韓国タクシー業界に激震…「ろうそく」に追い詰められる文在寅大統領

尻に「灯」がついた文大統領に、未来はあるのか?

カテゴリ:ワールド

  • ソウルの悩ましい常識「深夜タクシーはつかまらない」
  • 政府期待の「相乗り」改革で、ドライバーの不満が爆発
  • 支持層の「ろうそく」に足を引っ張られ始めた文在寅大統領

「どうやって帰ればいいのか…」

ソウルでは、終電もなくなった深夜に路上で途方に暮れることがある。いくら待ってもタクシーがつかまらないのだ。やっと空車が来たと思ったら、「長距離以外はダメ」という理由で乗車拒否。先日は真冬の氷点下に、自宅まで30分以上かけて歩いて帰るハメになった。この絶望感は、日本ではなかなか味わえないものだ。韓国のタクシー難民は、現地駐在員や外国人観光客だけでなく、ソウル市民にとっても悩ましい問題となっている。

「国民的アプリ」が“相乗り”参入

タクシー配車アプリ「カカオT」

タクシー不足の現状を“脈アリ”と見たのが、韓国の大手IT企業「カカオ」だ。昨年、一般市民の自家用車を使った「相乗り」サービスの開始を表明した。スマートフォンのアプリを通じて、通勤や帰宅で自家用車に乗るドライバーと、行き先や方向が同じ利用者をマッチングさせ、ドライバーには副収入を、利用者には安価な移動手段を提供するというものだ。

カカオは既にタクシーの配車アプリ「カカオT(タクシー)」を提供している。タクシードライバーの96%に相当する24万人が加入しており、利用者数は2千万人に上るという「国民的アプリ」だ。カカオには、これを自家用車にも広げたいという狙いがあり、昨年12月から試験的なサービスを開始。韓国政府も大きな期待を寄せていた。

しかしこれが、労働者層の怒りに火をつけることになる。

ドライバーの不満が爆発、その矛先は韓国政府へ

サービス開始から1ヵ月後の1月上旬、ソウル中心部で、突如1台の車が炎に包まれた。64歳のタクシー運転手が焼身自殺を図ったのだ。地元メディアによると、運転手は遺書の中でカカオの相乗りサービスを「違法」と非難し、禁止するよう求めていたという。

運転手はソウル中心部で自殺を図った

韓国では昨年10月から、複数のタクシー労働組合が「職を奪われる」として数万人規模のデモを展開するなど、相乗りサービスに猛反発している。昨年末には国会議事堂の前で12万人が声を上げた。“韓国政府”に対し、相乗り事業の規制強化を強く要求したのだ。こうしたデモには、韓国最大の労組「全国民主労働組合総連盟」の代表らも参加したという。

ここで一つの疑問が浮かぶ。左派系出身の文在寅大統領は、彼ら労働者層が支持基盤ではなかったのか?

韓国国会前でのデモには12万人が参加

文大統領に反発する支持層

文在寅政権といえば、国際社会に北朝鮮との融和を派手にアピールし、慰安婦や徴用工など日韓に横たわる問題については、ことごとく日本との「約束」や「条約」をないがしろにしている。傍から見れば国民の支持を得ているように見えるかもしれない。ところがどっこい、文政権の支持率は下落傾向だ。その原因は内政にある。韓国経済は急激に停滞し、拙速な人件費の引き上げなどで廃業や失業が後を絶たない。それを裏付けるように、韓国経済の景気指標は毎月、歴代最低を更新しているという。にも関わらず、政権は景気浮揚につながる施策を打ち出せず、支持基盤であるはずの労働者層の不満が最高潮に達しているのだ。

相乗りサービスを巡る軋轢はその象徴だ。タクシー業界の強烈な反発に折れる形で、与党がカカオに対し運営方式の変更を要求するなどした結果、試験的な相乗りサービスは中止を余儀なくされた。正式なサービス開始は白紙となる可能性が高い。ちなみに、この頃の政権支持率は過去最低の48.1%にまで落ち込んだ。支持層の顔色を伺ったため、逆に相乗りサービスに期待していた人からは反発を買う結果となった。

受け入れられない「日本軽視」の構図

相乗りサービスなど、いわゆる規制緩和策を講じる際、既存団体の反発は避けられない。業界保護の観点から見れば、政府が慎重な判断を取るのは当然だろう。とはいえ、相乗りは国際的に見ればウーバーなどが手がける「ライドシェアサービス」として一般的になりつつある。なによりも移動の選択肢が増えることになり、消費者の利益に資するのは明白だ。ただ内政で躓いている文政権に、支持層の反発を招く岩盤規制を打ち砕く余裕などあるはずもない。

朴槿恵前大統領を打倒した「ろうそくデモ」で生まれた、民心に寄り添う「ろうそく政府」を自認する文在寅大統領が、その国内政策の拙さゆえに、今や自らがろうそくの灯に追い詰められつつある。実に皮肉なものだ。尻にろうそくの灯がついた文大統領が、過去の政権末期に見られた、「反日」や「日本軽視」をエスカレートさせる事がないといいのだが…

(執筆:FNNソウル支局 川崎健太)