香川を慰留したのはパイロット!?「ナンネンモ イッショニイテ!」

会場を和ませた質問の舞台裏

カテゴリ:話題

  • トルコ人記者から突然の慰留!?慰留したのはパイロットだった。
  • 「サポーターが一番聞きたいことを聞いた」
  • 香川は二試合連続出場も、「連携面が課題」

会見場を和ませた質問

5日に行われた香川真司選手の入団会見。およそ1時間の会見の終盤、トルコ人記者がおもむろに日本語で質問し香川を驚かせた。

「シーズンノオワリニ、イカナイデクダサイ、ナンネンモイッショニイテ!カガワ」

入団したばかりで突然の慰留に香川も笑顔で戸惑うも、進退についての明言を避けて答えた。

「非常にありがたいです。素晴らしい日本語を披露して頂いて感謝してます。サポーターの期待に応えて、残りのシーズンを頑張りたいので、それだけに集中していきます。」

この質問で会場の空気が和んだのと同時に、どこか硬かった香川の表情が柔らかくなったような、そんな印象に残る瞬間だった。

質問の主はパイロット!

後日、この質問の主に話を聞くことができた。

たどたどしい日本語で質問したのはトルコ人のマラティヤ・シャファックさん。本業はパイロットで、およそ16年間、旅客機のパイロット勤務をしているという。そしておよそ8年前から、ベシクタシュに関する記事を書きたかったことがきっかけで記者を始めたとのこと。現在は全国紙でベシクタシュに関するコラムを書いているほか、テレビでもコメンテーターとして出演している。

写真:マラティヤ・シャファックさん(右)提供

マラティヤさんに今回の質問の意図を尋ねてみた。

「他の記者とは違う質問がしたくて日本語で話そうと思った。今回の香川の期限付き移籍についてトルコにおける最大の関心は、シーズン後に香川がベシクタシュに残るかどうかだ。香川が来るまでトルコのスポーツメディアは、期限付き移籍に買い取りオプションがあるのかどうかという話でもちきりだった。結局、ベシクタシュは香川の買い取りオプションがないことを公表した。(今回のベシクタシュへの移籍は今シーズン終了後までの期限付き移籍のため、再度移籍交渉が成立しなければ終了後はドルトムントに戻る予定)
そのため香川にも日本人にも気に入ってもらえるように、そして、敬意の気持ちが通じるように、日本語でこの質問をしたんだよ。」

マラティヤさんはパイロットを兼業しながら記者活動していることについてこう続ける。

「僕と他の記者の違いは、僕はベシクタシュに対する愛情でこの仕事を自発的にしていることだ。記者という仕事で生計を立てているわけではないので、自分の好きな質問だけできるんだ。僕はあの場で、ベシクタシュのサポーターは香川に会ったら何を聞きたいだろうと考えて、皆が一番聞きたいことはこれだと思って聞いたんだ。」

記者という仕事は通常、皆が知りたい物事を客観的にとらえ、多角的に伝えることに努める。ただ、マラティヤさんのように取材相手に愛情を持ちサポーターの気持ちを代弁する記者というのも、読者・視聴者・サポーターにとって知りたいことを伝えてくれる記者に違いない。

「香川にこの質問をした後、ベシクタシュサポーターから信じられないくらい多くの感謝メッセージをもらった。香川が丁寧に回答してくれたのも嬉しかった。会見後に写真を撮りたくて彼のそばに行ったら、香川から英語で『日本語うまいね。どこで覚えたの?』と聞かれた。日本語は少ししか知らないけど日本語で言いたかった、と伝えた。」

サポーターからの期待高まる香川選手

ベシクタシュ公式Twitterより

会見の翌日、メディアに公開された練習ではミニゲームが行われ、香川がボールを持つと周囲の仲間が「シンジ、シンジ」と声をかけ、積極的にボールをもらおうとする様子がうかがえた。香川もゴールを決めるなど調子の良さをアピールしていた。

9日、ホームで迎えたブルサスポル戦に2-0とリードする中、香川は後半22分から出場。ボールを受け、相手をかわしてパスをするなど果敢にチャンスメークしようとする姿勢は見えたが、決定的なチャンスは作れず、自身も二試合連続のゴールは挙げられなかった。試合後、香川は連携面についてまだまだ精度を高める必要があると課題を口にした。

2月9日 ブルサスポル戦後

「(初めてのホームの試合は)素晴らしい雰囲気だったし、試合前から、ファンの皆さんが応援してくれて、非常に楽しかったですし、それと同時に彼らの後押しに感謝したい。何より勝ったことが大事で、個人的には出場時間をどんどん増やしていって、もっとチームに貢献していきたい。連携面は課題だなと。まだ来て数日しかたってないので、練習の中から仲間とコミュニケーションをとりながらやっていく必要があるし、そこは非常に一日でも早く仲間のことを理解してやっていきたい。まずは個人的にはいい練習して試合にすべて出せるように、次の一週間に臨みたいなと思う。」

試合中に香川コールが起きたり、試合後には香川がサポーターに向かって一緒にパフォーマンスを行うなど、サポーターからの期待の高さは十分伺えた。

マラティヤさんが話すように多くのサポーターがチーム残留を望む香川の進退のほか、今後のチームの首位争いにも目が離せない。現在リーグ3位のベシクタシュが優勝するにはリーグ2位のガラタサライを倒す必要があるからだ。長友との日本人ダービー、優勝争い、その後の去就、というトルコ人だけでなく日本人にとってもトルコサッカーへの注目はこれからも続きそうだ。

【執筆:FNNイスタンブール支局 内橋徹】