トランプ大統領に挑戦する共和党候補はいないのか?

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  • トランプ大統領のコア支持層にも亀裂が
  • 不満の受け皿から不満の対象になりかねない
  • 「アメリカを再びまともに」は共和党の責務

民主党の予備選は賑やかに

ジョー・バイデン元アメリカ副大統領

2020年のアメリカ大統領選挙に向け、野党民主党からは続々と名乗りが上がっている。日本人にとってピンと来るような名前ではないが、有能で選挙にも強いと評判の女性上院議員やヒスパニック系で若手の閣僚経験者など、長い選挙戦を戦い抜く力が備わっていそうな人材も少なくない。

バイデン前副大統領やサンダース上院議員など知名度の高い人たちの参戦も考えられ、民主党の予備選はにぎやかになりそうだ。「トランプを止めろ!」「アメリカの価値観を取り戻そう!」といった、トランプ再選は絶対に阻止しなければという盛り上がりがあるからだ。

バーニー・サンダース上院議員

2020年トランプは不満の対象か

では、共和党はトランプ再選で固まっているのだろうか? 共和党支持層のトランプ支持率の高さや、先の中間選挙でのミニ・トランプ大量発生現象などはあるが、筆者は極めて疑わしいと考えている。

一つの例を示すと、1月半ばに公表されたNPR(米公共ラジオ局)などによる世論調査結果の見出しは「トランプの支持率低下。支持層でもこける」だった。記事は慎重に「支持率低下は政府機関一部閉鎖などによる一時的なものか、もっと構造的な変化なのかを論じるのは時期尚早」としているが、注目すべき変化といえる。

その意味するところは明確だ。2016年のトランプは不満の受け皿であり、海のものとも山のものとも知れないところはあるが「彼にやらせてみればいいじゃないか」という投票対象だった。2020年のトランプは違う。有権者は良くも悪くも大統領トランプの4年間を評価し、さらに4年やってほしいかどうかを考える。2016年は不満の受け皿だったトランプが、2020年は不満の対象になっている可能性も十分考えられる。

今年1月10日から13日に行われたNPRなどの世論調査結果を1ヶ月前と比べてみると;
・トランプ大統領の仕事ぶりを支持する(37%)と支持しない(53%)の差(14pt)は、7pt拡大=トランプにとっては7ptダウン
・都市郊外に居住する男性のトランプ支持率は51%から42%に大幅ダウン。不支持は39%から48%に上昇。変動幅は18ptダウンに
・白人福音主義者のトランプ支持率の変動幅は13ptダウン
・共和党支持層は10ptダウン
・大卒資格のない白人男性では7ptダウン

つまり、トランプ大統領は、コア支持層の主なクラスターすべてで支持率を落とし、不支持率が上がってしまっているのだ。
1月の半ばは政府機関一部閉鎖が解除される見通しはない状態。一方、去年12月の調査時はまだ閉鎖には至っていなかった。その差が結果に表れている可能性は高い。閉鎖は今も続いているし、大統領が折れる兆しは見られない。さらに米中貿易戦争や二国間貿易交渉の遅延などによって輸出条件が悪化している穀物農家や畜産農家の不満も拡大中だ。

2020年予備選の初戦、アイオワ州の党員集会(2月3日)まであと1年と10日。それまでにこの不満は解消されるのか。そうでないならその不満の政治的行先はどこなのかが2019年を通じての焦点となる。

「このままでは共和党に未来はない」という危機感

その意味で注目すべきなのが、表題の通り「共和党の中からトランプ大統領への挑戦者は出てこないのか?」だ。

再選を目指す現職大統領が党の候補者指名を得られなかったのは、1884年以降では、予備選での劣勢を見て自ら撤退表明した1968年のリンドン・ジョンソン大統領だけだ。予備選で現職大統領にチャレンジし無視できない党員票を獲得した例もある。1992年にブッシュ(父)大統領に挑戦し23%の党員票を獲得したパット・ブキャナン氏だ。

トランプ大統領に共和党予備選で挑戦するのは生半可な覚悟ではできないだろう。常識外れの批判・中傷を浴びせられることを覚悟しなければならないからだ。しかし、政策はいざ知らず、トランプ流の価値観や政治手法を共和党にとってもアメリカにとっても良しとしない政治家の名は取りざたされている。

ジョン・ケーシック前オハイオ州知事

2016年予備選で13%超を獲得したジョン・ケーシック前オハイオ州知事。

2012年の共和党大統領候補であり去年秋の中間選挙でユタ州から連邦上院議員に当選したミット・ロムニー氏は、今年1月1日付けで「トランプ氏は大統領にふさわしくない」とワシントンポスト紙に寄稿した。予備選出馬への狼煙では?とも言われている。

ミット・ロムニー上院議員

トランプ大統領が嫌で、任期途中で辞任したジェフ・フレーク前上院議員についても出馬の噂が絶えない。

首都ワシントンのお隣、メリーランド州のラリー・ホーガン知事に期待する声もある。州民の3分の2は民主党支持というブルー・ステートで、共和党知事ながら再選を果たし68%の支持率を誇る。分断の時代に融和の政治家たり得るという期待だ。

彼らに共通するのは、「共和党を共和党らしく」「アメリカを再びまともに」「このままでは共和党に未来はない」という危機感だろう。大統領の“勝利”が国民の生活よりも優先され、国と国の合意づくりより指導者間の取引が指向されるような政治があと6年続くことになるのか。共和党の政治家に突き付けられた課題は、きわめて現代的であると同時に歴史的なものでもある。

【執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋】

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