トランプ大統領は一般教書演説で“巻き返し”できたのか?

カテゴリ:ワールド

  • 団結と協力を訴えつつ“壁”は強く要求
  • 大統領は分かっていないし変わらない
  • 挽回が無理だから余計に米朝に期待

壁予算を巻き返せるか

アメリカの5日夜のゴールデンタイムに行われた一般教書演説で、トランプ大統領が実現したかったことはただ一つ。“トランプの壁”予算の争奪戦で一旦は退却を強いられ、この演説も当初予定から1週間遅れでやらざるを得なくなった“政治的敗勢”を、この1回の演説で巻き返すことだ。

大統領の作戦は、党派対立と報復の政治のスパイラルに終止符を打ち団結と協力を呼びかける。同時に、“壁”の建設など自身にとってもコア支持層にとっても譲れない政策については、その必要性を強硬に訴え、民主党側に譲歩を迫る‥というものだった。

「分断に架け橋を」が白々しい

では、大統領の作戦は成功したのだろうか? 結論から言えば、『巻き返しならず』だったと思う。

まず、団結と協力の呼びかけだが、実は、去年11月の中間選挙での敗北を受け、トランプ大統領は民主党に対し「団結と協力」の呼びかけを行っている。しかし、実際には連邦政府機関の一部閉鎖を人質にとって“壁”建設のための予算を認めさせようと突き進んだ。結果、35日間という過去最長の閉鎖に至り、“壁”予算なしに「一時再開」を飲まざるを得なくなった。一般教書演説も1週間遅れになった。

という経緯を思い起こしてみると、「分断に架け橋を」というトランプ演説がいかに白々しく聞こえることか。それは議場の民主党議員たちの表情にも如実に表れていた。

加えて大統領の実績自慢だ。就任から最初の2年でこんなにも成果をあげた大統領は過去にいない!という、去年の国連演説で各国外交官の失笑を買ったものの繰り返しだった。さすがに連邦議会の議場では大統領への失笑は漏れなかったが、大統領の背後で議長席に座るペンス上院議長(副大統領)とペロシ下院議長の表情などを見比べているとよく分かること。それは、トランプ大統領の声はもともとの支持者にしか届かない。そして、トランプは変わらない‥ということだ。

「大統領は何も分かっていない」

民主党のカマラ・ハリス上院議員

“壁”建設でトランプ大統領は、「今夜、私は議員の皆さんにお願いしたい。極めて危険な状況にある南の国境を守ってもらいたい。それこそが祖国と同胞への愛と献身というものだ」と呼びかけた。しかし、この際に画面に映し出されたカマラ・ハリス民主党上院議員は、頭を小さく横に振り、「大統領は何も分かっていない」という表情を浮かべていた。ご存知の通り、彼女は2020年大統領選に出馬表明している民主党のホープの一人だ。大統領は、“壁”に演説のうち約13分を費やしたが、その声が民主党議員に届いたのか極めて疑わしい。

となると、2月15日のつなぎ予算の期限に向けた10日間の攻防も膠着状態に陥るのだろうか。大統領は“トランプの壁”のことだ!と言い張れる予算費目が認められるなら、それがコンクリートの壁であれ鉄製のフェンスであれスマート・ウォールであれ何でも構わない。一方の民主党は、国境警備や不法移民の取り締り強化のための予算を国土安全保障省などに認める用意はあるが、それが“トランプの壁”と呼ばれる余地はなくしたい。要は大統領が“壁”を勝ち取った!と言えるかどうか、名実の『名』をめぐる争いなのだ。

米朝首脳会談で外交力をアピール

2月15日までに決着がつかない場合、意識しなければならないのは大統領が演説の中で公表した、27日から28日の金正恩委員長との2度目の会談だ。新たなつなぎ予算で合意するか、(頭金だけでも)壁予算を含む予算案が認められないと、随行員を大勢連れてAF1でベトナムへというのはハードルが高い。

一方で、米朝会談をキャンセルする訳にはいかないから予算を通せ!という圧力に使えるという計算もありそうだ。内政的に行き詰っているのなら余計に外交をアピールするチャンスをつかまないといけないのだ。

それだけ一般教書演説での『巻き返し』は厳しい状況にあり、この演説でトランプ大統領の苦しい立場が再確認できたと言える。

【執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋】

【関連記事:「トランプの頭の中」すべての記事を読む

「トランプの頭の中」すべての記事を読む

トランプの頭の中の他の記事