「自民と別居も…」公明党のジレンマと憲法改正を巡るトラウマ

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  • 公明党が警戒する参院選前の憲法改正案提示
  • 衆参ダブル選挙を避けたい公明党のお家事情 
  • 対自民で楽観論の一方で、「お付き合いするしかない」の本音も 

「政権のブレーキ役」 公明党の正念場

2019年は政権与党の一角、公明党にとって“最大の戦い”の年になる。その戦場は4月の統一地方選挙と参議院選挙。そこに向けて戦う相手は…自民党だ。与党として選挙での戦いの相手が野党であるのは勿論なのだが、なぜ自民党と戦うのか。

キーワードはふたつ。「憲法改正」と「衆参ダブル選挙」だ。

1月28日、安倍首相は第198回通常国会の開会にあたっての施政方針演説のなかで憲法改正についてこう言及した。

「大きな歴史の転換点にあってこの国の未来をしっかり示していく。国会の憲法審査会の場において各党の議論が深められることを期待する。」

安倍首相の施政方針演説(1月28日)

各党に憲法改正の具体案の提示を呼び掛けた昨年に比べ、かなりトーンダウンした言い回しだった。この安倍首相の演説について感想を問われた公明党の山口代表は、高ぶる思いがあったのか、記者の質問が終わるのを待たず、こう評した。

「本来の総理大臣の立場としての言及に戻ってきた。憲法議論というのは国会のテーマであるということを踏まえながら、議論の深まりを期待するという抑制的な発言に抑えられた」

総理大臣は憲法改正について抑制的な立場であるべきだと指摘したうえで、今回の安倍首相の演説内容を歓迎した形だ。

記者団の質問に答える公明党・山口代表(1月28日)

実質審議は実現せず・・・”玉虫色“の合意文書

自民党と公明党は今年で連立政権発足から20年になるが、両党は節目ごとに連立にあたっての合意文書に署名している。直近では先の総選挙後の2017年10月23日に安倍首相と山口代表が合意を交わしているが、その中の項目に憲法改正が含まれている。

「憲法審査会の審議を促進し、憲法改正に向けた国民的な議論を深める」

憲法改正についてのこの合意は自民党の強い意向で盛り込まれている。ただし、盛り込まれた表現ぶりは玉虫色だ。「審議を促進し、国民的な議論を深める」とする一方で、「憲法改正を目指す」とも、「実現する」とも書かれていない。これは公明党への配慮である。

与党党首会談(2017年10月23日)

自民党は2018年の臨時国会で、9条改正を含む改憲4項目案を憲法審査会に提示する方針だった。しかし、外国人労働者の受け入れを拡大する法案の審議で与野党が激しく対立したほか、自民党の下村憲法改正推進本部長が、憲法審査会の開会に応じない野党を「職場放棄」と批判した問題が尾を引いたため、実質的審議は一度も行われなかった。

同じ与党なのに・・・自民党を警戒する公明党

「2019年、自民党がどういう手を打ってくるのか注視しなければならない」

公明党幹部が警戒するのは、自民党が今年、改憲4項目を憲法審査会に提示してくるタイミングだ。4月には公明党が重視する統一地方選挙、夏には参議院選挙が控えている。

「参院選前に憲法審査会を動かされたら最悪だ」
「憲法改正で参院選は戦えない」

連立合意で確認しているように、公明党は憲法改正への議論を進めること自体は否定していない。しかし、9条に自衛隊を明記することを柱とする改憲には、支持母体の創価学会の反発が強い。“平和の党”と自負する公明党が、憲法における“平和の象徴”である9条の改正に賛成するわけにはいかないというのが本音だ。

「もしも自民党が本気で9条改正を選挙の争点にするなら自民党とはしばらく別居せざるをえない」

公明党幹部がこうも、自民党をけん制するのは過去に苦い経験があるからだ。

国立公文書館所蔵

憲法改正を巡る公明党のトラウマ

2017年の衆議院選挙で公明党は、小選挙区で1議席、比例で5議席減らし、30議席を割り込んだ。小池東京都知事が率いる「希望の党」が耳目を集め、また「小池新党」による地殻変動から誕生した、枝野幸男氏率いる立憲民主党が躍進するなか、公明党は完全に埋没した格好だ。

「あの選挙は、憲法改正について中途半端なことを言っていたのが失敗だった」

自民党に対抗する勢力が、憲法問題を含め安倍政権との違いが際立つ政策を打ち出すなか、公明党の独自色は薄れていった。この過ちを今夏の参院選で繰り返さないためにも、公明党は憲法改正への動きにはブレーキをかけ続けるしかないのだ。

衆院選開票日の公明党本部(2017年10月22日)

反発強める・・・「衆参ダブル選挙」への警戒

「よもや衆院と一緒にやろうというようなことになったら、政権そのものをリスクにさらし、日本そのものを危機に陥れる」

1月16日、山口代表は党の神奈川県本部の会合で、7月の参院選に合わせた「衆参ダブル選挙」について、改めて異を唱えた。これまでも山口代表は衆参ダブル選挙を行うべきでない、と繰り返し安倍政権をけん制してきたが、公明党がここまでダブル選に反対するのは一体ナゼなのか。

会合で挨拶する公明党・山口代表(1月16日 横浜市)

公明党の選挙活動は支持母体の創価学会の運動量にかかっている。支持者は知り合いの家を訪問したり、電話をかけたりと、まさに「組織をあげた選挙戦」を繰り広げる。しかしダブル選となると、「力が分散されてしまう」のだと山口代表は説明する。

特に今年は統一地方選と参院選が行われる12年に1度の「亥年の選挙」。ひとつの選挙にかなりのエネルギーを使う創価学会からの反発は必至だ。

さらに自民党と公明党の選挙協力をめぐる事情もある。自公の間では公明党が候補者を擁立していない選挙区では自民党候補を支援し、自民党は比例代表で公明党を支援する。これまでの衆院選や参院選は選挙区と比例代表それぞれ1枚ずつ計2枚について、候補者名や政党名を書くよう、有権者に説明してきた。ところがダブル選になれば、有権者は以下の4枚の投票用紙に候補者名か政党名を書かないといけない。

・衆院・選挙区
・衆院・比例代表
・参院・選挙区
・参院・比例代表

投票用紙が4枚もあると、どの用紙にどの候補者名、または政党名を書けばいいのか複雑になってしまい、高齢者などに説明しきれないのだという。そこでやむをえず、「全部の投票用紙に公明党と書いてください」とお願いして回るしかない、というのだ。

「それだと打率は5割だ。『ダブル選をやるとこういうことになってしまいますよ』ということは自民党にも説明している」

つまり、公明党幹部はダブル選をやると結果的に自民党の票を減らすことになる、と自民党側に対してけん制しているのだ。

「憲法改正もダブル選もしない」・・・信じるワケ

公明党を取材していて「憲法改正」と「衆参ダブル選挙」に共通して感じることがある。それはどちらについても、実は多くの議員が「結局、自民党はやらないんじゃないか」と考えているということだ。その根拠はなんなのだろうか。

「自民党は公明党がいないと選挙に勝てない」
「統一地方選も参院選も自民党は公明党がいなければ勝てない」

選挙で自民党に大きく貢献している自負があるからこそ、公明党の反対を押し切ってまで憲法改正やダブル選を強行はしないだろうと考えている議員は多い。

それならば、代表以下、幹部が口を揃えて、けん制し続ける必要はあるのか。そこには、実際に憲法改正やダブル選挙を安倍政権、自民党が「やる」と判断した時に、公明党は「結局、自民党にお付き合いするしかない(公明党幹部)」という本音が見え隠れする。

ロシアとの北方領土問題、平和条約締結に向けた交渉の進展次第では、ダブル選の可能性が高まることもあるだろう。安倍政権の外交を「与党として支えていく」と強力に援護射撃する一方で、憲法改正やダブル選に反対する公明党の二正面作戦は果たして安倍首相の判断にどのように影響を与えるのか、注目だ。

(フジテレビ政治部 与党担当 寺田晃子)

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