韓国の“脱アメリカ”と“中国すり寄り”が始まった日

  • 一見すると戦後補償問題、だが本当の狙いは別
  • “日本バッシング”で韓国は外交も内政も一挙両得?
  • 日本は韓国の目的を達成するための“道具” 

「謝る事案ではない」と開き直り

「天皇陛下の謝罪」を求めた韓国の文喜相国会議長

いわゆる慰安婦問題を巡って「天皇陛下の謝罪」を求めた韓国の文喜相国会議長。アメリカの首都ワシントンを皮切りにニューヨークや西海岸のロサンゼルスを訪問し、在米韓国人との交流を行ったほか、アメリカの政治家に韓国側の立場を説明した。安倍総理が文議長の発言に対して抗議し「謝罪と撤回」を求めた翌日ワシントン郊外の焼き肉店に文議長は韓国メディアを集めて会見を開き「確実で明らかなのは謝る事案ではないということ」などと開き直った。

FNNは訪米した文議長に何度も直撃取材を行い、発言の真意や撤回する用意があるかなど質問を文議長に投げかけたが、韓国メディアに対しては饒舌に語ったものの、我々日本メディアには一言も発することはなかった。

日本のメディアには一言も発しない文議長

日本バッシングの真の狙い

日本に対する非礼ともいえる一連の言動は何を意味するのか。韓国文政権で今、何が起きているのか。国際安全保障に詳しいハドソン研究所の長尾賢研究員に話を聞いた。

国際安全保障に詳しいハドソン研究所の長尾賢研究員

長尾氏:
一見すると戦後補償の問題のようであるが、本当の狙いはそれではないかもしれない。韓国側の行動を長期的にみると、慰安婦、徴用工、旭日旗、自衛隊機へのレーダー照射など、文政権になってそれら全部が計画的ともいえるように一つ一つ積み上げられてきた。

韓国国会議長による「天皇陛下の謝罪」要求にしても、日本政府は抗議したうえで発言の撤回を求めているが、韓国政府は文氏の発言を擁護するなど事態を収束させようとする意思は見られない。まるで収束することを望んでいないかのようだ。ここで、一つ考えられるのは韓国側が意図的に日本との緊張を高めているのではないかということ。

“日本バッシング”で韓国は外交も内政も一挙両得?

藤田:
では、緊張感を高めることにどのような利点があるのか。

長尾氏:

それは韓国が考える世界の将来像と関係しているかもしれない。韓国は日本とは世界の将来像に対する考え方が根本的に違う。今後、世界でアメリカの影響力が落ちていったらどうなるかと考えた時、日本では米中で世界の覇権を争う「G2論」と、一方で米中以外の多くの国が登場し、世界はいろんな形で争う、または協力する「多極化」の時代に入るという2つの考えがある。

日本ではこの、「多極化」が進むという考え方が強い。ところが、韓国は「G2論」のほうが人気があるのだ。韓国は朝鮮戦争という存続にかかわる大きな歴史的な出来事を経験した。その時、100万の軍隊を入れて北朝鮮を守った中国と、韓国を支援したアメリカが戦った。韓国にとって当時から今日に至るまで、米中とどのように係っていくかは永遠のテーマとなっている。

韓国の立場に立って考えると、韓国はアメリカ側にどっぷりと“漬かってきた国”だが、今後アメリカの影響力が落ちてくると、G2時代に突入する。だとすると、米中に挟まれた韓国はその二つの国の間でバランスをとるべきではないかという意見に帰着する。そうした焦りが文政権にあるのではないか。

韓国の「私はアメリカの子分ではありませんよ」というメッセージにトランプ大統領は?

しかし、あからさまにアメリカと距離を置き中国との関係にシフトすれば、アメリカを怒らせることになる。そこで、アメリカの同盟国であり、多少緊張を高める行為をとっても無害な日本に、意図的に仕掛けている可能性は排除できないと思う。日米韓の協力関係にすきま風を吹かせることで、韓国は中国に対し「私はアメリカの子分ではありませんよ」というメッセージを送る。韓国にとって、日本との緊張を高めることは、外交の観点からこうしたメリットが考えられる。また、内政面でも、日本と対峙する大統領は人気が上がる傾向があるため、人気回復手段となっているというのはこれまでもよく言われてきたことだ。

韓国側が日本との緊張を高めることそのものに利益を感じているのであれば、「天皇陛下への謝罪要求」の次にまた緊張を高める“何か”を仕掛けてくるだろう。その時、日本はどうするのか考えておかなければならない。

日本軽視の深層心理

藤田:
なぜ韓国が日本バッシングをしても大丈夫だと考えているのか?

長尾氏:
ストックホルム国際平和研究所のデータによると、韓国の国防費は過去10年で30%近く伸びている。一方日本は4.4%しか伸びていない。このままの勢いで行くと、韓国の国防費が日本の国防費を上回る状態が近い将来に起きるということだ。韓国は「日本に追いついて追い越すのだ」という雰囲気の中で日本への政策を決めているのではないか。日本との間で、もし何か間違いが起きて緊張が高まったとしても、韓国にとってそれほど怖い相手ではないという判断がなされる可能性が、この韓国の国防費の伸び率と関係しているということも言えるのではないか。

■スウェーデンのストックホルム国際平和研究所
10年間の国防費の伸び率(2008年~2017年)
韓国 29%UP 392億ドル(2017年国防費)
日本 4.4%UP 454億ドル(2017年国防費)

日本軽視ではなくアメリカが“見下されている”

長尾氏:
アメリカと少し距離を置き、中国とのチャンネルを太くしようとする目的のために日本が利用される。こうした動きはアメリカが弱くなっていくことを見越したうえでの対応で、単純に日本軽視という問題ではなくアメリカの国力が見下されているということだ。このことを、同盟国として日本はアメリカに進言し、韓国を本来の日米韓協力の軌道に引き戻していかなければならないと思う。そうでなければ、このまま韓国側が中国にシフトしていくのをただ見ていくことになってしまうかもしれない。

長尾賢研究員(左)と藤田支局長

【取材:FNNワシントン支局長 ダッチャー・藤田水美】

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