“動かない鳥”じゃなかったの!? 「ハシビロコウ」がワラを運んだ…何があったのか聞いてみた

カテゴリ:暮らし

  • 動いている…だと? ハシビロコウがワラを運ぶ動画が話題
  • 名前は「ふたばちゃん」謎の行動の理由は? 飼育員に聞いてみた
  • コミュニケーションにはくちばしを使う「クラッタリング」の不思議な音

ハシビロコウが動いた…

みなさんは「ハシビロコウ」という鳥をご存じだろうか?
ペリカンのくちばしと顔を逞しくしたような大型の鳥類で、青みがかった薄灰色の羽毛に覆われた体を細長い足で支え、胴体に対して頭部が大きいのが特徴だ。
寝癖のように立っている頭頂部の羽は可愛らしい。

そして、ハシビロコウは「動かない鳥」としても有名。
よく見せるのは、背筋を伸ばして直立し、刃物のように鋭い眼光でじっと前を見据えている姿。
相手を見透かし睨みつけるような目は力強く、見るものに恐怖を抱かせるが、その厳めしい構えが醸し出すカッコよさから「先輩」という愛称でも呼ばれる動物園の人気者だ。

そんなハシビロコウの新たな魅力を捉えた動画が、ツイッター上で注目を集めている。
「運ビコロウさんです」と紹介されるハシビロコウの行動。まずはその動画を見てほしい。

上手に運んだのに…見つめるだけ!

器用にくちばしでワラを咥え、ゆったりと歩くハシビロコウ。緑のシートが敷かれたところへ到着すると、ワラを離した。
運んで何に使うのかと思ったら、床に広がったワラをじっと見つめて小さく首を左右に振ると、顔の位置を変えて今度はワラから少し遠くの場所に視線を移してしまった。

投稿には「あのハシビロコウが歩いてる!動いてる!」「巣作りかな?初めて見る動き」「応援したくなる可愛さ」といったコメントが寄せられ、動いたハシビロコウに驚いていた。


こちらのハシビロコウは、花と鳥とのふれあいが楽しめるテーマパークの掛川花鳥園(静岡県)で飼育されている「ふたばちゃん」。
動画を撮影した「いんこKITCHEN」(@inco_kitchen)さんは2月3日、同園で開催された「ことり万博」というイベントでインコを模したカレーなどを販売するために来園。

「前日はワラが入った箱で寝てたのですが、次の日はせっせと運んでました。」と語り、さらに、ふたばちゃんはワラを運んだ後、飼育員にお辞儀をしながら首を振っていたといい、「誰かに向けて運んでたのかな?」とも推測している。

「動かない鳥が動いた…」という驚きとともに、目的の場所にワラを降ろした途端、興味を失ったようなハシビロコウの謎の行動に来園者からも笑い声が上がっていたが、ふたばちゃんは一体何をしていたのか?
掛川花鳥園でハシビロコウの飼育を担当している吉津さんに話を伺った。

他のハシビロコウよりもアクティブ!

運び完了後のふたばちゃん「……(動かないビロコウ)」

ーーこの行動の意味は?

鳥類が巣の材料となる材料を運ぶのは、一般的に巣作りの行動とされています。
ハシビロコウはアフリカの湿地帯に生息していて、野生では水草などの植物で地上に巣を作ります。
ふたばちゃんの行動はこれに似ていますが、運んだワラを置いた上に乗ることも、そこで寝ることもないので、営巣行動とは異なるのではないかと考えています。
寝る時は、足をたたんで床にお腹をつけて休みます。真意は不明ですね(笑)


ーーなぜワラを与えているの?

展示室の床はコンクリートのため、長時間立っていると体に負担がかかります。
昨年の春ごろ、ふたばちゃんが落ち着ける場所を作りたいとケースにワラを入れて置いてみたところ気に入ってくれたようで、こうしてワラを運ぶようになりました。
どちらかというとケースが好きなようで、ワラを下敷きにしてケースの中で座っていることが多いです。

ワラとケースに包まれて、あたたかそう(2月2日撮影)

ーーそもそもハシビロコウが「動かない」のはなぜ?

全く動かないわけではありませんが、じっとしているのは狩りのためです。
ハシビロコウは、ライオンのように追いかけるタイプの狩りではなく、待ち伏せ型の狩りをします。
ハイギョなどの湿地帯にすむ魚類が、水面に上がってくるのをじっと待って捕らえます。大きな体で動くと魚に警戒されるので、それを避けるために普段から「動かない」癖がついていると考えられています。


ーーふたばちゃんもほとんど動かない?

じっとしていることも多いですが、歩き回ったり羽を広げて飛んだりと割と動いていますね。
ハシビロコウが好きで、いろいろな動物園でハシビロコウを見たというお客さまからも「他のハシビロコウよりも活発だ」という話をお聞きしました。
ふたばちゃんは他園の個体よりも若いので、アクティブなのかもしれません。

ニヤッと笑っているように見える…

2016年7月から掛川花鳥園で公開されているふたばちゃんだが、正確な年齢や性別は不明だという。(ハシビロコウは見た目から性別を判断することが難しく、現在1羽のみ飼育しているためDNAによる性判定は行っていない)
足から頭頂までの高さは123~124cmで翼の長さは2m、体重は未測定だが5kgほどではないかということだ。
ふたばちゃんが食べているのはコイで、時期によって異なるが1日に10cmほどの大きさのコイを約15匹平らげる。

ハシビロコウの中でもアクティブだというふたばちゃんは、くちばしを小刻みに開閉して、パンパンと低い音を響かせる姿も目撃されている。

くちばしを使って音を発するふたばちゃん

ーーどんな時に音を鳴らしている?

これはコウノトリにも見られる行動で、「クラッタリング」という鳴き声が大きく出ない鳥のコミュニケーション方法です。
くちばしを叩き合わせるように激しく開閉して大きな音を出し、群れで暮らさないハシビロコウは仲間とコミュニケーションを取っています。
園内では仲の良いスタッフに対してクラッタリングを行っていて、イヤなことがあった時、怒った時、喜んでいる時など、様々な感情を表しているようです。



吉津さんはさらに、「エサの時間に暇そうにしていたらワラをちらつかせて噛ませたり、掃除の際はモップの柄を噛ませたりして、狩りをする本能を刺激しています」とふたばちゃんとのコミュニケーションを工夫している。人に対してのお辞儀や首振りは、愛情表現だと考えられているそうだ。

真正面から見るハシビロコウは険しい表情をしていて怖いが、横から見ると目の陰が取れて丸さが際立つ。
「くちばしもカーブを描いて、ニヤッと笑っているように見えます」と吉津さんが教えてくれたように、丸い目と微笑んでいるような口元には愛嬌がある。

あなたもふたばちゃんに会いに行ってみてはいかがだろうか? “思ったより動く”姿をきっと見せてくれるはずだ。

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