「のだめカンタービレ」などの作者である二ノ宮知子さんは、Twitterに記事を引用して「誰が頼んだよ、こんなの…。」とツイート。
・「ラブひな」で知られる赤松健さんは「当事者である漫画家が嫌がっている以上、文化庁も多少は意見を聞いてもらいたい。」と投稿。
・「地球へ…」の作者である竹宮惠子さんが会長を務める日本マンガ学会は、理事の連名で1月23日に以下の4項目を柱とする反対声明を公表している。

<ダウンロード違法化の対象範囲拡大に対する反対声明>
1、合法とは言い切れない二次創作のダウンロードまで禁止することで、海賊版研究・二次創作研究が阻害される
2、今、日常的に行っているダウンロード・クリッピングを「違法」にすると研究・創作の萎縮を招く
3、静止画や文章が「違法」アップロードであるかどうかは判断が難しい
4、ダウンロードを違法化しても、「漫画村」のようなストリーミング方式の海賊版はまったく取り締まることができない

日本マンガ学会は、マンガを対象とする研究者からなる団体だというが、なぜダウンロード違法化に理事の連名で反対声明を出したのだろうか?
日本マンガ学会事務局長の岩下朋世さんにメールで真意を聞いた。 

「国民は著作権に無知であれ」と言っているのに等しい

――ダウンロード違法化による、売り上げなどのメリットと、逆に生じるデメリットはどちらが大きい?

ダウンロード違法化は売り上げに直接的被害を与えることが明確な対象に限定することが必要だと思います。
違法化に適切な制限を設けることで両方を守ることができます。
どちらかを犠牲にしなければならないということではありません。


――「海賊版か知らなければ違法にならない」ということについては?

著作権の認識があればあるほど有罪となり、なければないほど免責されるというのは、「国民は著作権に無知であれ」と言っているのに等しく、海賊版を禁止しようとする、すなわち、国民の著作権に対する認識を促すことが必要なはずの、今回の立法趣旨に反していると考えます。


――声明では対象拡大によって「海賊版研究だけでなく二次創作研究をも明確に阻害する」としているが、海賊版の認識がないのであれば、違法にならないのでは?

海賊版研究は、海賊版だとわかっているものを対象として研究するに決まっていますし、研究者が二次創作とオリジナルを間違えるはずもなく、当然ながら二次創作は二次創作とわかって研究しております。
今回の方針では、著作権に詳しい言論や研究のプロほど摘発される、ということです。
テレビ局も例外ではないと思います。


――マンガを書くには、合法・違法を問わない資料を日常的にダウンロードする?

当学会は漫画家の団体ではなく、漫画研究者の団体です。
が、漫画家の赤松健さんは、2月8日の「違法ダウンロード範囲拡大を考える院内集会」で、「マンガ家は、合法・違法を問わない資料を日常的にダウンロードしている」とおっしゃっています。


海賊版への効果は「まったく期待できません」

――対象範囲拡大でマンガの海賊版被害はなくなる?

それはまったく期待できません。
漫画村のようなストリーミング式のサイトはまったく規制できないからです。
また今回のダウンロード違法化拡大の改正は、ダウンロード式のサイトに関しても、アップロードする側への規制を厳しくしたり摘発しやすくするための改正ではなく、ユーザーを規制するもので、しかも音楽や動画の違法化・刑事罰化の例を見ても、逮捕者は出ないと予測されるので安心しろ、と文化庁自身が言っています。
(ただし今回の改正の中でもリーチサイト規制はこの効果が期待されます)
だからこそ私たちは反対声明で、「静止画等のダウンロードを違法化することは、悪意ある侵犯者に対してはまったく効果がなく、逆に一般ユーザーの萎縮を招き、研究・創作を著しく阻害する最悪の結果となることが予想される」と言っているのです。

この度の法改正は私どもとしても大変憂慮しておりますので、記事の公開によってこの問題がひろく理解されることを期待しております。

岩下さんは「二次創作から育ってきたマンガ作家はたくさんいることは言うまでもないでしょう。」とし、マンガ家の育成についても問題があるとの見解を語った。

さらにマンガ関係者だけでなく、2月19日には、法学者・弁護士・ジャーナリストら84人と1団体による連盟が、今回の範囲拡大について「さらに慎重な議論を重ねることが必要」とする緊急声明を発表した。
果たして、相次ぐ見直しを求める声は届くのだろうか。