インド映画のロケ地にいかが? スイスに学ぶ訪日外国人集客の切り札

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  • 訪日外国人は堅調に増加 全体の7割超が韓国、台湾、中国、香港から
  • 今後の集客の切り札はIRとサブカルチャー
  • 次なるターゲットはインドとヨーロッパ

存在感を増すアジアからの訪日外国人

アジアからの訪日外国人が増加

少子高齢化、人口減少という重石を背負った日本にとって、海外需要は重要性を増しており、外需を取り込む手段の一つとして観光需要が注目を集めている。政府は2020年に訪日外国人を4,000万人、2030年には6,000万人を目指すとしており、直近2018年の約3119万人との比較では、12年間で1.9倍以上に増加させるという意欲的な目標を掲げている。

訪日外国人は2010年代前半から堅調に増加しており、主要国・地域別にみると、アジアからの訪日者の増加が目立つ。訪日外国人の国・地域別内訳を見ると、韓国、台湾、中国、香港で全体の73%、その他アジア地域も含めると86%に及び、アジアからの訪日者は日本にとって重要な存在であることがわかる。

出典:日本政府観光局

また、訪日外国人の旅行消費額も2018年には4.5兆円にのぼり、趨勢的に増加していることがわかる。2018年の国・地域別内訳を確認すると、中国・香港・台湾・韓国の4カ国・地域で全体の約68%を占めており、訪日観光需要における東アジア地域の存在感の大きさがわかる。

経済成長とともに高まる出国率

経済成長率に伴い出国率が高まっている中国

アジア諸国からの訪日者が増加している背景に、好調な経済成長がある。一般に所得水準が上昇すると、旅行を含めサービスに対する支出が増加するが、アジアでも高成長に伴い所得水準が上昇しており、海外旅行需要が拡大しているとみられる。

また、出国者に占める訪日者の割合と日本からの地理的な距離の関係もある。日本からの距離を東京と各国首都間の直線距離として両者の関係をみると、韓国、台湾、香港など日本の近隣地域からは日本を訪れる人の割合が高く、東南アジアや南アジアなど日本から距離が遠くなるにつれて、訪日者の割合は低下する傾向がみられる。旅行の行き先を決定する上で、地理的な距離は大きな要因となっていると考えられる。

中でも、中国の出国率は他国に比べて依然として低い水準にあるが、人口規模が大きいため、中国における訪日観光に対する潜在的需要は極めて大きいと予想される。

訪日外国人6,000 万人達成のために

海外で人気のあるサブカルチャーを売りにする取組が必要

以上より、政府目標を達成するためには、圧倒的に潜在需要の大きいアジアの需要を確実に取り込むことと、欧米からの訪日者を伸ばす必要があるといえよう。

まず、アジア需要の取り込みだが、第一に訪日に対する価格面でのハードルを下げる必要がある。中国をはじめとするアジア諸国では所得水準が上昇し、海外旅行へ出かける人が増加しているが、現在海外旅行に出かけているのはまだ富裕層が中心となっている。実際、中国の人口に占める出国者の割合は2017年時点で10.3%に過ぎない。更に、中国人旅行者の一人当たりの消費額は、2018年に22.4万円となり、日本への旅行は依然として高価なものとなっている。現在はまだ富裕層中心の訪日観光客層を中間所得層に更に広げていくためには、手頃なサービスの拡充などの努力が欠かせないだろう。

第二に、現在日本を訪れている訪日客をリピーター化する必要もあろう。海外旅行先として、日本は欧米等とも競合すると考えられる。従って、リピーターとして日本を訪れる人を増やすには、日本の自然や歴史のアピールのみならず、海外で人気のあるサブカルチャーを売りにする等、観光資源の訴求力を高める取組が引き続き必要だろう。

第三に、近隣諸国との旅行客獲得競争で遅れをとらないことである。観光客受け入れ振興の体制面でも政府の観光局の職員数、海外事務所数、国からの交付金とも韓国が日本を上回り、他の諸外国との比較においても日本の取組は大きく見劣りしている。アジアの海外旅行需要の獲得競争で打ち勝つためには、より踏み込んだ政策対応が求められよう。

一方の欧米諸国だが、すでに所得水準が高いため、アジアのように出国率が上昇していくことは期待できず、受身では観光客を大きく伸ばすことは難しいだろう。しかし、観光客誘致に対する体制は依然として他国に見劣りすることから、日本の観光資源の魅力を充分に伝えきれていない可能性がある。従って、欧米からの観光客を更に増加させるために、引き続き日本の魅力をPRするための体制拡充が必要となろう。

集客の切り札IRの可能性

世界最大のカジノリゾートを誇るマカオ

政府が目指している2030年に6000万人の誘致を実現するためには、外国人が訪問しやすい環境を整える必要もあろう。

空港を見ても、国際線の発着便の少なさに加えて旅客機の離着陸料の高さも改善されていない。また、道路の案内標識はローマ字のためわかりづらく、交通機関のアナウンスも英語だけのところもまだある。また、ショッピングを楽しみたくても言葉が通じない店舗が依然として多い。

このように、観光産業がこれから成長する素地が十分にあるわけだが、その魅力ある観光地づくりの一例として考えられるのがIR(カジノを中心とする統合型リゾート)である。

IRは、外国人観光客のリピーターを増やすのに有効な手段である。実際、シンガポールやマカオは、カジノで外国人観光客を急増させた。大阪や北海道、九州、和歌山等、すでに候補地が絞られてきており、2023~2024年頃に開業との見通しもある。

次なるターゲットはインド

購買力を持つ中間層が日本の総人口より多いインド

また、訪日増加のターゲットとして力を入れたい国はインドである。購買力を持つ中間層が日本の総人口より多いものの、観光客として訪れる人はまだ少ない。たとえば、インド映画のロケ地として売り込むのも一つの方法かもしれない。スイスはロケ地の誘致で知名度を大きく上げ、インド人観光客が多数訪れるようになった。観光客を増やすには、まず日本に興味を持ってもらうことから始めるべきだろう。

オリンピック開催を控え、今後成長が見込めそうな分野をキーワードにすると「国際化」である。また、食や農産物等にもビジネスチャンスがあり、各地域は情報発信の仕組みづくりに重点を置くべきである。オリンピック開催後も反動減の少ない分野を狙い、今から市場開拓を進めるべきだろう。

【執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 永濱利廣】

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